フランシウム87

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サン・フェルミンの牛追い祭り┃スペイン、パンプローナへの旅

サン・フェルミンの牛追い祭りというのは、僕にとって長年行きたいと願っていたスペインのお祭りです。

スペインに住んでいた時には行くチャンスに恵まれず、その後日本に帰国したときに、ヘミングウェイの「日はまた昇る」を読んで、その情景描写に感動して、心惹かれていたのです。

 

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まるでセクト新興宗教)に染まったかのような、全て同じ正装(白い服に、首や腰に赤い布を巻いたもの)をしたサン・フェルミンの参加者たち。

 

 

 

 

 

スペイン3大祭り

太陽の国・スペインは、毎日どこかしらで祭りがある国だと言われています。

それは確かな話で、スペインはもともとカトリックの国なので、カレンダー上には日ごとに聖人が振り分けられています。そして、スペインの町や村は、それぞれに聖人を祭っているので、その成人が祝われる日が来ればお祭りが始まるのです。

しかし、陽気で敬虔なスペイン人たちはそれだけでは終わりません。なんと、町の守護聖人と一緒にその近くの聖人も一緒に祝っちゃったりして、結局何日もお祭りが続いているのです…

 

そんな祭りの多いスペインでも、特に大きな祭りが3つあります。

それは、セビージャの春祭り、バレンシアの火祭り、そして、今回僕が言ったパンプローナサン・フェルミン祭りです。

 

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サン・フェルミンの牛追い

 

サン・フェルミンの祭りは、日本では「スペインの牛追い祭り」として知られています。

あまり大きくはないパンプローナの街中を、祭りの朝に雄々しい闘牛の牛と人々が走り抜けるものです。

 

牛追い祭り」という名前が先行してしまっていて、サン・フェルミンと言えば牛を追う、と思われがちなのですが、実は牛追いは朝の8時から3分ほどで終わってしまいます。

 

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22時。翌朝街を走る牛たちのパンプローナ入りを、一目見ようと集まる人々。

 

サン・フェルミンは眠らない

 

僕は先週、このスペインバスク地方の片田舎にある街に行ってきました。

パンプローナに来た目的は、もちろんサン・フェルミン祭

 

スペインの祭りというのは、トマト祭りに然り、マグロのタパス祭りに然り、後世に代々語り継げそうなほど、それはそれは特徴的で破天荒な祭りが多いのです。

 

サン・フェルミンも、その他多くの祭りに引けを取らない立派なものでした。

この祭りの間、パンプローナの小村にいる人たちは、この後飲む酒の事と、今日の食事の事と、明日走る牛の事しか考えなくていいのです。こんなに楽しい日々が、他にあるでしょうか。

 

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人々は、まだ空がしらけ始めたばかりの朝の6時には、その1時間前にきれいに洗いたてられたパンプローナの石畳の道に、まだアルコールが抜け切れていない腫れた目をしながら、でも威勢よく出てきます。

この期間中、パンプローナの街中の牛が走るコースには、道の両脇に大きくて頑丈な枕木で作られた柵が設置されます。走る人は柵の中に。観覧したい人は柵の外で、朝早くから陣取るわけです。

 

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恐らく、この町にしか存在しないであろう標識。

 

6頭の雄々しい黒牛が街中に放たれて、一瞬の急激なアドレナリンの上昇を経験した人々は、牛追いが終わると急に疲れて、近くのカフェで今しがた見た牛たちとその日の闘牛を思い思いに占うと、しばしの休憩に向かいます。

そう、サン・フェルミンでは牛追いが終わった瞬間から正午までが、唯一、町が音楽隊の喧騒から解き放たれる休息の時間なのです。

 

正午になれば、人々は昼食前のアペリティフを一杯ひっかけに街に繰り出してゆきます。ビール、ベルムース、ワイン、チャコリ、シードル、パチャラン…スペインのボリュームあるヘビーな昼食をすべて堪能したいのであれば、これくらいの食前酒を胃に流し込んで、消化器官の準備運動をさせておかなくてはなりません。

 

スペインの食事はすべてが遅く、昼食は14~15時がスタート。

白い服に赤いスカーフという、サン・フェルミン独特の「正装」に身を包んだ人たちは、かねてから予約しておいたレストランや、お気に入りのバル、そんなものにはかまわず、次から次へと梯子をしたりして心ゆくまで食事とおしゃべりを楽しみます。

 

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斬新でユニークなレストランもありました。これはスペインではオーソドックスなトマトのサラダをアレンジしたもの。バジルのソルベ、アンチョビ、真珠型のモッツァレラチーズ、金を纏った卵が添えられています。

 

そうこうしているうちに、町のいたるところで日本の吹奏楽団のようなバンドが行進を始めます。なんとこのバンドたち、この後、音楽という名の暴力的なまでの公害をまき散らしながら、街を朝の6時ごろまで練り歩くのです。。。まぁ、そんな公害にもお構いなしで、みんな酔いと疲れで寝ることはできるのですが。

 

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夕方、食事が終わればスペインでは日中の気温が一番高くなる危険な時間帯です。こんな時は外を出歩いていては日射病で倒れてしまうかもしれません。そんな時は、郷に入っては郷に従え、シエスタで膨れたお腹をベッドに横たえながら、灼熱の太陽を寝過ごします。

 

太陽が南中を過ぎて、建物の影が伸びだしてくる19時ごろ、これまた遅くから始まるディナーの前のアペリティフの時間です。

あれだけ苦しくなるほど食べたランチの後でも、昼寝を挟むとまた食欲がわいてくるのだから不思議。というのも、パンプローナのバルのカウンターに並ぶおつまみの数々は、目にも美味しそうにセンス良く陳列されていて、そぞろ歩いている僕たちの胃袋を視覚から誘惑してくるのです。

 

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 下にはピンチョス(文字通りつまめる、一口サイズのスペインのつまみ)、上にはハモン(スペイン生ハム)の豚の足が限りなくぶら下がるバルの店内。つまみは一つ2€~。これでも僕がスペインに留学していた時よりは高くなったものです。。。

 

そんなタパスやピンチョスを少しつまみながら、また一杯ひっかけているうちに、意外と早く21時からのディナーの時間がやってきます。スペインでは23時までは一般的なレストランの入店時間ですので、21時では、これでもまだ前衛のグループに属することなります。

 

飽食の日々。

 

今回のバスクへの度を一言で表すことのできる、これ以上ないぴったりの言葉です。

 

それからはまどろみの中、とにかくひたすらサン・フェルミンの夜を楽しみます。

飲んでもよし、食べても良し、踊っても賭けをしても花火を見てもいいし、ナンパしても喧嘩しても道端で小さくなって寝てしまってもよし。

 

そうしているうちに、サン・フェルミンは次第に朝の神聖なる牛の儀式のために街全体の掃除の時間になります。

朝の5時ごろ、まずは洗剤入りの水で道に散乱した大きなごみを流し去り、それに次いで滑り止めの液体で石畳が磨かれます。これはもちろん、このあと走る牛と人たちが転ばないようにするため。

 

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こうして、パンプローナの街は最初の牛追いへと戻り、また一日が繰り返されるのです。。。

 

 

ヘミングウェイの「日はまた昇る

 

祭りの間、パンプローナには山間の村であるにも関わらず多くの外国人観光客が押し寄せてきます。

これは、アメリカ人作家、ヘミングウェイが、小説「日はまた昇る」のなかでパンプローナの情景を見事に描き上げ、そしてその本が世界的にベストセラーになったことで、この祭りが世界中に知られたためです。

 

ヘミングウェイがこの本の中で描いたのは、第1次世界大戦が終わった後に心が空っぽになってしまった若者たち「ロストジェネレーション」と呼ばれる世代の人々でした。果たして、今、自分の「ジェネレーション」は「ロスト」しているのかいないのか。ここ、パンプローナで日夜飲み騒いでいる人たちは、ヘミングウェイが見てきた人々と同じなのか違うのか。そんなことを考えながら祭りを楽しむことができます。

 

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ヘミングウェイが常連だったと言われるカフェ・イルーニャ。深夜過ぎからは、まるでディスコのよう。時代も流れている音楽も、ヘミングウェイの時代とは全く違うでしょうが、そこにいる若者たちの内面は変わっているのでしょうか…

 

僕は本をあまり多く読まないので、他の本と相対的に比べることができないのですが、「日はまた昇る」はとてもいい本だったと思います。Plutôt picaresque que pitoresque.ぜひ、一読することをお勧めします。

 

そして 、パンプローナにぜひ行ってみたいと思ったら、実際に行ってみることを強くお勧めします。

確かに、スペインバスク地方なんて行きにくい場所なのですが、僕はこのパンプローナと、お隣の美食の街、サン・セバスチャンに、今までどうして来なかったんだろうと後悔しましたし、今回行って良かったとつくづく感じています。そして、チャンスがあれば、また行きます。

 

 

アクセス

 

とっても行きにくいのですが、行けないことはありません。

僕は、今回住んでいる南仏のモンペリエという街からバスでトゥールーズを経由して行きました。モンペリエサン・セバスチャン間がバス(ouibus)12時間で34€(内、トゥールーズで乗り換え3時間)。サン・セバスチャンパンプローナ間がバス(ALSA)1時間8€。往復80€くらいですね。祭りの期間中、パンプローナまでのバスはかなり本数が増やされるようです。

その他、マドリッドから、バルセロナから陸路で行くことができます。

 

宿が高くなるので、早めの検討が必要です。

僕は1か月前にAirbnbを使って探したところ、祭りの開会・閉会宣言が行われる市庁舎のすぐ裏手に、大きい宿を見つけることができました。1泊50€/人くらいは最低でも見ておいたほうが良いでしょう。

後は…宿なしの人もいました。町が24時間オープンのコンシーニュ(荷物預り所)をやってくれていたので、宿をとらずにサン・フェルミンを楽しんでいる若者たちもいました。彼らは、どうせ夜通し飲み歩くので、昼は近くの山や原っぱにうつって仮眠をするのだそう。ちなみに、コンシーニュは24時間毎で4.6€。

 

ただし、食べるもの・飲むものは、フランスと比べるととーっても安いので、交通・宿泊さえまとまった金額を用意しておけば、後は切り詰めても楽しめます。もちろん、切り詰めないでレストランとか行く事もできるので、オプション多く楽しめます^^

 

 

 

 

おわりに

 

サン・フェルミン祭は、「こんな体験は初めて♥」な祭りでした。

僕もスペインに住んでいたことがあるので、ある程度スペイン文化のヤバさは知っているつもりでいたのですが、また新しい世界を垣間見た気がします。

そして、毎日フォアグラとチャコリ(バスク地方特産の微炭酸白ワイン)やティント・デ・ベラーノ(赤ワインをサイダーやレモネードで割った軽いお酒)を楽しんでいたら、おなかがポッコリ出てしまいました。こっちもヤバい。。。

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