【良かったこと】フランスの大学で勉強を始めて気が付いた14のポイント【悪かったこと】
南仏。モンペリエという街に住んで3年半。
モンペリエ大学で生物学の勉強を始めて1年半。
ここまでフランスの大学で勉強をしてきてよかったと思うこと、悪かったと思うことについて書き留めておきたいと思います。
個人的な備忘録でもあるのですが、これからフランスの大学で勉強をしようと考えてる人に、なにか情報をシェアできる機会になればとも考えているので、学部留学を考えている人には読んでもらいたい記事です。
mokuji
良かった点
1.経済的
何といっても、良いポイントの上位はこれでしょう。
経済的、というカテゴリーの中には、「学費」と「生活費」の2点があります。
まずは「学費」から。
フランスの大学の授業日はほぼ無償であるという事は、以前にも当ブログで書いた通りです。
この記事はfacebookで多くシェアしていただいたようで、多くの人にフランスの高等教育機関(ここでは大学)の授業費について知ってもらえることができたなら、嬉しい限りです。
その他、教材費等についても、特に出費はありません。
特別自分で書き込む用の書籍が欲しいなら別ですが、たいてい必要な本は学校の図書館で賄えます。取り扱いがなければ、図書館長に手紙を書いて購入を頼むことも可能。
僕は、そのほかに実験用の白衣やピンセット、関数電卓などを買ったくらい。
つまり、日本人の感覚からすると、いまだに信じられないくらい勉強に対してお金がかからないのです。
「生活費」では、食費や家賃が安いのはもちろんのこと、フランス政府が実施している数々の手当ても見逃せません。
まず、フランスは食料自給率のとても高い国です。つまり、食材が安い国。自炊をすると驚くほどお金がかかりません。
反対に、デイリーなレストランで食事をすると、日本より高くなってしまう印象があります。ちょっとしたサラダでも13€(約1500円)とかするんですよね。また、高級なレストランの場合は70~130€ほど出せばいい感じののレストランには行けるので、フランスのほうが割安感があります。これは日本のレストランの価格帯の上限が高く設定されているからだと考えています。
家賃はというと、これは住む場所によりますが、南仏・モンペリエは家賃が比較的高い町と知られているにもかかわらず、同じくらいの都市規模であれば日本よりは安く抑えることができるでしょう。
最後にフランスで得られる数々の手当ですが、学生であればマストなのが住宅手当です。
住宅手当は、みんなallocationとかCAF(カフ)とか呼んでいますが、これは住んでいる家の面積や個人の収入額などから毎月の住宅手当金が算出される仕組みになっています。多ければ170€/月もらえるので、仮に家賃600€の家(モンペリエでは十二分な物件候補が得られる価格帯です)に住んでも、学生向けの住宅手当を満額受給できれば600-170=430€(約50000円)くらいになります。日本で都市部5万円の家賃って、そうそうないんじゃないでしょうか。
トータルコストを年間で算出してみると、フランスの大学生活にはお金がほとんどかからないことに気づかされます。ちなみに、僕の場合をこっそり言ってしまうと、生活費+学費+交通費+通信費+租税 年間の最低生活コストは6000€でした。
2.無試験入学
教育機関にもよるのですが、国立大学は無試験で入学できました。
これは、僕がフランスの大学で勉強をしようと考えた、一番大きな理由でもあります。
というのも、僕は昔から生物学に興味があったのですが、生物学といえば理系科目。当然、大学で生物学を勉強するためには、理系の大学の入試を受けなければなりません。
入試、しかも理数系科目…この2重苦のため、僕は日本で生物学を勉強することは断念したのです。
しかし、フランスの国立大学の外国人枠であれば、入試が課されません。一般のフランス人たちがバカロレアという全国統一試験(日本でいうところのセンター試験のようなもの)を受けて大学に入学してくるのに対して、我々外国人学生は、DELF、またはTCFというフランス語テストのレベルB2以上を有していれば、あとは志望動機書を書くだけでいいのです。
これで、僕は今まで理系の勉強をした経験がないにもかかわらず、フランスでいきなり理系の大学に入ることができたのです。
まぁ、簡単に入ることができる分、後が大変なんですけどね。でも僕にとって、フランスは勉強に対して多くの機会を与えてくれたので、それを最大限に享受することにしました。
3.日本とは違う分野が強い
これは生物学の分野に限っての話になります。
僕も日本で生物学の勉強をしたことがないので、聞いた話になってしまうのですが、日本ではどうやら生物学ってあまり盛んじゃないようなんですね。
どういった意味で盛んでないかというと、卒業後の進路先があまりないとか、教育に対する国の予算編成が少ないだとか。
なんでも、日本には生物学部出身に人たちの研究者を「ピペット土方」と呼ぶこともあるんだそう。なんたる差別!
対してフランスやお隣のドイツなんかは、生物学は国の成長産業の一つとされているので、かなり多くの予算が投入されています。卒業後の進路も比較的安定なのが生物学。他学部の人と話していても、「生物学はいいよね~」って言葉がよく出てきます。
実をいうと、日本の産業界でも生物学には今関心が注がれている最中で、残念ながら多くの需要は国外に発信されてしまっているんですよね。日本ももっと生物学に力を注げばいいのに…と考えてしまいます。
4.いろんな人に出会える
これは大学生活に限らず、海外生活全般に対して言えることですが、多くの国籍の人と出会って話しをするというのは、本当にプライスレスな経験だと思います。
フランス語を勉強するためにフランスに来る人は多いと思います。僕も実際そうだったのですが、では、なぜフランス語を勉強するのかというと、それはコミュニケーションをとるためですよね。
大学内で「教育」というネットワークでつながりあっている友人たちとフランス語で、バイオロジーのことだったりそうじゃなかったり、いろいろな話をするというのは、とても楽しいことです。
僕には仲の良いアルバニア人の友人がいるのですが、彼の国の話には毎回驚かされます。まず、アルバニアという国は、一時期国政があれていた時に「欧州一貧しい国」とよばれていたことがあるのですが、彼が幼い時は、食材は自分たちで狩りをして調達していたのだそうです。電気も22時になったりストップしたり…日本で生まれ育った僕にとって、こんな話をニコニコ懐かしそうに話す彼は、とても刺激的な存在なのです。
5.学割が使える
これは26歳までなのですが、フランスで学生であれば美術館や博物館が基本無料で入館できます。個人収集の美術館などは適用外であることがほとんどです。
芸術の国で、いつでも美術館がフリーパスで入れるなんて、素敵すぎると思いませんか?
6.税金が安い
学生であると数々の税金が免除になります。
年齢によっても変わってくるので、詳しくはそれぞれのシチュエーションを鑑みて調べてもらえればと思うのですが、すでに日本に居住していない以上、日本の税金を払う必要は無くなるため、トータルで払うべき税金額はかなり少なくなります。
悪かった点
悪かった、というか大変だったと思ったり、ちょっと残念に思った部分です。
1.外国語にエネルギーを使う
とにかく、コレです。フランスで授業を受ける以上、やはり言語はフランス語なので、先生が何を言ってるのか聞き取るのに精一杯です。
日々、新しい単語はで出てきますし、それが科学の特殊な単語ばかりなので、聞き取って→理解して→記憶に定着させるという3ステップは、決して容易なことではありません。
幸い、理系の大学は文系の大学ほどorthographeをうるさく言われることがなく、以前に語学学校でフランス語を勉強していたこともあり、文法云々で辛い思いをしたという事はなく、助かっています。
でも、毎日毎日宇宙人と交信しているような講義を聴き続けるのは、結構しんどいものがあります。まぁ、それも面白い経験ではあるのですが^^
2.授業数が多い
日本の大学はどうなのかわかりませんが、授業数が多くて困っています。
多い時で、30h/週を超えるので、それが2ヶ月とか続くと、最後のほうは生きた心地がしません。その30hには、宇宙人との交信しているよう講義があったり、失敗続きの実験があったりと、かなりのドラマにまみれていて、もうクタクタです。
3.試験がハード
フランスの大学の試験は基本的に20点満点。
つまり、問題数が少なく、1問、1点が非常に重要になってくるのです。
たとえ授業が30h/週あったとしても、取りこぼしがあって、そこが試験に出てしまえば大きな失点につながるので、なかなか気を抜くことができません。
あと、これは僕の通っている理工学系の大学の話なんですが、バカンスがいつも試験前に設定されるんですよね。つまり、そのバカンスは試験勉強のためのもの、っていう無言の強制。なかなかハードです。
4.採点がストレス
日本がしっかりしているのか、フランスが適当なのか。
こちらの採点はかなり適当なところがあり、採点ミスがあるのは日常茶飯事。1点の重みが~とか言っている割に、平気で採点ミスで3点ぐらい引かれていることがあるのです。
もっとひどいのが、試験を受けたにもかかわらず、他の人と受験番号を取り違えていたらしく、欠席扱いにされていたことそれが、この1年半で2回もありました。僕だけがレアなケースに巻き込まれているのだと信じたい…
5.校舎が古い
以前、モンペリエ大学のキャンパスをブログ記事にした際にも書いたのですが、学校の校舎が驚くほどボロっちいんです。モノクロで写真にとると、ちょっとしたホラー感すら感じられるほどです。
まぁ、学費がこれだけ休んだから仕方がないか…とは思うのですが。
せめて、トイレの外壁がすりガラスのようにシルエットが透ける設計になっているのは改善していただきたい。
6.90分授業
日本の大学も、多くが90分授業だと思うのですが。これって長すぎませんか?
僕は、最後の30分は仏よりも仏らしく解脱してます。心ここにあらず。フランス語では、「雲にいる(être dans les nuages)」なんて言ったりもします。
せめて60分授業にしてほしい、切なる外国人留学生の願いです。
7.生活リズムが乱れる
日本で仕事をしているときも結構ハードな生活リズムでしたが、一応規則性はありました。
でも、大学生にもなると、やっぱり生活リズムが乱れます。11時まで授業がなければ、やっぱりギリギリまで寝ていたくなっちゃうんですよね。
あれこれやりたいとは考えていても、気が付けばもうこんなに時間が経ってる!なんてことは日常茶飯事です。もっと規律ある生活を心がけなくては…
おわりに
悪かった点のほとんどは、こうして振り返ると自分自身に問題の多くがあるのだということが分かりました(笑)
フランスで大学に行くことが最善の策である、とはなかなか言えないのですが、良い点②で書いたように、フランスは勉強に対して新しいチャンスを我々日本人に与えてくれるのだという事を知ってもらえれば嬉しいです^^