フランス人は(くっさい)チーズがお好き♥
フランス人にとって、日本の食べ物と聞いて思い浮かべるものナンバーワンは、恐らく「寿司」でしょう。寿司は立派なインターナショナルな料理ですね。
日本人にとって、フランスの代表的な食べ物のイメージって何でしょうか。
フォアグラ、ワイン、チーズ?
ステレオタイプで語られるその国の代表的な食べ物って、一般的に食べられる料理でない場合がありますよね。日本の寿司なんてまさにその好例で、僕たち日本人は毎日のように寿司を食べるなんてことはあまりないと思います。他にも、スペインのパエリアなんかも、毎日食べるようなものではありません。(イタリアのピザ、インドのカレーなんかは、ひょっとしたらデイリーな食べ物かもしれませんが^^)
では、フランスでもっともポピュラーな食べ物って、いったい何でしょうか?
一年毎日食べても食べきれないほどの種類
僕は、フランスの国民的な食べ物はチーズだと思います。
牛乳からできたチーズ、ヤギ乳からできたチーズ、羊乳からできたチーズ
青いの、白いの、黒いの、オレンジなの
山のチーズ、大地のチーズ
東西南北
硬い、柔らかい etc...
フランスのチーズは実に個性豊かで、地域性が出ているのがとても面白いところです。
また、チーズにもワインと同じような生産地呼称制度が設けられているので、「この地域で作られたチーズはこういう名前」といったように、生産地ごとに様々な名前が付けられているんです。
その数はとても多く、毎日ひとつの名称のチーズを食べ続けても、一年ではフランス中のチーズを食べきることができないと言われています。
この記事に、フランスの普通のスーパーのチーズ売り場の写真が載っています。
チーズの立場はメインの後、デザートの前
日本でもフレンチのフルコースを食べると、チーズはメインの後、デザートの前に提供されます。
これってちょっと面白くないですか?
こんなに味が濃くて、しかも乳製品でこってりしているものを、肉や魚を食べた後に食べて、さらにその後甘いものを食べるんです。飯テロですね。
これはフランスの家庭でも同じように出されています。
フランスの家庭料理って、実は日本人が想像するよりもずっとお粗末なもので(勿論、例外的な過程もあると思いますが…というか、そう願っています)、平日の夕飯であればパスタとサラダと目玉焼き、とか、煮豆とソーセージ、なんて献立が一般的なのです。
でも、料理はこんなに質素なのに、彼らの食卓にはいつもチーズとバゲット(フランスパン)があり、主催を食べ終わった後にチーズをむしゃむしゃと食べ始めるのです。
そう、チーズはフランス人にとって無くてはならないソウルフードなんじゃないかと、僕は思うんです。
学校の給食にも、チーズが出てきます。
フランス人のお宅にお邪魔して、さらにお邪魔なことに冷蔵庫の中なんかを拝見させてもらうと、チーズ用の大きなタッパーを発見することがあります。これは、チーズは種類によってかなり強烈な匂いを発しますし、熟成にしたがって臭いが強くなってくるものなので、チーズをそのまま冷蔵庫に入れてしまうと、冷蔵庫内がゴミ収集所のような匂い(失敬!)になってしまうからなんですね。
チーズの最良のパートナー
フランシ人たちがチーズを食べるときに欠かせないもの。何だと思いますか?
これがないとチーズは食べられない!という人もいるくらいで、夕飯の前に慌てて買いに走る…なんてこともあるほど。
それは、バゲット(フランスパン)です。
チーズとバゲットの相性は、なるほど確かにとても良く、チーズの最良のパートナーはバゲットと言えると思います。
これは、味の相補効果によるものだと考えています。チーズは塩味が濃く、クリーミーで香りの強いものである一方、淡白でパリッとした香ばしいバゲットは、チーズにない味を提供するので、この2つが口の中で交じるとお互いに足りない味を補い合って、より完成された味になります。
話は逸れますが、この効果は「塩だけで酒(日本酒)が飲める」という人はよく自覚していることだと思います。実は日本酒は味の構成的に見るととても多くの味から成り立っているのですが、ただ足りないのが「塩味」なんですね。だから塩があれば日本酒の味は完成形となって、より美味しく感じるのです。
フランスのソウルフード
チーズを日本の食卓にあるものに例えるとすると、僕は漬物に近いんじゃないかな、と思います。
まぁ、もっとも日本で漬物は無くてはならない存在ではないと思うのですが、漬物が食卓にあるとなんかホッとするし、白いご飯と一緒に食べたくなりますよね。しかもビールによく合う!
味噌汁もいけるかなーと思ったんですが、こちらは準備に時間がかかるので却下。チーズや漬物のように、かんたんに食卓に並べることができるのもポイントです。
さて、チーズがフランスのソウルフードと言った事には理由があります。
それは、僕の大学生活での話。
大学にいると、心なしかチーズに出会う機会が多いんです。それも、チーズそのものに出会うのではなく、チーズが授業によく出てくるのです。
例えば、僕は生物学を勉強しているので、微生物の勉強も良くするのですが、微生物関連のときには必ずと行っていいほどチーズに使われる菌が出てきます。先生は「この菌は○○というチーズに使われる菌で~」とか、「皆さんの冷蔵庫の中にあるカマンベールを数ヶ月感放置しておくと~」みたいな話題が出るのです。
栄養学でも、もちろんチーズはその他の乳製品とは別に扱われ、ヨーグルトを上回る、かなりの文章で説明されていました。
また、フランスでは円グラフのことを「カマンベール」と言います。英語だと「パイチャート」ですね。(カマンベールグラフは俗称であって、正式名称はdiagramme circulaireです)
とまぁ、こんな感じで授業中にチーズが話題にでると、決まって教室の空気が「ザワッ」となるんですよね。テーズという言葉の響きは、彼らにとって相当魅力的なものなのでしょう。
しかも、みんなチーズに対しては一様に意識が高いようで、「チーズ詳しくないんだけど、おすすめってある?」って聞くと、チーズの名前、作られた地域(だいたい自分たちの生まれ故郷に近いことが多い)、値段、食べ方なんかを熱心に教えてくれます。しかも、おすすめされたチーズを食べてみると、大体どれもおいしいんですよね。さすが、チーズの国の民。
この前の微生物学の実験の授業では、パンに生えたカビを観察するというものがあったのですが、そのカビというのが高級なチーズに使われる菌であったようで、生徒の中に「なんで牛乳じゃなくてパンなんかに生やしたんだ…」と嘆いているのを見て笑ってしまいました。
日本では高価なフランスのチーズ
日本でもフランスのチーズを買うことはできますが、輸送費や関税の影響で、フランスよりも価格が上がってしまいがちです。
ただ、日本でチーズを買うと、豊富な日本酒とのマリアージュを楽しむことができます。日本酒とチーズって、意外とイケる組み合わせなんですよ~^^
フランスだと、日本ではなかなか食べることのできないチーズかんたんに手に入ります。例えば超フレッシュなヤギのチーズは日本ではなかなか手に入りませんが、フランスならそこらへんの市場でよく見かけます。夏ならそれに熟した果物を、冬ならコンフィチュールやハチミツを添えるだけで、毎朝起きるのが楽しみになるような朝ごはんになるのです。
チーズ歴で言ったら若輩者の僕でも好きになるくらいなんだから、生まれたときからチーズと共に生きてきたフランス人にとっては、それはそれは大事な食材なのでしょう。
おわりに
フランスといえば、ワインやフォアグラ、様々な肉や魚介類など美味しいものはたくさんありますが、忘れてはいけないものがチーズです。
フランス人との会話で話題に困ったときはチーズの話をふってみましょう。きっと、チーズ談義に花が咲くと思います^^