フランス直伝!┃固くなったフランスパンをつかったリメイクレシピ8選
昔は、雑誌のモデルにあこがれて、意味もなくポンパドゥールで買ったフランスパンを小脇に抱えて町中をうろうろしたものよ…
今から数十年前、フランスパンは今ほど一般的なものではなく、またその名前の響きからおしゃれのアイテムとして使われていた時代があったそうなんですね。今聞くとびっくりしてしまう昔の「おしゃれ」話です。
今、僕たちはフランスパンを買おうと思えば、近くのスーパーまで行けば簡単に買える時代になっています。とはいえ、フランスパンばかり毎日食べる人というのは少ないのではないでしょうか。
フランスでは、フランスパンを文字通り「毎日」食べます。もちろん、個人差こそありますが、フランスパンはフランス人にとって、日本人の米のような存在。とくに、フランスには一日一種類ずつ食べても、一年で食べきることのできない種類あるチーズを食べる時には、パンは欠かせない存在になっています。
そんなフランスパン、痛恨の弱点が一つあります。
それは、すぐに固くなってしまうこと。買ってきたフランスパンが、一日放置しておいたらカッチカチに固くなってしまった経験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
そんなとき、あなたはどうしていますか?捨ててる?鳥にあげてる?
食は文化の一端。フランスパンを多く食べるここフランスでは、時間が経って硬くなってしまったフランスパンを上手にリメイクする方法がたくさんあります!
mokuji
- フランスパン、もといバゲットの話
- 基本はパン粉
- タリアテッレ、レモンとパン粉仕立て
- パン・ペルデュで甘いひと時を
- パンツァネッラ~パンのサラダ~
- ファルシの材料に…
- ガス・パッ・チョ
- アホのスープ?ソパ・デ・アホで温まろう!
- パン漬け
- すぐ固くなっちゃうバゲットだから…
フランスパン、もといバゲットの話
僕たちが一般的に「フランスパン」と呼んでいるものは、フランスではバゲットと呼ばれています。この記事でも、これ以降はフランスパンのことをバゲットと呼びます。日本人は日本米、日本酒と言ったりしますが、フランスではバゲットのことをフランスパンとは言いません。不思議。
バゲットのようなパンは、フランスの近隣諸国でもポピュラーな食べ物で、炭水化物でもあることから、日本の米の感覚でおかずと一緒に食べられています。
フランス語でバゲットとは「細い棒」を意味します。ハリー・ポッターの持ってるあの細い棒もバゲットです。また、日本人は食事をする際に2本のバゲットを巧みに操る民族として知られています。
日本でちょっとしゃれたパン屋さんに行くと、フランスパンではなくバゲットと書かれて売り出されていることがあります。だいたい、その隣には仲良くバタールがいますよね。バタールはバゲットより太いのが一般的で、クープと呼ばれるパンの表面の切れ目の数も違っているのが特徴です。
しかし、実際にフランスに住んでパンを眺めていると、クープの数は伝統から離れているものもありますし(クープのないバゲットもある)、「え?こんなに細いの詐欺じゃない?」っていうようなバタールを見かけたこともあります。
ちなみに、フランス史の悲劇の女王で知られるマリー・アントワネットが、国費を浪費した挙句、家臣からフランスの民は飢えています、食べるパンすらありませんと言われたのに対して「パンがなければケーキを食べればいいじゃない。」といったのはよく知られていることですが、このケーキというのは実際はブリオッシュのことだそうです。当時、ブリオッシュは低級の小麦粉が使われていて、「パン」と呼ばれるものは比較的高級な小麦粉が使われていたという説があり、マリー・アントワネットが言った言葉はあながち間違っていなかったのだという歴史解釈もあるのです。フランス万歳!
冒頭でも書いた通り、フランス人とバゲットは切っても切れない関係があります。
それゆえ、バゲットを売るパン屋の数もとても多いのです。コンビニかな?ってくらいにいたるところにパン屋があります。フランスで生活していると、やっぱり自分のお気に入りのパン屋の一つや二つはできるもので、お気に入りのパン屋で焼き立てのバゲットに出会えた時には結構テンションが上がるものです。っていっても、どこも結構な頻度でパンを焼かないと間に合わないので、かなり高確率でほかほかパンに当たるのですが…幸せが身近にあるとは、まさにこのことですね。
基本はパン粉
だいぶ前置きが長くなってしまいましたが、ここから硬くなってしまったパンのリメイク方法を紹介していきたいと思います。
フランスに限らず、お隣のスペイン、イタリアからも情報を引っ張ってきました。
バゲットリメイクにおいて、もっともビギナークラスに位置するのは「パン粉」でしょう。もう、そのまんま。パンを粉砕するだけ。
でもこれ、けっこう奥が深いんですよ。
フードプロセッサーのように電動のものを使えば、だれでも簡単に硬くなったバゲットをパン粉にすることができるでしょう。しかし、この方法だと機械がめいっぱい細かく粉砕してくれるので、どうしても粒子の細かいパン粉が出来上がるんですね。
ミラノ風カツレツなんかをこの細かいパン粉で作ったら最高です。
日本の衣サクサクのカツも魅力的ですが、金のシルクのようにきめの細かいミラノ風カツレツもなかなかいいものです。
ソースにとろみを簡単につけられるのも、この細かいパン粉のなせる業です。ムール貝の白ワイン蒸しを作ったときに、小さじ1杯程度の少量のパン粉を煮汁に溶かしてみてください。とろみが出て貝がソースをまとったようになりますよ。
もっと荒削りのパン粉が欲しい場合には、チーズを削る機械や卸し金を使って自分の手でガリガリする必要があります。好みのパン粉の粗さを探してみてください。
出来上がったパン粉には、ハーブや溶かしバターなどを加えても良いでしょう。フードプロセッサーでパンを粉砕するときに、一緒にハーブやバターを投入すればラクチン。
お肉の上にまぶしてフライパンやオーブンで焼くだけで、食欲をそそるいい香りのお料理が簡単にできちゃいます。まとめて作って、冷凍庫で保存しておけば長持ちするのもうれしいところです。
タリアテッレ、レモンとパン粉仕立て
パン粉をつかったレシピで面白いものを一つ。
なんと、大胆にもパン粉をパスタと合わせる技です。
削るorみじん切りにしたレモンの皮(2人前でレモン1/4程度の皮)とパン粉(好みの量)を、オリーブオイルや好みのハーブと一緒に軽く炒めて、塩コショウで味を調えたら茹でたタリアテッレと絡めるだけ。簡単!最後に好みでレモンの果汁を振りかけてください。
でも、これだとコクが少ないので、僕はひとかけらのバターを火を止めた後のソースに加えています。こうするとコクが出るので。
パン・ペルデュで甘いひと時を
フランスで多くの人に愛されるパン・ペルデュ。意味は「失ったパン」といったところでしょうか。
水分失ってカラカラになったパンを、卵や牛乳などを混ぜ合わせた液体につけて、柔らかくしたものをバターで表面を焼いたものです。
まぁ、早い話がフレンチトーストです。
パン・ペルデュは、最低でも一晩は卵液に沈めることが美味しく作るコツ。外は香ばしくて、中はジュワっと柔らかいパンペルデュを食べるときは、至福そのものです。
パンツァネッラ~パンのサラダ~
ちょっとかっこいいタイトル風に書いてみましたが、日本語にするとやっぱりダサいですね。パンのサラダって…
パンツァネッラというのは、イタリアのトスカーナが有名なパンを使った料理です。もともと、トスカーナのパンのように、硬めのパンがこの料理に合うのだそうです。
作り方は簡単。サラダに適当に砕いてふやかしたパンを入れるだけ。
ちょっと雑ずぎる説明ですが、だいたいこんな感じです。でも、このぐちょぐちょパンが野菜やドレッシングに合うんですよね。個人的には、アボカドのようなクリーミーなもの、タマネギのような強い香りと辛味のあるもの、トマトのような酸味のあるものに、このふやかしたパンが合うと思います。
ドレッシングは、味の輪郭をはっきりさせるために、やや酸味を利かせたものが良いのではないでしょうか。夏の食欲のない時など、たっぷりのバルサミコ酢や、たっぷりのレモン汁で、元気の出るサラダをお腹いっぱい食べたいときには本当に便利です。
暑いときは素麺ではなく、パンツァネッラをぜひお試しあれ!
ファルシの材料に…
ファルシとは、フランス語で詰め物をした料理のことです。ロールキャベツを想像してもらうとわかりやすいと思います。
この詰め物にも、細かく砕いて牛乳に漬けてふやかしたパンが活躍するんですね。
ふやかしたパンは、ボリュームを出すと同時に、ふっくらとした触感を出す働きをしてくれます。なので、ロールキャベツなどに使う挽肉に入れることで、柔らかい触感にすることができるのです。
ロールキャベツのほかに、ピーマンのファルシ、トマトのファルシなどがあります。日本のハンバーグにパン粉を入れるのと同じ感覚です。
ニース料理の秘密として、ファルシの具に、ほんの少しだけ調理した米とbletteという野菜の葉をみじん切りにしたものを加える習慣があります。bletteはマルシェなどでよく目にするので、試してみると面白いかもしれませんね。
ガス・パッ・チョ
某ガス会社のCMで使われていたこの名前。実はガスパチョという料理が南スペインに存在します。
もう一歩向こうはアフリカ大陸というこの地は、本当に暑いのです。暑すぎて、昼下がりの一番気温の高い時間帯は外に出ると危ないという理由で、屋内で休むシエスタと言う文化が生まれたほど。
そんな灼熱の地で生まれたガスパチョは、別名「飲むサラダ」と呼ばれるものです。
作り方は簡単。トマト・玉ねぎ・きゅうり・ピーマンとオリーブオイル・塩・胡椒・酢と一緒にミキサーで回しただけの簡単な冷製スープ。ここで欠かせないのが、硬くなってしまったパン。硬くなったバゲットを砕いて一緒にミキサーで回すことで、スープにとろみをつけてくれるのです。
ビタミン・ミネラル・エネルギーをごくごく補給できるガスパチョは、うだるような暑さで食欲がない時に簡単に栄養補給の出来る優れた料理です。ヨーロッパでは1リットルの紙パックに入ってスーパーで普通に売られていますし、スペインではマクドナルドのサイドメニューにもあるほどポピュラーな料理なのです。
アホのスープ?ソパ・デ・アホで温まろう!
アホ"ajo"とは、スペイン語で「ニンニク」を意味します。
ちなみに、バカ"vaca"は「牝牛」です。
ソパ・デ・アホとは、ニンニクのスープのこと。
スペインというのは場所によっては食材に乏しい地域があり、そういった場所で硬くなったパンを肉に見立てて食べたのが始まりという、なんとも泣かせる歴史を持った一品です。
作り方は簡単。ニンニク、タマネギ、(肉に似せた大きさに切った)パンをたっぷりのオリーブオイルでじっくりと炒め、たっぷりのパプリカ(粉末)と塩・胡椒で味をつけ、お湯を注いでぐつぐつ煮れば出来上がり。
これだけではあまりに貧相なので、コンソメを入れたり、最後に卵を落としてポーチドエッグのようにすると見栄えが良くなるでしょう。本場スペインでは、肉をそぎ落とした生ハム用の豚の足の骨を長時間に出して作ったスープを使ったりします。これは、本当においしいです。
この貧相なレシピとは裏腹に、素朴ではありながら意外といけちゃう不思議な料理。寒い、ニンニクしかない、パン硬くなっちゃってる=ソパ・デ・アホで暖をとる。素敵な方程式です。
パン漬け
なんていうか、本当のことを言うとこれを紹介したくて今回の記事を書いたといっても過言ではありません。
あなたは知っているでしょうか、パン漬け。
僕もフランスに来てから日本人の友人に教えてもらって初めて知ったのですが、なんと、パンで漬物ができるんですって。しかも、なんかぬか漬けみたいなの。
むしろ、結構いい感じにぬか漬けです。実は僕もパンで漬け床を作って、もうかれこれ一年半ほど継ぎ足しながら使い続けています♥
詳しくはこちらのサイトをご覧ください。他にも検索すればいろいろな方法が見つかります。
日本の実家には、自分よりも年齢が上のぬか床があり、小さいころから糠漬けを食べて育ってきたのですが、パン床でも十分食べられる漬物ができちゃいます。
味がいいだけでなく、材料が少なく手間がかからないのもうれしい点!パンとビールと塩があればいいのです。昆布や鷹の爪なんかを入れても、床に味がのってきますよ^^
キュウリやカブはもちろんのこと、最近は根セロリというcéleri-raveという野菜の漬物にはまっています。カブのような食感で、ほんのりと繊細なセロリの香りがしておいしいんですよ。
見た目はちょっとグロテスクで、お世辞にもおいしそうだとは言えないんですけどね。
今年の冬は、この漬け床で鯖のへしこを作ろうかと画策中。そのためには、もっと乳酸菌に頑張ってもらって漬け床を増やさなくては!
すぐ固くなっちゃうバゲットだから…
フランス人をはじめとして、パン食文化の人たちはパンをリメイクさせるためにいろいろなことを考え付いたんですね。
今回紹介したのはまだまだリメイク方法の一端でしかありません。他にもたくさんの硬くなってしまったバゲットの用途があります。
ヨーロッパでは、比較的日本より乾燥した気候であることが多いので、パンもすぐに乾いて今回紹介したような方法で使い切ることができます。しかし、日本は湿気大国。硬くなる前にカビが生えてしまうこともあるかもしれません。そうなった場合は、潔く捨てましょう。運よく食べ残したパンが固く乾燥していたら、ぜひ今回紹介した方法でリメイクしてみてください^^
最近、世界中ではやっている「発酵」を、あなたの料理にも取り入れてみませんか?