フランシウム87

南フランスに住む日本人学生が発信するブログ。

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南仏の言葉の歴史から読み取れること┃南仏の方言の歴史は面白い!

 

この記事は以前の記事の続きです。

francium87.hatenablog.jp

 

 

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方言の歴史っておもしろい!

オクシタン語

前回の記事で書いた言葉をそれぞれ詳しく紹介します。

 

オクシタン語(別名オック語)は、南フランスを中心にかつて話されていた言語です。

 現在でもオクシタン語話者はいます。

 オクシタン語って、なんでオクシタン語っていうんでしょう?

 それは、昔々、南仏では"oui"を"oc"と言っていたんです。

 

「オック!オック!」なんかかわいらしいですね^^

 

なので、「はい」を"oc"と言う、という事から、この地方の言葉はオック語と呼ばれるようになったんです。

それが形が変わって、もうちょっと長い響きになって(名詞は長いほうがかっこいいと考えられていたい時代があったんです)オクシタン語と呼ばれるようになったのです。(諸説あります)

 

ちなみに、僕の住んでいるモンペリエ市は、ラングドック=ルーシヨン圏の中にあります。ラングドックはフランス語で書くと"Langudoc=Langue d'oc"となり、「ocの言語」という意味になります。

この地域ではオック語が使われていたという事が、現代の地名にも残っています。歴史のロマンですね^^

 

ちなみに、"oui"を"oc"と言っていたラングドック(Languedoc)に対して、北部はランクドゥイ(Langues d'oïl)と呼ばれていました。北部では"oui"が"oïl"だったんですね。

 

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カタルーニャ語

カタルーニャ語はスペインの方言?

スペイン北部のカタルーニャ地方で使われている言葉にカタラン語があります。

正確に言うと、カタランという単語だけですでに「カタルーニャの言葉」という意味になる名詞なので、この言語を指す時は、正しくは「カタラン」もしくは「カタルーニャ語」となります。古い言い方だと「カタロニア語」とも言います。

でも、日本では「カタラン語」という響きが伝わりやすいので、この言葉を使います。

 

今ではカタルーニャ地方というのはスペイン北部だけなのですが、もともとカタルーニャ地方というのはカタルーニャという辺境伯(地方の権力者)が治めていた場所を指す言葉です。その時代のカタルーニャが治めていた地域というのは、南はスペインのバレンシア地方から、北は南フランスのモンペリエを越えたあたりまでの範囲でした。

その後、時代が変わり、カタルーニャ辺境伯の領地はスペインとフランスの2つの国に分かれてしまいました。そのため、いまだにどちらの国でも一部の地域ではカタラン語を使い続けているのです。フランスでも、南部のペルピニャン以南の地域では、カタラン語の標識が目立ちます。

 バルセロナ人はカタラン語がお好き?

特に、スペイン北部のカタルーニャ地方ではカタラン語の普及に力を入れています。

 僕はよくカタルーニャ地方の中心都市・バルセロナに旅行に行くのですが(モンペリエからだととても行きやすい!)、バルセロナという町はスペインなのに、標準スペイン語よりもカタラン語をしゃべる人が多いのです。

 僕は、標準スペイン語なら話せますが、カタラン語は話せません。なのでバルセロナへ旅行したときにカタラン語で話されても全く意味が分かりません(*_*;

カタラン語のアイデンティティ

なぜ、カタルーニャの人たちがここまでカタラン語に固執するのでしょうか。

ひとつはカタルーニャは独自の文化があるという事でスペインから独立したいという気風があるからです。実際、去年の暮れにカタルーニャ独立派が選挙で勝っています。20世紀に起きたスペイン内戦とその後の独裁政治でカタルーニャ地方の文化・思想が徹底的に弾圧された、その反動があるのですが…この話はとても長くなってしまうのでまた改めて書きたいと思います。

 

francium87.hatenablog.jp

 

バスク語

 バスク地方という言葉を聞いたことはありますか?

 お菓子作りが好きな人なら「ガトーバスク」というお菓子の名前を知っているかもしれませんが、そのお菓子発祥の地です。

 

バスクというのは、今では太平洋のスペイン側とフランス側に分断されてしまったのですが、もともとは一つの繋がった地域・コミュニティーでした。

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黄色の部分がバスク地方です。スペイントフランスにまたがっているのが分かります。

 しかも、このバスクという地域はスペインやフランス語の言語(ラテン語から派生した言語)とは全く関連性のない、どこからやってきたのか未だに謎に包まれているバスク語バスク語ではエウスケラといいます)という言葉が話されているのです。一説では、バスク語のルーツは古代ルーン語にあるのだとか・・・

 

ここまで言葉の性質が違うと、ひとくくりに方言とは言えなくなってきますよね。

 

因みに、彼らバスク人アイデンティティーはスペインにもフランスにもなく、彼らが昔から長い間住み続けているバスクという地域にあるので、よく独立を主張したテロ行為が起きています。(特にスペイン側)

 

特に有名なものでは、2006年の暮れに起きたマドリッドのバラハス空港爆破テロ事件があります。

 

 

 

方言=アイデンティティ

 

方言とは、単にアクセントやイントネーションが違ったり、言葉の言い回しが違うだけのものではありません。

 方言というのは、人間のアイデンティティが表れる一つのツールなのです。

 

東京という、様々な地域から来た人たちが混ざりあう大都会で、自分と同じ方言の人に出会うとシンパシーを感じる、なんていうエピソードがありますが、まさに方言がアイデンティティーの一部であることを示している一例です。

 

逆に、よその地域の人が方言を真似てしゃべったとしても、どことなく違和感を感じるようです。

 

口から出る言葉のニュアンスが変わるだけで、ここまで人の心に影響を与えるなんて、方言って考えれば考えるほど面白いものです^^