フランス語のdeの使い方について考えてみる┃ゼロにつく冠詞
フランス語を勉強していて"de"の用法に迷ったことはないでしょうか。
deは、基本的には「~の」と訳します。mairie de Montpellierなら「モンペリエの市役所」。ルーブル美術館はmusée du Louvre...おやおや、deがduに変わってしまいましたね。d'aujourd'hui もはやカモフラージュしてしまってどこにいるのかわかりません…
このように、ちょっと観察しただけでややこしそうなのが分かる単語です。
今回注目してもらいたいのはこちらのフレーズ。
J'ai une livre de kiwis mais je n'ai pas de citron.
適当に思いついた文章ですが、ここには2つのdeがあります。どうしてこれらはduやde la、desではないのでしようか。
deのバリエーションについて
まずはいくつかあるdeの形についてみてみましょう。
まず基本形のde。これに男性・女性定冠詞であるle/laがつくと、de+le→du, de+la→de la になります。
例を一つ。「~から来る」というのは「来る venir」が起点を表す前置詞"de"を伴って"venir de ~"。国の名前にはそれぞれ性があり(国の名前には性別がある - フランシウム87)日本は男性形なので"le Japon"です。「日本から来る」は上の2つをつなげるので”venir de+le Japon”となりますね。しかし、ここで"de+le"の合体が起きて”venir du Japon”となるのです。
特に決まった物事を指さない場合、それが「いくつかの」複数のものである場合は"des"を使います。1個でも2個でもなく、「いくつかの」リンゴを持っているときは"des pommes"となるんですね。
というのが超簡単なサラッとした説明で、実まだまだ奥が深いのですが、今回はそこら辺の説明は割愛。これだけdeの種類があるんだ~くらいに思ってもらえればokです。今回伝えたいのは全てのdeの使い方ではなくて、明日から使える簡単な2つのdeの使い方なのです。
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例文を見てみる
例文の前半部分にご注目。
J'ai une livre de kiwis
une livre...この単語をご存知でしょうか。
un livreなら、きっとほとんどの人が知っているのと思います。そう。「本」ですね。
しかし、これが同じ綴り、同じ発音で女性形になると「半キログラム」という意味になります。つまり500グラムのことです。
なんじゃそりゃ、って感じですが、この単語は今でも市場の買い物のやり取りを注意深く聞いていると、使う人が結構いるのです。使う人が結構いるということは、知っておいて損はないということ。
さて、ここで「500グラムのキウイ」と言ったら、当然複数あるということが想像できるでしょう。まさか1個が半キログラムもあるキウイを想像する人はいないと思います。しかし、ここではキウイが8個なのか9個なのか、正確な数が示されていません。
個数の代わりに量を示している単語はなんですか?そう、"une livre"ですね。
言い換えれば、名詞の数は"量"に依存しているわけです。
このように、"un, deux, trois..." という数で物を数えていない場合、"量+de+名詞"で書かれます。例文の場合は"une livre de kiwis"です。
そして!この"量+de+名詞"の組み合わせの時、あいだでコネクターの役をしている"de"は形が変わらないのです。一方で、その後にある"kiwis"は「500グラムもあれば複数」っていうことが容易に想像できるので、最後に複数形の"s"が付いています。
この法則は他の多くのことに当てはめることができます。
例えば「多くの beaucoup」。
Il y a beaucoup de gens!
たくさんの=量、gens=名詞 間にはコネクターのdeが入っていますね。
gensが複数形のsを持っているのにかかわらず、コネクターはdesではなくてdeである点に注目してください。
例えばun verre d'eau
un verre=量、eau=名詞 コネクターは常にdeです。
このケースの場合、コップ1杯ということは示されているのですが、その中の水の量はわからないので、やはりどれくらいの水があるのかということは"量"に依存しているのです。もともと、水というのは1個、2個…とは数えることができないですしね。
例えば、もっと抽象的な名詞にも使えます。
Un peu de silence, s'il te plaît!
un peu=量、silence=名詞 コネクターは常にdeです。
silenceも水と同様、個数を数えることができないので、なにか"量"を表す単語に依存しなくてはいけないのです。
そう、正確な数が分からない、もしくは数えることができないときは、この依存のdeを使うのです!
文章の後半は?
je n'ai pas de citron
こちらの説明はとってもかんたんです。
上の依存のdeに対して、これはゼロに付くdeと名付けています。
レモンを持っていない=0個のレモンということなので、ゼロの代わりにdeを使います。
Il n'y a pas de chat.でも良いでしょう。猫が一匹もいないといことはゼロ匹の猫です。
On n'a pas de cours aujourd'hui!!! 思わず「ヤッター!」と叫びたくなるフレーズです(笑)授業が一つもなければ、ゼロの不定冠詞であるdeが付くのです。coursは単数形でも最後にsが付くので注意。
フランス語って少しずつ法則を理解すれば、なにも難しいものじゃないんだと思いましたか?
そう思っていただけると、僕はとっても嬉しいです。
が。フランス語がそんなに優しいわけがありません。
ここから先はフランス語学習でおなじみの「例外」を紹介するコーナーです。
心臓の弱い方は見ないようにしてください。
【閲覧注意】ゼロのdeの例外事項
物事、例外はつきものとはよく言いますが、フランス語ほど例外にまみれたものはないんじゃないかと思います。
ゼロの定冠詞。さっき僕が説明したようにゼロという数字の代わりにdeを置くという考えを持ってもらっても構いません。この考えでしゃべっていて、日常生活でそう困ることはないでしょう。というか、会話中にいちいち「否定文の時の不定冠詞って何だっけ…あぁー!」というパニックに陥ることはなくなると思います。
しかし、これで試験の文法問題がすべてパスできるかというと、世の中そんなに甘くないのが現状です。
まず、対比を表す場合、ゼロのdeは使えなくなります。
Je n'ai pas acheté des citrons mais j'ai acheté des kiwis.
キウイを買ったがレモンを買わなかった場合。キウイとレモンを並列して対比している場合は、たとえレモンがゼロ個であってもdeではなくてdesにした上、名詞は複数形になるのですね。
実はここには微妙なニュアンスの違いがありまして、「何か買ったんだけど、それはレモンじゃなくて~」という前提条件のような雰囲気があるんですね。
僕が最初に提示した例文の場合は、同格に並べての対比ではないので、ゼロのdeが使えます。
よく文法書内で「否定文の時はdeを名詞の前に置く」というような解説がされていることがありますが、これははっきり言って間違いです。
例えば、「レモンを1個じゃなくて2個持っているんだ」と言いたいとき、前半は否定文になりますね。しかし実際はこうなります。
Je n'ai pas acheté un citron, mais j'ai acheté deux citrons.
あれ、これは例外ではないですね。ゼロのdeの考え方の成功例でした。
さらに言うと、こんな事態に陥ります。
Je n'ai pas acheté des citrons.
もう文法事項を無視しただけの文章にしか見えないのですが、これも一つの正しい文章ではあるのです。
困ったことに、言語というのは文法規則にがんじがらめなのではなく、人の考えを目で読む/耳で聞くためにある程度自由な存在でいるのです。それがゆえに、僕たちは自分の頭の中の細かなニュアンスを言葉巧みに伝えることができますし、自分のニュアンスを正確に伝えるためには、少々文法規則から外れてしまうことだってあるのです。しかし、その変化球も相手に理解してもらえれば、四角四面の限られた表現の、一歩先にある細かなニュアンスのやり取りができるのですが、変化球を受け取ってもらえないときには、その言葉は意味の分からないものになってしまう恐れがあります。
このフランス語の文章は、一見すると文法上間違っているように見えます。
しかし、この文章の前に「レモンの代わりにあるものを買ったんだけど」という前提条件を置くとどうなるでしょう。あらふしぎ、文章は先ほどの例外で紹介した「対比」の文章になりますね。
というわけで、この場合はdesを使ってもokなのです。
おわりに
数量依存のde
ゼロにつくde
今回は2つのdeを紹介しました。
フランス語を話すときについついあやふやになってしまう人は、この規則を覚えておくと会話がずっと楽になると思います^^もちろん、どちらのケースにも例外はあるのですが、日常会話くらいだったらこれくらいの知識で問題ないかと思います。ただし、フランス語試験を受ける予定の人は、しっかり例外まで押さえておく必要があります!
定冠詞、不定冠詞については、この本の中でちょこちょことコラム形式でわかりやすく説明されていました。