ローマまでレスピーギのローマの松と噴水巡礼してきた話①
ローマといえば何を思い浮かべるでしょうか?
松?噴水?それとも、祭り?
イタリアの巨匠、レスピーギ
は?何言ってんのコイツ?と思った人もいることでしょう。
僕にとってローマといえば、イタリアの作曲家、オットリー・レスピーギの作曲したローマ三部作と言われる、「ローマの松」「ローマの噴水」「ローマの祭り」なのです。
レスピーギの作ったオーケストラの曲って、管楽器がうるさすぎて、根っからの“クラシック”好きには受け入れられないきらいがあるようなんですね。
でも、同時に彼は資料の管理職だったり、音楽史に精通した人物でもあったので、かなり古い時代の音楽を調べる機会に恵まれていたのです。
調べるだけでなく、それらを彼なりに編曲してリメイクしたのは素晴らしい功績です。
そんな彼の編曲した、古き良きイタリアの旋律がこちら。
Ottorino Respighi, 3/4 Siciliana-Andantino, Francesco Zuccarelli
昔、パスタソースのCMに使われてましたよね。もしかしたら、こんな古い話題、知らない人もいるかもしれないけど…
ローマ三部作
そんなレスピーギが、自分の国の素晴らしき古都、ローマに点在する数々の名所を題材に曲を書いているのです。
名所と言っても、その題材は「噴水」「松」「祭り」の3つで、それぞれ4つの曲からなるローマ3部作として、レスピーギの代表作として知られています。
「ローマの松」は
「ローマの噴水」は
「ローマの祭り」は割愛(´・ω・`)
レスピーギの聖地を巡礼してきた
19歳の時、スペインに住んでいる頃にローマに旅行に行ったのですが、もちろん目的はレスピーギが音楽で描いた景色を観に行くためでした。
今でも「ローマの松 訪問」とかでググっても、あまり検索結果がヒットしないマイナーな話題。当時ではネット上にほとんど情報がなかったのですが、それでも2日間ローマを巡って探しました。
あまりない情報なので、今後のクラシックおたくの方々の力になるかもしれないと思い、今回ここに書き留めることにしました。
まったく需要のない記事であるのは重々承知の上ですが、目を通してもらえると嬉しいです(笑)
ちなみに、「ローマの祭り」はイベントごとにつき、一回の訪問ですべてをコレクションすることは無理なので、まだ訪問していません。いつか祭りもコレクションしたいなぁー!
ローマの松
僕にとってローマ3部作というと、まず一番最初にでてくるのがローマの松です。
ローマの松を初めて聞いたのは、中学生の時の音楽の授業で。この時に第1楽章の、ボルゲーゼ荘の松を聞いて、とても印象に残ったのです。
しかも、ローマと言って松!と考え付いたレスピーギのセンスも笑えます。ローマという故郷に愛着がある人にしかわからないナニかが、松にはあるのでしょうね。
僕の撮りためたローマの松写真と共にお楽しみください。
第1楽章:ボルゲーゼ荘の松
ボルゲーゼ荘の松では、松の間を走り回る子供たちの賑やかな様子が、レスピーギのまばゆいばかりのオーケストレーションで表現されています。
…が、この時いたのは犬を連れたお年寄りばかり。。。
ボルゲーゼ荘内には、こんな感じの松林が延々と広がっています。
皆思い思いに散歩したり、読書したり。市民の憩いの場所なんですね。
とーっても混んでいたので入れなかったのですが、有名なボルゲーゼの美術館もあります。
第2楽章:カタコンベ付近の松
カタコンベというのは、帝政ローマ時代、当時は異教徒として迫害されたキリスト教徒の墓地のこと。
この地下に、蜘蛛の巣のように張り巡らされた洞窟があって、そこかしこに骨が埋まっているのです。
カタコンベ内には勝手に入れません。迷ったら死ぬから。
ガイドをつけて入らなくてはいけないので、この時僕はスペイン語のガイドをお願いしました。
そしたら、同じ時に洞窟に入った人で仲良くなったスペイン語をしゃべるおじさんがいました。なんでローマに来たの?って聞かれて、レスピーギのローマ3部作ゆかりの土地を巡ってる、って答えたらとても興味を持ってきたのです。
後でわかったのですが、その人はコスタリカの有名な作曲家だったのです。今でもコンタクトを取り続けていて、この出会いはこのときのローマ旅行のいいお土産になりました。
第3楽章:ジャニコロの松
ジャニコロの松はローマを取り巻くテヴェレ川の向こう側の、小高い丘の上に生えていました。
曲にはレスピーギがこのような文章を添えています。
「そよ風が大気をゆする。ジャニコロの松が満月のあかるい光に遠くくっきりと立っている。夜鶯が啼いている。」
夜鶯とは、ナイチンゲールと呼ばれる鳥です。日本ではこの鳥のさえずりを聞いたことがないと思うのですが…フランスではよく聞こえます。名前の通り、夜に細く美しい声で鳴く鳥です。フランス語ではrossignolと言います。
この曲には、終盤でナイチンゲールの声が録音されたテープを流すことになっています。アコースティックとデジタルの融合。
ちなみに、テヴェレ川を越えたあたりの地区の事を「トラス・テヴェレ」というそうです。トラスとはtransから来ている言葉で、意味は「向こう側」。こちら側はシス(cis)と言います。よく、「トランス状態になる」なんて言いますが、これはあっち側にイッちゃってる状態の事なんでしょうね。
トラス・テヴェレには美味しいレストランがいっぱいあったなぁ…
ローマには街中にもテイクアウトのピザ屋さんがたくさんあって、1ユーロくらいから切り売りしてくれるのです。
レストランに入れば、ピザは一人で一枚食べます。ナイフとフォークを使って。
日本のピザはアメリカンな感じがするので手づかみで食べることができますが、イタリアのピザは、薄い記事にとにかく大量の具材が乗っかっているので、ナイスとフォークがあったほうが都合がいいのです。
喋るときには常に手も使って、身振り手振りで話すイタリア人も、食事のときはナイフとフォークと料理に、手も口も塞がれてしまいます。
第4楽章:アッピア街道の松
アッピア街道というのは、ローマから南に延びているローマ時代に作られた石敷きのながーい道です。
曲の感じは、最初重々しい2拍子=兵士たちの行進を思わせるような雰囲気から、段々と華やかになり、最後は輝かしい幻影の中のローマ!と言わんばかりの壮麗さをもって終わる、音楽の万華鏡のような曲です。
特に冒頭のコル・アングレ(cor anglais)(イングリッシュホルン)の哀愁漂うメロディーは、中世風なのか、民謡風なのか、よくわからない感じがして好きな旋律の一つでもあります。
アッピアと言えば、東京にもアッピアという名前のレストランがありますよね。
有名人もよく来るというイタリアンの老舗です。ワゴンから料理してほしい食材を選ぶのが楽しいレストランです。
僕は日赤病院脇のアッピア・アルタばかりで、広尾の方はあまり覚えていないのですが、東京のフランス大使館のすぐそばの角にアッピアはあります。イタリアンのコースというのもフレンチのそれとは料理の組み立て方が違っていて、趣向が変わっていて良いですね。
おわりに
なんか覚書もだらだら書いていたら長くなってしまったので、ここらへんで終わり。
がれに読んでもらえるかもわかりませんが、いつか「ローマの噴水」編も書きたいと思います。
最後に、YouTubeで「ローマの松」を紹介させていただきます。
見た目華やかなのは、こちらの動画。
そうそう、曲のラストでは、舞台から離れたところで、別枠で演奏するトランペットとトロンボーンがいるんですね。これで、荘厳なファンファーレがとびぬけて聞こえてくるようになっています。
ナイチンゲールの鳴き声は15:00~。水笛でいけんじゃん、なんて言わないでくださいね。僕の好きなコル・アングレの旋律は16:20辺りから始まるので、良ければ聞いてみてください^^
Respighi - Pines of Rome with standing ovation!!!
見た目は美しくないのですが、やはり本命はイタリアの大御所、トスカニーニ様の指揮する演奏です。音ズレ激しいですが、最後はトスカニーニの顔だけ映しながら曲が終わるという、トスカニーニファン垂涎の動画(笑)
Arturo Toscanini conducts Respighi Pines of Rome NBC orchestra