フランシウム87

南フランスに住む日本人学生が発信するブログ。

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ポタジェってスープ?ポタージュ、ポタジェ、ポを考える

最近、ベルばらを読み返しました(*´ω`)

池田理代子先生、さすがですね。もう読ませる読ませる。一気に全巻読破しちゃいました。何時間読んでいても、どんどん物語の世界に引き込まれて行って飽きることがありません!

 

さて、ベルばらと言えば王妃、マリーアントワネット。

今日はマリーアントワネットが好んで過ごした小トリアノン宮のほとりから話を始めます。

 

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田舎情緒あふれる王妃のエリア

ヴェルサイユの中で、あまり人気がないわりに日本人にとっては、ある意味「聖地」のような場所があります。それが、小トリアノン宮。

小というくらいですから、大もあります。大きいほうはグラン・トリアノンと言い、「太陽王ルイ14世が作った荘厳な建物で、世界中の観光客が集まります。対して、小さいほうはプティ・トリアノンと呼ばれる、ルイ15世が作ったもの。ヴェルサイユ宮殿のまばゆいばかりの装飾とは対照的で、かなり地味なエリア。

ここは、堅苦しい宮廷の生活から逃れるために作られた、貴族の憩いの場。ベルばらでも、王妃マリーアントワネットが、小トリアノンで子供たちとのびのびと過ごす様子が描かれています。そのため、日本のベルばらファンは、ヴェルサイユ宮殿に来たら小トリアノンにも!となるんですね。

 

さて、この小トリアノン宮の周りには、王妃の村里(Hameau de la reine)と呼ばれる田舎情緒あふれるコーナーが設けられています。これはこれで見物するのは面白く、当時の王族が贅を尽くした生活の先に求めたものがコレなんだぁ。。。と、感慨深いものがあります。

 

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しかし、今回は小トリアノン宮の隣にある緑の建物に注目しましょう。

 

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Pavillon fraisという名前のこちらの建物。さわやかな緑色が印象深い建物ではないでしょうか。「涼のパビリオン」という意味をの名前を持つこの建物は、夏の間、軽食をとったり、涼を楽しむために作られたのだそうです。そして、このすぐ隣には菜園が設けられていたため、収穫したばかりの新鮮な食材を楽しむことができたのだそう。フランスでは17世紀ごろまで、身分の高い人は肉類しか食べなかったそうです。というのも、地面に近い場所で作られる野菜は卑しいもので、庶民が食べるものだと考えていたから。もちろん、肉類ばかり食べていては健康によくありません。食事内容まで窮屈な宮廷の生活から抜け出す小トリアノンの一角は、当時の貴族たちにとって本当に憩いの場だったのでしょう。

 

Potager , potage?

 

さて、僕がこのパビリオンを始めて見たのが19歳の時。その時は特に何とも思わなかったのですが、23歳の時(ちょうどフランス留学を始めたころです)、改めて日本人の友達と見に行った時に、近くに立っていた説明書きの看板を読んで不思議に思いました。

というのも、その看板には「この建物では、王がpotagerの味見をした。」と書かれていたからです。

僕はその時、てっきりpotagerをpotageと読み間違えてしまったのです。頭の中には、緑の建物の中でコーンポタージュを飲むルイ15世。(だって、日本でポタージュと言えば、コーンポタージュじゃないですか?)なんだか、すごい特殊な環境のためにしつらえられた建物だな、と思ったのを覚えています。

後になって、ちゃんと辞書を引いてみると、あらびっくり。potage(ポタージュ)の他にpotager(菜園)という単語があるじゃないですか。よく似た単語だこと…

それもそのはず。菜園とポタージュ。一見するとあまり関係がなさそうな2つの単語ですが、実はつながっていたのです。

 

potagerもpotageも、もとは「ポ」!

 

ちょっと話が逸れますが、フランス語を勉強していて語尾の音を発音しないのがなんか物足りなく感じる時ってありませんか?僕はフランス語を勉強し始めた時に、potを「ポ」としか発音しないのがしばらく腑に落ちませんでした(;´∀`)

 

話は戻って、potager(菜園)もpotage(ポタージュ、スープ)も、大本はpot(鍋)という言葉なのです。

最初にpotという単語があり、そこに具材を入れて火にかけた料理がpotage、potageに供する食材(主に野菜)を作る場所がpotagerという名前になったのだそう。

野菜を作る場所だからsaladierとかにすれば良かったのに…('_')ナゾ

 

では、なぜpotという言葉は「鍋」という意味になったのでしょうか。

その起源はラテン語のpotare「飲む」という言葉が由来です。飲むものを入れる容器として、pot「鍋」という言葉が生まれました。

ラテン語のカタチをよく現代までとどめていると言われるスペイン語では、potarという動詞があります。これは「飲む」「(液体などを)吸収する」という意味でつかわれるのですが、たまに反対の「吐く」という意味でつかわれることもあります。

当時、スペインのバレンシアスペイン語を勉強していた時に、語学学校の先生に「見た目がpotar(吐く)したときのモノに似てるから、potage(スペイン語ではポタージュは「ポタヘ」と読みます)って言うんだよ~^^」って教わりましたが、違いましたね。なんて適当なんだ、スペイン人…

 

ちなみに、pot-から始まる言葉でもう一つ、私たちの生活に割と身近な言葉があります。よく、フランスを旅行していると、水飲み場に"EAU POTABLE"と書かれているのを見かけるでしょう。もしくは、湧き水や、いかにも古そうな水道や噴水に"EAU NON POTABLE"と書かれていることがあります。

potableは「飲用可能な」という意味です。ラテン語で「飲む」を意味するpotareの頭の部分が付いていますね。portable「携行可能な」ではないですよ!笑

 

おわりに

potageの語源であるpotareは「飲む」という意味なのに、フランス語ではスープに対して「食べる」という動詞を使います。

 

 

うーん、フランス語って謎。