フランシウム87

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で、フランス語の発音は変わるの?┃アクサン・シルコンフレックスをはじめフランス語の綴りが大きく変わります!

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最近、フランス人たち会話によく登場している「フランス語の綴りの単純化」

 


なんと、今月の初めにフランス教育省が、約2,400単語に影響するほどのフランス語スペルの改革を決定したのです!( フランス、単語2400語のつづりを単純化、国内から抗議も : CNN.co.jp)

フランス人はフランス語に誇りを持っている…なんて言われている彼らにとって、このニュースがかなりセンセーショナルなものになったというのは想像がつくでしょう。

フランス語って、綴りがいちいち面倒な言語なんです。

僕たちフランス語学習者にとってはもちろん、フランス語が母語の人たちにとってもフランス語の綴りの難しさはなかなか厄介なものなんですね。 

そんなフランス語の綴りの難しさを今年の9月から単純化して、子供たちやフランス語学習をしている人たちに対してフランス語というものをより簡単に学習できるようにしよう、というのが今回の決定の動機なんです。



で、綴りが変わったら発音も変わるの?

ここ、個人的に最初に気になったところなんですが、結果から言えば発音には何の変りもないそうです。

あぁ良かった

そもそもフランス語は発音とスペルが一致しないという点も問題視されてきたので、今回の改革はそういった問題点を解決する一つの手段にもなっいるわけです。

ちなみに「この単語、スペルが変わったら発音も変わるんじゃないか…」と思った単語を試しに日仏辞書で引いてみたら、辞書には変更前/変更後どちらのスペルも1つの項目の中に紹介されていたので、日本の辞書を使ってのフランス語学習にも問題はなさそうです。




どんな単語の綴りが変わるのか?

フランスの新聞、Libération紙の解説を引用します。

Quels mots pourront voir leur orthographe modifiée ?

Le premier concerné par ces rectifications : l’accent circonflexe, souvent vestige d’un «s» qui a disparu avec l’évolution de notre langue. Le «chapeau» qui donne des migraines aux CP ne sera plus obligatoire sur les lettres i et u, sauf quand il marque une terminaison verbale («qu'il fût»), sur les noms propres, ou quand il apporte une distinction de sens. «Mûr» conservera par exemple son accent pour ne pas le confondre avec «mur». Le verbe «s’entraîner» écrit avec un simple «i» sans accent ne sera en revanche plus considéré comme une faute.

Dans le viseur de l’Académie également, les traits d’union et les «ph». «Chauvesouris», «millepatte», «portemonnaie», ou «weekend» pourront s’écrire en un seul mot. Les sages ont aussi voulu simplifier des tournures orthographiques peu intuitives («ognon» au lieu d'«oignon», «nénufar» plutôt que «nénuphar») et corriger certaines anomalies ou cohérents des mots d’une même famille (comme «souffler» et «boursoufler», ce dernier pouvant prendre deux «f»).

Autres changements : certains accents («cèleri», «crèmerie», «règlementaire», «sècheresse»), ou encore le participe passé, qui pourra devenir invariable dans le cas où le verbe «laisser» est suivi d’un infinitif (elle s’est laissé mourir, ils se sont laissé faire).

Au total, 2 400 mots ont subi un lifting, soit environ 4% du lexique de la langue française.

まず初めに、フランス語が進化する中で消えた«s»を意味するアクサン・シルコンフレックスが今回のスペルの改革で変わります。小学1年生を悩ませてきたこの帽子(=アクサン・シルコンフレックス)は、これからは"i"と"u"の上につける必要がなくなるのです。ただし、動詞の活用語尾としてのアクサン・シルコンフレックス(«qu'il fût»))、固有名詞につくアクサン・シルコンフレックス、アクサン・シルコンフレックスの有無で意味が変わってしまう単語
は例外です。«Mûr»«mur»と区別をつけるために、アクサン・シルコンフレックスが使われ続けます。反対に動詞«s’entraîner»をアクサン・シルコンフレックスなしの«i»で書いても、これからはスペルミスとはみなされません。

ハイフンと«ph»も同様に、アカデミーの改革の対象になります。«Chauvesouris», «millepatte», «portemonnaie», «weekend» これらの単語はハイフンなしの1つの単語になります。(注:元は«Chauve-souris», «mille-patte», «porte-monnaie»,  «wee-kend» のように、間にハイフンがついていました。)アカデミーは発音に対して綴りが不自然な単語(«ognon» ←«oignon»,«nénufar» ← «nénuphar»)も修正し、他にも変則的だったり同一グループなのにスペルが異なる単語についても修正をします。(例えば«souffler» と«boursoufler»は、同じグループの単語なので、«boursoufler»→«boursouffler»になります)

このほかにもいくつかのアクセントの変更(«cèleri», «crèmerie», «règlementaire», «sècheresse»)、動詞«laisser»の過去分詞の整数一致が変更されて廃止になります。 (elle s'est laissée mourir→elle s’est laissé mourir, ils se sont laissés faire→ils se sont laissé faire

 

TF1が選ぶ動詞10選 

 TF1というフランステレビ局のサイト記事では、今回の改革で変更される動詞の中から10個の動詞が選ばれて紹介されています。

10 mots qui vont changer à la rentrée :

Oignon : ognon

Nénuphar : nénufar

S'entraîner : s'entraine

Maîtresse : maitresse

Coût : cout

Paraître : paraitre

Week-end : weekend

Mille-pattes : millepattes

Porte-monnaie : portemonnaie

Des après-midi : des après-midis


アクサン・シルコンフレックスがなくなって、ハイフンがなくなって、発音と綴りを一致させる修正があって…

ここまでは分かるんですが、après-midiにはなんで最後にsが付いちゃったんでしょう… 

TF1のサイトでは3分ほどの今回のニュース映像も見れるので、リスニング勉強に使ってみてください。

ここをクリック→Réforme de l'orthographe : 10 mots qui vont changer à la rentrée : MYTF1 




フランス人が異議を唱える点は綴りが変わるっていうところだけじゃない

言葉に対して多少なりとも保守的な印象を受けるフランス人は、今回の改革決定にはあまり肯定的ではないようです。

 


とはいえ、言語というものは常に進化するもの

現代の言葉遣いと中世の言葉遣いなんて天と地ほどの差があるのです。

そこでフランス人たちに、言葉は変わり続けるものであるという事を前提に、では今回の改革は何が問題なのかを尋ねてみました。

すると、問題なのは綴りが単純化されてフランス語美しさがなくなるというところではなく、フランス人の(もしくはフランス語をしゃべる人の)意識が単純化されてしまうところだ、という回答が複数あったのです。

これはどういうことかというと、アクサン・シルコンフレックスに然り、発音と綴りの不一致に然り、フランス語を学ぶという事はある程度の「不規則性」を覚えるという事で、それは子供のうちから基本的な忍耐力や正しいものを正しく保ち続ける能力を養ってくれるのだそう。

だから、今回の改革でフランス語が単純化されてしまうという事は、ひいては子供たちの精神や意識が十分に養われずに単純化されてしまうんではないか、という事です。




フランス語の綴りが変える人間の意識

この考え方はある程度賛成できるかな、と思います。

子供たちの忍耐力まで話を広げるとは、さすがフランス人。

まぁそういった人の意識面はさまざまな要因が絡んでくることなので、いちがいに今回の改革が影響するかと言ったら、確実にそうであるとは言い切れませんが、確かにこういう考え方もあるな、と思った意見でした。

日本でもら抜き言葉が最近問題視されてますし、ある言語学者はら抜き言葉」は遠からず日本語のスタンダードになる、とも言っているのですが、なかなかここまでの議論にはなってないですよね。

これは、日本人の日本語に対する意識が低いとかそういう事を言いたいんじゃなくて、言語の時と環境とともに移り変わる性質(流動性)がフランス語と日本語ではだいぶ違うんだなぁという感じがします。

そして、bantanは今回の改革についてまた少し違う位置の意見があるのです。




アクサン・シルコンフレックスを失うことで、僕たちフランス語学習者が失うもの

今回の改革は、フランス語学習の難しさを理解したうえで綴りの単純化を決定したというものなんですが、僕は同時にフランス語の歴史を感じる手段をひとつ失ってしまったと思うんですね。

つまり、ある一点を理解したために、他の一点を無視してしまう結果になるんじゃないか、と考えています。

ちょっとわかりづらいですね。

これを説明するために、そもそもアクサン・シルコンフレックスとは何なのかを紹介したいと思います。



アクサン・シルコンフレックスはフランス語の由来をたどる一つの手段

アクサン・シルコンフレックスの意味はこちらのサイトに紹介されているのでご覧ください。

フランス語のアクサンシルコンフレックスが持つ3つの意味 : フラ勉 

僕はこのサイトで紹介されているアクサン・シルコンフレックスの1つ目の意味、「英語のS」をいつも意識しています。

このサイトではアクサン・シルコンフレックスは英語のSに置き換えられると書いたりますが、正確には昔のフランス語には存在していたSがアクサン・シルコンフレックスに置き換えられてしまっているのです。

昔のフランス語…そう、フランス語はラテン語派生の言葉なので、今よりよりラテン語に近い形だったころのフランス語にはアクサン・シルコンフレックスではなくてSが使われていたのです。

その昔の形のフランス語は、その昔大西洋を渡って英語圏に吸収されたので、英語では昔のフランス語の名残であるSがそのままの形で残ってるんですね。

ラテン語の時にはSが存在していた証拠としては、他のラテン語派生の言葉を照らし合わせてみるとよくわかります。

たとえば、上のサイトの例にも出てきているcôte(海岸)は英語でcoast。

フランス語と同じラテン語派生であるスペイン語で海岸はcosta。

ね、全部にSがでてきてるでしょ

こんな感じで、アクサ・シルコンフレックスにによって隠されてしまっているSを掘り返して、いくつかの言葉と比較してみると、フランス語とラテン語とのつながり、フランス語がどういう進化をして、どういう移動をしたのか~という、悠久の歴史の流れを垣間見れるのです。


ある一点を理解したために、他の一点を無視してしまう

つまり、フランス語の難しさに迎合するあまり、言語において大切な別の面(=フランス語の成り立ちという歴史)を無視してしまう可能性が今回の改革には潜んでいると思いうんです。

特に、このアクサン・シルコンフレックスの役割は言語学者はもちろんのこと、僕たちフランス語学習者にとっても、言語の流れを知ってほかの言語と関係性を見出してより効率的な勉強をするためには大切な材料の一つだと考えているので、個人的には少し残念な決定だなと思いました。
 
フランス語学習者は今まで通りのクラシックな勉強方法がおすすめです。

 

アテネ・フランセの教材もしっかりと基礎を学べる良本です。

今フランス語を話してる人たちは、今まで通りのフランス語学習法に則ってフランス語を話していますからね。

 

 

フランス語の綴りは変わるけど…

フランス語のいくつかの単語の綴りが変わるという今回の改革。

しかし、この修正は今年の9月から実行されて、しかもこれからフランス語を学ぶ子供たちや、その教師を対象にされているものなので、すでにフランス語を学んでいる人はあえて新しいものを学ぶ必要はないそうです。

最低限、「あぁ変わった単語があるんだな」ていどの知識を押さえておけばいいです。

これからフランス語を勉強する人は、フランス語の教科書などで綴りが変わるようなので、新しい綴りで勉強していけば問題ないそうです。

ヘンなところにハイフンを入れてる人を見かけても、それは間違いではなくてちょっと古い方法なんだと理解してあげてください



フランス語の発音オススメの勉強方法はこちら↓

francium87.hatenablog.jp