AirBnBの問題性┃夏の長期休暇を迎える前に知っておいてほしいこと
「もうフランスはAirbnbにやられてしまった。日本はまだ間に合う、フランスと同じ轍(わだち)を踏まないでほしい」
これは今年の3月に日本で開かれた民泊に関するフォーラムでの、フランス側からでた言葉。
いったい、フランスに何があったのでしょう?
mokuji
- AirBnBとは?
- 年間観光者数、世界第1位のフランス
- めちゃくちゃ高いパリの家賃
- 家賃上昇に苦しむパリジャン
- 賃貸よりも稼げちゃうAirBnB
- 既存の宿泊施設は大きな被害をこうむる
- まだまだあるAirBnBの問題点
- AirBnBとうまく付き合うには
- まとめ
AirBnBとは?
たぶん日本でも話題になってきているであろうAirBnB。よみ方は「エアビーアンドビー」です。
Airbnb (エアビーアンドビー)とは、宿泊施設・民宿を貸し出す人向けのウェブサイトである。世界192カ国の33,000の都市で80万以上の宿を提供している。 -wikipedia
何ができるかというと、個人単位で部屋や住居の貸し借りが簡単にできるようになるサービスのことです。
もし今、あなたの家に空き部屋があったら、もしくは7月は海外旅行をする予定で家を空けるなら、AirBnBを使って簡単に部屋を誰かに貸し出すことができるのです。
逆に、パリに旅行したい人はAirBnBを使って、パリで格安の部屋を見つけることができるのです。
過去にも同様のサービスはあったし、もっとアグレッシブな「カウチサーフィン」というサービスも存在していました。(カウチサーフィンは、世界中で寝る場所を無料で提供してくれる人を探し出すことのできるサービス。文字通り「カウチ(ソファ、寝床」)を「サーフィン」して渡り歩ける)
しかし、旅館・ホテル以外でお金をとって人に宿泊所を提供できるシステムで、ここまで大きくなったのは、おそらくAirBnBが初めてでしょう。
年間観光者数、世界第1位のフランス
フランスは観光大国。世界で一番観光客をひきつけている国です。
そのフランスが冒頭で紹介したコメントを発したのです。
観光客が増えれば、より多くの観光客に提供する宿が必要になる。
AirBnBのように、簡単に多くの宿泊施設を探すことのできるプラットフォームがあるのは、むしろ歓迎されるべきことなのではないか、と思いませんか?
実は、AirBnBのように一般の人が自宅に値をつけて他人に貸し出すという事には、問題があるのです。
めちゃくちゃ高いパリの家賃
華の都パリでの生活って、多くの人が憧れるものだと思います。
日本でよく見る「奥様はパリジェンヌ」系の番組でも、住んでいる家は、高い天井に大きな窓。重厚な趣のあるアパルトマンが、歴史あるパリの街並みによく似合った「あぁ~パリってなんて素敵なところ」と思わせる映像が出てきます。
いや、実際パリは素敵ですし、僕もパリの歴史ある街並みは好きだし、そう家に住んでる人もいることは確かなんですけど。
現実は東京の中心地と似たようなものですよ。
僕、銀座で仕事をしていた時は茅場町に住んでいました。東京駅から徒歩20分です。
20㎡ほどのアパートで、家賃はものすごく高かったです。
パリの家賃も同じ感覚なんです。
こちらの見取り図をご覧ください。パリの学生、あるいは仕事をしている人でもこれくらいの広さのアパルトマンに住んでいるのは、今ではごく普通です。
その広さ、なんと約10㎡!
これで家賃が大体10万くらいします。
フランス人の平均収入は日本人のそれよりも低く、また失業率は日本に比べて大幅に高いことを考慮すると、この家賃の高さは殺人的です。
しかも、この部屋はまだバスルームが壁で仕切られているからいいものの、以前僕が見た家はコンロ・流し、シャワーユニット、机、棚が約4メートルの壁1辺にすべて並んでいて、いやもう住めんのここ?と思わざるをえませんでした。。。
家賃上昇に苦しむパリジャン
家賃が高くなる仕組みは大きく分けて2つ。
人口が多くなって家の需要が高まったか、家の数が減って家の需要が高まったか。
パリ市ではどちらのケースも当てはまってしまうのですが、特に後者の要因がここ数年で問題になってきています。
その問題の火に油を注いだのが、今回テーマにしたAirBnBです。
なぜAirBnBが問題なのでしょうか。
賃貸よりも稼げちゃうAirBnB
当たり前の話ですが、パリでホテル暮らしをするよりも、どこかの家を賃貸で借りてしまったほうが、滞在費は安くなります。旅行客は賃貸契約を結ぶのが難しいのでできませんが。
つまり、賃貸のほうがホテルのような短期貸しよりも安いのです。
大家さんは持っている家を使って、より大きなの利益を得たいと思います。
そこで考え付きました。「安く住んでる人を追い出して、その部屋をAirBnBに登録して短期貸しにしてしまえば多くの収入が入るじゃん!」と。
この現象が、実際に起きてしまっているんですね。
この問題では、現在、家に住んでいる人が家の契約更新ができなくなってしまうリスクに直面しているのです。
利益を得たいと思っているのは大家さんだけではありません。
賃貸人だって、クソ高いパリのアパルトマンを借りていると、少しでも家賃の足しにならないか収入になりそうなものを探します。
「僕の家にはリビングと寝室が別になってる。寝室を短期旅行者に貸し出せばいいんじゃないか。旅行客が泊まっている間は僕がリビングのソファで寝ればいいんだし。」という考えにいたるのです。
決して広くはないパリのアパルトマンの切り売り。こうした問題がフランスでは実際に起きているのです。
既存の宿泊施設は大きな被害をこうむる
もちろんAirBnBが影響を及ぼすのは大家さんと賃貸人だけではありません。
今存在しているホテルは、今まで受け入れていた旅行客の少なくない割合を、AirBnBによって民泊に流されてしまっているのです。
AirBnBの魅力的な点は、一般のホテルよりも安価な宿泊費で旅行ができるという点にあります。すでに大きな評判を得ているホテルであれば、既存の顧客を失うことはないでしょうが、中小規模のホテルであればAirBnBの進出は大きな損害をもたらします。
まぁこれが資本主義の定めであるならば、止む無し。という感じですが、これがさらに失業率を押し上げるとなると、経済の悪循環に拍車がかかってしまうわけですよね。
少し話は逸れますが、10年ほど前にもホテルなどの宿泊施設は大きな客足の減少に悩まされました。これも新しく登場した「格安サービス」が原因だったのですが、何だかわかるでしょうか?
それはLCC(格安航空会社)の台頭です。
当時、一気に就航路線が増加して、ヨーロッパ都市間10€程度の航空券がバンバンたたき売りされていた時代。若者の多くは、例えば週末ローマにサッカーの試合を見に行くのに、パリ発ローマ行きの日帰り往復チケットを数千円で買い、宿泊することなく海外へ飛ぶのがメジャーになっていたのです。日本ではちょっと考えづらい話ではありますが、一日に何本も飛行機が飛び交っているヨーロッパ都市間であれば、バスでの移動と同じ感覚で飛行機を使えるのです。
まだまだあるAirBnBの問題点
AirBnBの匿名性は、特に問題が多いと叫ばれている部分です。
匿名で登録、利益を得ることができるので、その利益にかかる税金をうやむやにしてしまうことは簡単です。収入申告しなければ、ばれませんからね。
また、貸し出した家で、家主不在中に薬物使用の上乱交パーティーで、家の中はめちゃくちゃ、家具の買い直しを余儀なくされた…なんていうニュースもありました。
人種によって貸し出しを許可するか決めるなど、人種差別の面からも批判の声が上がっています。
このサイトには、その他の問題点も挙げられています。
今回、この記事を書くきっかけになったサイトです。
AirBnBとうまく付き合うには
何かと問題の多いAirBnBですが、「AirBnBは使っちゃダメ!」とは言いません。
なぜなら、これによって新しい層を観光誘致に持ってくることができるからです。
それによって、また新たな問題が出てくることが予想されますが、それは観光立国の課題。新たな問題を的確に処理していかなければ、フランスは観光を失えば農業と原子力だけの世界になります。
そのためには、AirBnB側のプラットフォームの是正が急務ですね。
私たちが安心して使えるよう、しっかりと民泊提供側の情報が見えるようにすることは、必要不可欠だと思います。
先日、ユーロカップを迎えたフランスでは、パリ市長がこんな声明を出しました。
簡単に言うと、AirBnBの規約違反をしている(脱税など)隣人を見つけたら、通報してくれ。というお達しです。
とはいえ、パリ市長も市民同士の密告を推奨しているわけでなく、あくまで「隣人から通報される以前に、事前に規則を守るよう、一市民としてのモラルを持つ」ことを期待しているわけです。
なんだか世知辛い世の中になってしまいましたが、これくらいしないと身分を明かしてサービスを利用するようにはならないんでしょうね。。。
まとめ
これから長期休暇で海外旅行を計画する人も多いでしょう。
特に学生はなるべくリーズナブルな旅行をしたいと考えていると思います。僕もその一人です。
AirBnBは、海外旅行で大きくなりがちな宿泊費というコストを大きく軽減することができるサービス。しかも、現地の人と繋がりを持ついい機会にもなる、とても興味深いサービスです。
しかし、このサービスはまだ始まったばかりで、裏では多くの問題が解決できないでいることを忘れないでください。AirBnBの一刻も早いサービス向上を願いますが、それまでは私たちが思慮ある使い方で、この新しいサービスと付き合っていかなくてはいけません。