フランシウム87

南フランスに住む日本人学生が発信するブログ。

気になる単語を入力して検索してください🌛

フランス語の発音┃œという合字はどう発音している?

corps, cours, cœur...この3つの単語を声に出して読んでみてください。

フランス語を学び始めたとき、この3つの発音の区別に苦心するする人は少なくないはず。corpsの発音は良いとしても、あとの2つの発音は日本語をはなす私たちにとってなじみのない音ですからね。

今回は合字(ごうじ)と呼ばれる文字の一つ、œの発音について解説します。

 

f:id:bantan19:20181006114610j:plain

 

 

見慣れない文字「œ」とは?

 

œとは合字の一種です。

合字についてはwikipediaで次のように書かれています。

 

合字(ごうじ、Ligature)とは、複数の文字を合成して一文字にしたもの。抱き字連字[1]ともいう。ユリウス・カエサルの表記「Julius Cæsar」の「æ」が典型的な合字の例である。 

 

また、フランス語で見られるœに関しては、

 

古典ラテン語には二重母音 oe があり、主に古代ギリシア語からの借用語に使われた。古代においても現代においてもこの二重母音は合字ではなく2文字として分けて書かれるが、中世以来これを œ という合字で表すことが行われ、現在でも使われることがある(例: 「Annuit cœptis」、スイス・フラン硬貨に刻まれた「Confœderatio Helvetica」)。 

と説明されています。

 

フランス語の単語の中でも、合字は頻繁に出てくるわけではありません。しかし、cœurやfœtusなどの頻出単語にも使われている文字なので疎かにはできません。

さらに、読むには問題が無くても実際に発音するとなるとちょっとやっかいな文字なので、この記事を読んで整理しておきましょう。

 

ポイントは、「œの発音は3つある」です。

 

œの発音は3つある

 

まず押さえておくべきことは、œの3つの発音です。

(発音記号がよくわからない!という人はしっかり勉強しておきましょう。発音記号を知ることはフランス語学習の大きな助けになるので、決して無駄にはなりません!)

 

 

すなわち、[e]・[œ]・[ø] の3つです。

 

1.[e]

僕も他のフランス語指導者と同じく、フランス語を日本語で正しく表記することは不可能だと考えています。しかし、便宜的に言うならば [e] の音は日本語の「エ」の音と酷似しています。(少なくとも「エ」と発音して通じます)

œを [e] と発音する単語は、ギリシャ語に起源をもつ言葉です。西洋の医学や生物学はギリシャ文明のながれを強く受け継いでいるものなので、僕のように生物学を学んでいるとこの手の単語と多く出会います。

たとえば、fœtus(胎児)、cœcum(盲腸)は医学的な言葉でギリシャ語を起源としているため、どちらも œ = [e] と発音します。同じようにワインについて話すときに必須の単語、œnologieについても同じことが言えます。

 

cœと書いてあるのでカ行の音になるような印象がありますが、実際はサ行の音になります。cœlacanthe(シーラカンス)をひとつ例として覚えておくと良いでしょう。

2.[œ]

 

これはフランス語らしい音の一つと言っても良いかもしれません。

cœur(心)、bœuf(牛)、œil(目、複数の場合はyeuxに変化)のœ = [œ] と発音します。この音の発音の方法は [ø] とあわせて後で説明します。

 

3.[ø]

 

vœu(願い)、nœud(結び目)のœは[ø] と発音します。

[œ]・[ø] の発音になる単語はラテン語由来です。もともとこれらの単語のœの部分はoと書かれていましたが、ルネッサンス期に本来の学者語(vœuの学者語はvoter)との結びつきを示すためにœに置き換えられました。学者語って何?わざわざ置き換える意味は??となりますが、昔の人の考えたことです。気にしてはいけません(笑)

別の説では、より見やすくするために文字が置き換えられたとされています。例えばnuedは見やすくするためにnœudとなりました。

 

4.œにならなかった単語

 

後者の例はすべての単語に適用されたわけではありませんでした。

例えば葉を意味するfueilはfœuilとはならずに、現代フランス語ではfeuilleとなったのです。しかし、feuilleという単語の発音をみてみると、確かに[fœj]となっているのです。

œという文字が使われていなくても、[œ]と発音する単語があると言うことを知っておきましょう。

 

 

[œ]・[ø] の発音の仕方

 

œの3つの発音形態については理解できたと思います。

次は実践的な発音の仕方についてです。

[e] に関しては日本人にとって難しくないので特に説明しません。ここでは[œ]・[ø] の2つに限って説明します。

 

フランスの発音を学ぶ一番の近道は、本物を「見て」真似ることにつきます。つまり、口の形や動きをビジュアルで理解して、自分の発音に活かすべきです。

そこで、今回はこのビデオを用意いました。

 


Trois voyelles arrondies: /ø/, /œ/ et /ə/

 

このビデオでは[œ]・[ø] に加えて [ə] の発音も紹介していますが、œの字には [ə] の発音はないので無視してください。

 

このビデオを見て理解できればそれに越したことはないのですが、僕的解説も少しさせてください^^

まず、舌のポジション。 [œ]・[ø]も舌の先は下の葉の根元に付けます。そして、あごの力を抜いて舌全体をベタッと横に広げます。これが2つの発音に共通した舌のポジションです。特に僕個人としては、意識的に舌を下につけて横に広げるのがポイントだと考えています。

つぎは唇の形。唇の形を変えることによって[œ]・[ø]の違いが生まれます。これはビデオで説明されている通りなのですが、唇をすぼめた状態が[ø]で、広げた状態(むしろ口を大きく開いた状態)が[œ]の音になります。ビデオをよくみて、そして自分の口を鏡に映して(←コレ大事!)、同じ形になっているか入念にチェックしましょう。

 

とても独特な音なのでカタカナにすることはできませんが、音として捉えるのであれば次のサイトの一番最初のオーディオサンプルが役に立ちます。

 

www.frenchforthought.com

 

 フランス語の発音は難しい?

 

この前他の方の描かれているフランス語学習系のブログで、「初心者は鼻母音の発音の違いをあまり気にしなくてもいい」と書かれているものがありました。

気にしなくていいわけがありません。日本人の言葉の感覚とフランス語は全く違います。

僕たち日本人は「あ・い・う・え・お」という限られた5つだけの母音しか使わないので、音を聞くときの判断基準がフランス語と大きく異なります。例えば口を大きく開けて「オ」と言っても、口をすぼめて「オ」と言っても、我々日本人の耳は「オ」として認識しますが、フランス人は2つを別の音と認識します。

日本語は母音を集約して聞き取ることができると言うこともできると思います。対して、フランス語は細かな違いでことなる母音と判断する→異なる単語として捉えてしまうリスクにつながります。

僕の語学学校の先生がこんな事を言っていました。

「フランス人は(誤った発音を)理解するための忍耐力が無いわけではないわ。そうじゃなくて、正しくない発音は何を言いたいのか分からないの。」

 

なので、「初心者は鼻母音の発音の違いをあまり気にしなくてもいい」と言っている方は、完全にフランス語を自分の物差しで考えているため、フランス語話者からすると発音の要である母音すら発音できていない人、となってしまうのです。

 

もちろん、最初から誰でも楽々フランス語の発音をマスターできる人は少ないと思います。しかし、できないところは意識的に改善していかないと、いつまでたっても問題は解決しません。

嬉しいことに、フランス人はみんなこれらの発音を軽々とやってのけます。同じ人間なのですから、やってできないことはないのです。なにも幅跳びで8m跳んでみろというわけではないので、やればできるはずです。

 

ポイントは、よく音を聞き、よく口の形を観察して、鏡の前で真似ることです。

このブログでは以前にも他の発音について解説してきているので、こちらも学習の役に立たせてもらえればうれしいです。

 

francium87.hatenablog.jp

francium87.hatenablog.jp

francium87.hatenablog.jp

francium87.hatenablog.jp

 

例外として、僕もRの音はあまり気にする必要が無いと考えています。

なぜなら、日本人の口にとってRの発音は思っているほど複雑ではないからです。

 

francium87.hatenablog.jp

 

 

おわりに

 

フランスの発音というのはなかなか厄介なものです。

それに加えてフランス人というのは、とにかく人の発音をかたっぱしから直したがる優しい性格(笑)をしているので、いつまでも上達しない己の発音に嫌気がさすこともあると思います。

それというのも、裏を返せばフランス人も日本人と同じように発音のちょっとした違いで人を差別化するタイプの人だから、発音に対してセンシティブになっているんだと思います。(日本人が人の発音を聞いて「あ、あの人は○○人だねー」と差別化するように)

そうしたフランス社会で、完全に帰化したいのであれば話は別ですが、外国人であることを受け入れてしまえば多少の発音の不自由さもチャームポイントかなぁとも考えます。

とはいえ、自分の言いたいことが正しく、そしてストレスレスで相手に伝わるようにするためには、基本的な発音の勉強は避けて通れません。しっかりと時間をかけて学んでいくようにしましょう^^