レジュメとサンテーズ┃フランス語C1レベルで知っておきたいこと
フランス語の習熟度は6段階にレベル分け(A1,A2,B1,B2,C1,C2)されています。
B2レベルまでは、文法事項は順次新しいものを学んでゆくという感じなのですが、C1からは新しいことは学ばずに、より高度なテクニックを身につけてフランス語力をブラッシュアップする傾向にあると考えています。
そこで必要になってくるのが、作文の分野で扱うレジュメとサンテーズのテクニックです。僕はモンペリエのポール・ヴァレリー大学付属の語学学校でC1までのコースを修了していて、さらにモンペリエ理工大学のなかで、科学分野の文献を扱ったフランス人向けのサンテーズのクラス(そうです、フランス人だって勉強する必要のある分野なのです!)を受けて、まぁまぁの成績でしたので、その経験からレジュメとサンテーズとは何ぞや?ということをお話しできればと考えています。
フランス語の作文
まず最初に、フランス語の学習における作文が、他の言語のそれと比べてどのような特徴があるかをつかんでおくことが必要だと思います。
結論から言うと、フランス語の作文はとっても構造的であるという特徴があります。
構造的とはどういうことかというと、文章の組み立て方が決められているという事です。そして、それはワンパターンではありません。
僕がこの事に気付いたのは、語学学校にいた時もそうなのですが、モンペリエ大学に入学して生物学を学び始めてからより強く意識するようになりました。というのも、友達とレポート作成などの共同作業を通してフランス人の書く文章を多く目にするようになり、その文章構成がとても美しく、またある程度の「型」が存在することに気が付いたからです。
日本で英語を勉強していた時に聞いたことですが、英語では言いたいことを先に提示することが望ましいとされているそうです。対して、よく言われることですが、日本語の場合は往々にして動詞が最後、つまり文の要は文末に来ることが多いため、文章を最後まで聞かないと何を言いたいのか判別することができません。
これは一文の中での話ですが、長い文章になっても同じこと。つまり、文章全体を見渡して、相手に理解してもらいやすい&自分の意見がしっかりと書かれている文章はどういった形なのか?ということを常に自分に問いながら文章を作る必要があるのです。そして、相手に意味が伝わりやすい文章こそが、「美しい文章」であると僕は考えています。
美しい文章構造は何か、というのは、文法の学習や単語の学習、ましてやリスニングの学習とは全く異次元の話です。
フランス語の作文の場合、この「美しい文章」を作るためのテクニックがふんだんに、そして明確に用意されているのです。そういったことに注意を払って勉強することが、フランス語の作文の学習には必要不可欠だと思います。
C1レベルの作文について
さて、C1レベルの作文というと、大きく分けて2つのカテゴリーを学びます。
それが、レジュメとサンテーズと呼ばれるものです。
この2つについては後で詳しく書きますが、それまでのレベルで学ぶことと何が違うのでしょうか。
フランス語の一つの難関であるDELF B2の試験を受けたことがある人ならわかると思いますが、B2レベルの作文対策でもいくつかの文章構成を勉強したと思います。
つまり、おおまかにいうと「導入部→問題提起→議論→結論」という流れの事なのですが、C1レベルはこれとは異なることを学びます。
B2レベルの作文についてはこちらでおさらいしてください。
レジュメ
レジュメという言葉は日本でも「要約」といったような意味合いで使われていると思います。
フランス語の作文においても同じことで、レジュメでは文章(場合によっては放送文を聴いたり、資料映像を見たりします)を読み、それをまとめる作業をします。一つの文章のエッセンスを抜き出し、無駄を省いてゆくことで、新たな一つの文章を作り上げるといったイメージです。
ここで大切なのは、コピペをしてはいけないという事。より具体的に言うと、同じ単語は極力使わず、自分なりの新しい言葉遣いで新たな文章を作り上げるというところに、この学習の面白みがあります。
また、要約というだけあって、オリジナルの文章(問題文)はかなりの長さであることが一般的です。そして、その内容を正しく理解しなくてはまとめることができないので、ここで単語力や文章読解力も試されるのです。
サンテーズ
日本語では「総合」という言葉があてはめられるようです。
こちらは複数の資料を分析して、そこから得られたいくつもの結果(僕はidéeと呼んでいます)を一つの文章にまとめ上げるという作業をします。なんだか難しそうですよね。そうです、結構難しいんです(笑)だって、日本人はあまりやらないことですから。
サンテーズにはいくつかのポイントがあります。それは、
- 全ての文章を正しく理解しないといけない
- 重要な部分を的確に選ばなくてはいけない
- それぞれのidéeをうまく配置して新しい文を作らなくてはいけない
ということです。
1についてはどんな文章読解にも共通することです。
2について、お題となる資料は、一見するとばらばらのテーマであることがあります。そのばらばらの文章から、自分の力で共通項となりそうな部分を選択しなくてはいけません。要は、読解力ですね。
選んだidéeをそのまま箇条書きにするだけではダメです。それを新たな一つの「美しい文章」としてまとめるのが3つ目のポイントなのです。
例えば、以前当ブログで書いた記事にこんなものがあります。
ここでも一見すると関連性のなさそうなテーマの資料が3つ提示されていますが、ここから根底に流れる共通するテーマを探し出すのが、サンテーズを攻略する第一歩となるのです。
難しいとはいえ、サンテーズを勉強するという事はとても有意義なことだと思います。なぜなら、サンテーズというのはフランス人らしい思考を学ぶことのできる分野だと思うからです。
フランス人は議論好きというのはよく知られた話です。これは今まで多くの人があらゆる分野の中で繰り返し言ってきていることなので、恐らく間違いはないでしょう。
なぜフランス人は議論が好きなのか。その秘密が、このサンテーズにあると思うのです。
というのも、サンテーズは平たく言うと、多くの情報を統合して自分の”モノ”にするテクニックの事です。例えばあなたがフランスの選挙についてしりたくて、それに関する情報をネット上で集めるとします。ここで情報を総合するテクニックがなければ、あなたが断片的に得た数々の情報は、断片に留まってしまい、他の人に「フランスの選挙について教えてくれ」と言われても口からまとまった考えがなかなか出てきてくれないのです。最近の言葉でいうと、アウトプット力が欠如しているという事になります。
しかし、小さいころから、やれレジュメ、やれサンテーズと勉強してきているフランス人にとっては、様々な情報を得たとたんに、それが上手く分解・総合されてまとまった一つの考えとなるのでしょう。そうしてまとまった考えは、カフェのテラスやバーのカウンターで、議論となって日々お披露目されているんだと思います。
C1作文の練習はどうやってできる?
正直なところ、C1レベルとなるとあまり多くの教材がないのです。
しかし、少ないながらにも良い教材があります。それが、このRéussirシリーズのDALF C1/C2対策本。
DALFを受けるには必携図書でしょう。
様々な形の文章の書き方が紹介されているので、細やかに勉強したい人向きでしょう。
また、魅力的なのはリスニングや文章読解の対策も含まれているので、1冊で多くの事を学ぶことができます。
フランス人でも苦戦するサンテーズについては、日本にいる場合良い先生に出会うというのも難しいかと思います。身の回りにそう言った人がいない場合は、選択肢としてitalki というオンラインの外国語学習サービスを考えてみるとよいでしょう。フランスでちゃんと外国語教授法を学んだ講師がいるので、サンテーズやレジュメをメインに勉強したい旨を伝えて、作成した文章のcorrigéをしてもらうのが良いかと思います。
おわりに
日本人は議論が苦手、という意見を耳にしたことがあります。しかし、僕はそうは思いません。日本人だって議論はできます。
しかし、言われてみればなるほど、日本人は議論への準備が苦手かもしれません。それは先にこの記事で書いたような、まとまった考えを導き出すトレーニングが学校教育であまりされていないからかもしれません。
情報量だけがどんどん膨れ上がる現代社会において、フランス語のサンテーズの学習を通して、情報のまとめ方を学ぶという事は、とても有意義なことだと思います。
なかなか難しいとは思う尾ですが、勉強なので最初からいきなりパーフェクトにできることはありません。僕も、今期もモンペリエ大学でフランス人たちと肩を並べてサンテーズの授業を受ける予定です。日々学習ですね^^