フランスの食品廃棄率や食品ロス┃大学のサンドウィッチから考えたこと
僕の留学しているフランスって、ぶっちゃけ不便です。
日曜は基本ほとんどの店が閉まっているし、週末だって普通の飲食店は夜中の1時を過ぎるとどんどん閉まっちゃう。
夜中でも空いているような、日本のコンビニ感覚の店というと、こちらではépicerieと呼ばれるなんだか鬱蒼とした店しかなく、まちがっても肉まんやプレミアムロールケーキの類を見ることはありません。運が悪けりゃ、ぼったくられます。
まぁフランスって、日本の田舎のキャッチフレーズみたいに「何もないを、楽しむ」みたいなところがあるので、それはそれで悪くないかな、なんて思っちゃうんですが、今日はもう少し視点を変えて考えてみようと思います。
こんなサンドウィッチが学校で売られていればいいのにな。。。
まるで社会主義国
別に社会主義を悪く言っているわけではありません。一応、念のため(笑)
そうじゃなくて、僕の大学のカフェテリアの話です。
僕の通っている国立モンペリエ大学の理工学部のキャンパスには、レストランが1つと、18時に閉まってしまうカフェテリアが1つあるだけです。キャンパス自体はけっこう広いんですよ。26棟あるし。
で、このレストランがオイルショックでも起きたのか?ってくらいにまずい料理しか出さないのです。なので、大体お隣の文系のポール・ヴァレリー大学のレストランまで行きます。
でも、授業で忙しい学生の皆さんは、なかなかレストランが空いている時間に昼休みが取れないんですね。となると、お昼ごはんはカフェテリアで軽食を買うことになります。
このカフェテリアが、お昼時になるとかなり混雑するのです。その光景が、僕には社会主義国家の往年の配給風景に見えてしまい、ちょっと笑えてしまうのです。
カフェットとサンドウィッチ
フランスも結構言葉を短くするのが好きみたいで、restaurant universitaire は restoU(レスト・ユー)、bibliothèque universitaire は BU(ベーユー)と言います。
そんなかんじで、cafétéria は cafét(カフェット)になります。なんかかわいい^^今書いて気が付いたんですが、最後のtも、子音として軽く発音されるんですね。
僕の大学のカフェットでの軽食と言えば、サンドウィッチかパニーニ。これがまた、トラウマレベルで美味しくないのです(笑)あとは、パン・オ・レザンやパン・オ・ショコラ、ドーナッツ、マフィンなんかや、サラダ、ヨーグルト、果物も売っています。
ちょっと美味しくないからカフェットでは買いたくないなーと、僕はカフェットでサンドウィッチは2回しか買ったことがありません。家が学校の近くなのですぐ帰って食事をすることにしているのですが、どうしても昼をまたいで学校にいなくてはいけないときは手作りのサンドウィッチを作って持って行きます。サンドウィッチというと、僕はカタルーニャ地方の名物であるパン・コン・トマテ(パンとトマト、の意)を真似て、まず縦に割ったバゲットの内側に、生のニンニクとトマトを擦り込み、それからいろいろな具材を挟むのが好きなのです。が、学校に持って行く場合は生ニンニクは自重です(笑)
でも、他の人は結構カフェットのサントウィッチで昼食を済ませてしまっているんです。まぁ、これしかないから仕方がないのかもしれませんが。
しかも、このサンドウィッチの種類が少ない。日本のコンビニではサンドウィッチ、おにぎり合わせて、かなりの種類がそろえられていると思いますが、フランスでそんな豪華絢爛な品ぞろえは、カフェットに限らず、ついぞお目にかかったことがありません。
カフェットのサンドウィッチの種類は4つぐらいでしょうか。
基本はカマンベールブリーといった牛乳からできたチーズ、もしくはヤギの乳からできたチーズがメインのチーズサンド。鶏肉とスライスされたゆで卵とサラダが入った親子(?)サンド。サラダ多めでゆで卵やオリーブなんかも入っちゃってるニース風サンド。あとはベジタリアンサンドかな。ベジタリアンと言ってもチーズなどの乳製品は許容範囲に組み込まれるのが一般的なので、動物性たんぱく質も摂取できます。
たまにパストラミビーフやミートローフみたいなものが挟まっている、日本で言うところのソースカツサンドみたいなリッチなものもあるそうなのですが、僕は見たことがありません。
農業大国、フランス
話は変わりますが、フランスは言わずと知れた農業大国です。
農業が盛んなら、食べ物がいっぱいできます。世界的にみると、先進国中でフランスは常に食糧自給率が上位の国です。(対して、食料自給率が低くて危ない!とい言われ続けている日本は、常に下位です。。。)
農業大国という大きな受け皿があったからこそ、フランスの料理は華々しい発展を遂げたのでしょう。大学内では出会うことはありませんが、フランスには美味しいものがたくさんなるのも確かです。フランス中のたくさんの街や地域では、年中食べ物に関するイベントが開催されています。
しかし、レストランもカフェットも、もっというとスーパーとかでも、なんだか食欲をそそるような"出来上がった食べ物"がないんですよね。からあげ棒とかあっても良さそうなのに。。。
無い、ということは良い事なのか?
美味しそうなものが店頭に無い場合、考えられるデメリットとして大きいのは、「消費者の満足度が下がる」という事です。客商売として、これは由々しき事態なのですが、どうやらまずいサンドウィッチを食べている学生たちを見ていても、そんなに不満には思っていない様子。
それもそのはずで、フランスではどこに行ってもこんな感じで、例えば高速のパーキングエリアでも食べられるものと言えばたかが知れています。間違っても、限定のメロンパンで長蛇の列を作るようなところはありません。大体、コーラかコーヒーとサンドウィッチをかきこんで空腹を紛らわすくらい。
だから、彼らにとってカフェットで何か美味しいものを食べようという気持ちは、はじめから無いのでしょう。友人に聞いてみても「まぁ他にもサンドウィッチの種類があればあったでいいけど、無くても良いかな。そんなゆっくり食べてられないし(笑)」と言っていました。
では、メリットとしてはどんなことが考えられるでしょうか。
食品の問題
現在、わたしたちに身近な問題の一つに、食品ロスの問題があります。
食品ロスというのは、まだ食べられる食品をゴミにしてしまっていることを指します。フランス語ではgaspillage alimentaireと言います。
よく聞く似た言葉に、食品廃棄物というものがあります。フランス語ではdéchets alimentaires。複数形になります。「日本は食品廃棄量が多く、世界の栄養の足りない人たちを十分に食べさせることのできる量の食品を捨てている…」なんて言う事を聞いたことがあるかもしれません。
しかし、正確に言うと食品廃棄量にカウントされるものは、動物の骨や、廃油、果物・野菜の食べられない分もカウントされているので、それらをすべて他の人の食糧に変えることは残念ながらできません。食べられる部分もゴミも、一緒くたになっているのです。
しかし、食品ロスの部分はもったいないですよね。だって、まだ食べることができるのにゴミにしてしまった部分ですから。
この表でフランスと日本の、一人当たり年間の食品廃棄量と食品ロスの量を比較してみると、食品廃棄量ではフランスのほうが多く、食品ロス量では日本のほうが多いことが分かります。
フランスのサンドウィッチ、日本のおにぎり
日本に帰るたびに、日本のコンビニのおにぎりが美味しくてびっくりします。しかも、大体1€相当くらいで買えてしまうお手頃っぷりには、たくさんの企業努力に感謝してしまうくらい。
でも、もちろんこうやって消費者の満足感を作り出すために、多くのおにぎりが食べられることのないまま捨てられてしまっていることを忘れてはいけないとも思うのです。
そう考えると、フランスのサンドウィッチがトラウマ級にまずかろうと、それで食べてる人がまぁ良いと言っているのであれば、食品ロスの少ないフランスというのは悪くないのかもしれません。いや、地球環境や食糧問題という大きな物差しで見れば、そのほうが良いのでしょう。
もちろん、食品廃棄物も食品ロスも、このまますべてがゴミになっているわけではありません。家畜の飼料になったり、農作物の肥料になったりして、有効活用される部分もあります。しかし、全てが有効活用できていないのは言うまでもありません。いまだに捨てられている食品由来のゴミは、言ってみればお金に変えることのできる部分ですから、生物学者なり科学者たちが一生懸命研究していくことなるでしょう。
おわりに
無いを楽しむって、実はけっこう贅沢な感覚だと思うんです。だってそれって、恵まれすぎた環境に飽きて、何もない不便さを楽しむっていうことですから。
…って思ってたんですが、もともと何も無くてもそれが楽しいという事だってあるんですよね。楽しいとまではいかなくても、それが普通であれば、たいそれたものが無くても良いんです。しかも、無いという事によって環境問題まで改善できちゃうなら、それはそれで良いのでしょう。
これって一つの、自然体のフランスの生活なのなぁ、なんて考えてしまう秋の一日なのでした。ないない尽くしも悪くない。逆に、日本になくてフランスにあるものだっていっぱいあるしね。でも、スーパーでもいいから、日本の様に冷えたビールは置いてほしい!!!^^