DELF B2 口頭試験┃構成の対策を紹介します
DELF B2。ここを目標にしてフランス語を勉強している人は多いと思います。
DELFは有効期限がないものなので、1度とってしまえば良いというのも魅力的ですよね。
さて、DELF対策の中でも、なかなかイメージしづらくて対策方法を見つけるのが難しいのが口頭試験(expression orale)です。
今回は、この口頭試験にスポットライトを当てて紹介していきます。
mokuji
- こんな質問をいただきました
- わざわざ説明する必要は無い。でも…
- 意外とおろそかにしがちなintro
- 口頭試験introのイメージ例
- 日常生活で、常に問題意識を持つようにする
- 言い慣れない表現は避けるように
- おわりに
こんな質問をいただきました
先日、このブログでこのような質問をいただきました。
exposéのはじめ方なのですが、お題の概要を説明しないといけないものなのでしょうか?
例えば、xxの記事で、xxxについて書かれています。などです。
独学で勉強しており、exposéの基本的な事が分かっておりません。
この概要説明というのはexposéするにあたって必須なのでしょうか?
また、記事の説明(ルモンドのx月x日)などの説明するのが一般的なのでしょうか?
答えは、yesです。
ちょっと僕も気になって、日本でDELFの口頭試験について書かれているブログをいくつか覗いてみました。そしたら、いくつかのブログでは「レベルB2以上では、導入部で記事の説明をする必要がない」と書かれているものもありました。
実際はどうなんだろう、というのを考えていきたいと思います。
わざわざ説明する必要は無い。でも…
口頭試験に使われるテーマというのは決まっています。僕たちは、決められたテーマの中から、無作為に選んだものについて議論していくのです。
普通に考えて、試験官は既にテーマの内容を知っているはずなので、わざわざどんなことが書かれていたか、などを説明する必要は無いように思えます。そんなところに時間をとっていないで、さっさと話しの核心に進め、ということで導入部で選んだ文章の説明は不要、と言っているのでしょう。
しかし、これはフランスで作られたフランス語の試験です。
フランスでは、たとえそれが形式的なものであっても重要視するものがあります。
文章のソース(出処)もその一つです。実際、フランス人と、特に時事的な話をしていると「その情報のソースは何?」といったことを聞かれる場面が多くあります。
なので、たとえそれが形式的なものであっても、Le document dont je vais parler est un article du journal ---, paru le --(date)--.(私がこれから話すものは〇年〇月〇日付の、~誌に掲載された記事です)くらいの簡単なソースの説明はするべきでしょう。
それに加えて、実は導入部(introduction)ですることはたくさんあるのです。
意外とおろそかにしがちなintro
先ほど、introで文章の説明をする必要は無いという意見があると書きました。
しかし、僕はそうは思いません。それに、そんなこと聞いたこともありませんでした。
普通に考えてみてください。
例えばあなたとあなたの友人が同じ本を読んだとします。後日、友人がいきなり「やっぱり悪いことすると鼻無くなっちゃって息できなくなるのかなー?」といってきたら「はぁ?」ってなりますよね。
では、その友人がこう言ったらどうでしょう。「やっぱり、闇の魔法使いとして悪事ばっかり働いていて一度は死にかけたヴォルデモートは、体を復活してきたけどまだ鼻まで完全に復活してないってことは息できてないのかなー」どうですか?さっきより話題の方向性が見えてきましたか?え、より分かりづらくなった??
ちょっと例が悪かった気もしますが、要するに何が良いたいかというと、人に何か伝えたいときには、あらかじめその話題のバックグラウンドを伝えることで、相手の理解度がぐっと深まるのです。
このバッグラウンドこそが、DELFの試験でいう「あなたが選んだテーマ」です。特に、上の例では「ヴォルデモート」というキーワードがあるかないかで、理解の範囲が大きく変わりますね。
しかし、そこは馬鹿みたいに記事の内容を復唱しろという事ではありません。
あくまで、このあとあなたが議論にもっていくために必要な問題提起を相手に理解しやすくするためのものであることを念頭に置いておくようにしましょう。
つまり
- これから議論するテーマに使えそうなバックグラウンド(記事の内容)を紹介して、試験官の頭の中にイメージの土台を作り上げる
- 問題提起をする
- 自分で提示した問題についての議論の道筋を紹介する
この3点がintroでするべき作業です。(これよりも前にソースの説明をするのですが、実質、議論にはあまり関係がない部分なのでここには書いていません)
どうでしょう、introって結構やること一杯だと思いませんか?
口頭試験introのイメージ例
例えば、あなたは口頭試験用のテーマとしてOGM(遺伝子組み換え食品)について書かれた記事を選んだとします。
この記事はOGMに対して反対の立場をとった記事だとします。例えば、OGMによってアメリカの発がん率が上昇している、といった内容のものです。
まず、問題提起を決めます。
これは後に議論が進めやすくなるよう、賛成/反対で答えらえるようなものにすると良いでしょう。僕はこれをpour/contre法と呼んでいます。一番基本的な論展開の方法の一つです。
例えばここでは「OGMは私たちに有害なものなのか」といった問題提起にしましょう。議論の発展は「有害である」「有害でない」の2つに簡単に分けることができますよね。
問題が決まったら、今度はそれに対応するようなバックグラウンドを考えます。今は実際の記事があるわけではないので、こんなことが書かれている記事、という前提で説明します。
例えば「アメリカではこの20年間でOGM産業は著しく拡大し、それに比例するようにがん患者の数が上昇している」「OGM産業は人間の未来を切り開くための技術だった」みたいな感じのバックグラウンドはどうでしょうか。
そうしたら、今度はあなたがどのようにこの先自分の考えを述べていくかを伝えます。レストランのコース料理を予め伝えることによって、おなかのペース配分を決めてもらうように、あなたのプランを伝えることによって、相手の理解度はさらに高まります。
「まず最初に、OGMの人間にとっての利点を紹介し、次にOGMの問題点を指摘し、最後に総合的に考える」というアナウンスをすることで、聞き手はこれからのコース料理の内容を知ることができます。
つまり、まとめると
「アメリカではこの20年間でOGM産業は著しく拡大し、それに比例するようにがん患者の数が上昇している」
「OGM産業は人間の未来を切り開くための技術だった」
『OGMは私たちに有害なものなのか』(←これが問題提起にあたります)
「まず最初に、OGMの人間にとっての利点を紹介し、次にOGMの問題点を指摘し、最後に総合的に考える」
どうですか。これがintroで述べるべき内容です。
そして、この箇条書きで書いてあるような構成で、試験前の準備時間に紙にまとめておけば良いのです。
そのほかの論展開の方法はこちらを参照してください。
日常生活で、常に問題意識を持つようにする
この中で、おそらく一番難しいのは提起する問題点を考え出すという部分でしょう。
なぜなら、その問題は
ー自分で話題を発展させることができるもの
ーその後の議論の発展が楽になるもの(pour/contre法が使えるような問題性)
ーテーマに沿ったもの
である必要があるためです。
そのためには、常日頃から周りのことに問題意識を持つようにする訓練が必要です。
例えば、天気予報で今日から一週間ずっと雨だと言っていたら、あなたはどんな問題意識を持ちますか?
さっきと同じような形で、問題提起は「1週間連続の雨は私を困らせるか」みたいな感じにすれば、contre→洗濯物が乾かない、お出かけが嫌になる pour→水不足の解消 となって、結論は「短期的にみれば嫌なものだけど、長期的にみれば私だけでなく生物環境に良い結果を与えることが期待できる」なんていう、もっともらしい議論を作り出すことができるのです(笑)
なんでこんな事をするのかというと、まぁ詰まるところ、これがフランス人の思考なのかなと思うんですよね。
フランス人は議論好き、というのはよく知られたことですが、彼らは日常的にこういったことを考えているのだと思います。
対して、あまり議論をしない、外国人からは「自分の考えを持っていないデスネ~」なんて言われちゃう我々日本人は、問題意識を持つ・問題を探すことに慣れていないのかもしれません。決して、自分の考えを持っていないわけではないんですけどね。
言い慣れない表現は避けるように
最後に、口頭試験でのポイントは言い慣れない表現は使わないようにするべき、ということ。
普段口にしないような言い回しを、緊張した試験会場で繰り出せるかと言ったら、すこし疑問です。
また、作文では難しい単語を多用しても良いのですが、口頭であまりにも難しい良い方ばかりしていると、聞くほうも疲れてきます。
ただし、同義語はたくさん用意するようにしましょう。
たとえば、「思う」というのを、 Je pense…って同じ動詞ばかりずっと使っていると、あまりよい印象を得ることができません。penserの他にも、croire、supposer、avoir l'impression、se douterなど様々な言い方があります。
また同じ「思う」でも se direなんかを使って、ちょっと疑念がこもった「思う」にしてみたりと、様々なヴァリエーションをつけることができるのです。
そして、これらの動詞は決して難しいものではないので、試験本番にも役立ってくれることでしょう。
おわりに
今回伝えたかったことは、DELFの口頭試験でintroはかなり大切な役割を持ってるよ、ということです。
それは、ソースの説明はもちろんなのですが、その後の論展開をスムーズにするため、あるいは試験監督の頭の中にある程度のイメージを築くために必要なものなのです。