フランシウム87

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フランスの作曲家、エリックサティとその言葉

フランスは、だれが何と言おうと芸術の国!

芸術家を多く配しているのはみなさんご存じのとおりですが、芸術家という職業を支えている国の役割にも、日本にはない素晴らしさを感じます。

そんなフランス音楽界の中でも、ひときわ異彩を放っているのが、20世紀に活躍したエリック・サティではないでしょうか。

今回はクラシック音楽界の異端児とも呼ばれているエリック・サティと、彼の書き記した言葉について紹介します。

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フランス音楽界の異端児と呼ばれて

 

エリック・サティの簡単な紹介はwikipediaにしてもらいます。

エリック・アルフレッド・レスリ・サティ(Érik Alfred Leslie Satie フランス語: [eʁik sati]1866年5月17日 - 1925年7月1日)は、フランス作曲家音楽界の異端児音楽界の変わり者などと称される。西洋音楽に大きな影響を与えたと見なされており、ドビュッシーラヴェルも影響を公言している。そして、印象主義の作曲家たちにも影響を与えたとされる。

 

家具の音楽』というのは彼が自分の作品全体の傾向を称してもそう呼んだとされ、主として酒場で演奏活動をしていた彼にとって、客の邪魔にならない演奏・家具のように存在している音楽というのは重要な要素だった。そのことから彼は現在のイージーリスニングのルーツのような存在であるともいえる。

また『官僚的なソナチネ』『犬のためのぶよぶよとした前奏曲』『冷たい小品』『梨の形をした3つの小品』『胎児の干物』『裸の子供たち』のように、作品に奇妙な題名をつけたことでも知られる。

フランス社会党及びフランス共産党にも党籍を置いていた(当初は社会党に入党していたが、共産党結党と同時に移籍)。

                  ―――wikiperiaより引用

 まず、ドビュッシーやラヴェルですが、この二人は近代クラシック音楽ではとても重要な作曲家です。そんな人に影響を与えたというのですから、サティはもっとすごい影響を与えた人物だったのでしょう。

最初の段落の最後にあるように、彼の音楽は印象主義の音楽に影響を与えたとされています。実は印象主義(impressionnisme)は絵画だけでなく音楽にもあります。詳しくはこちらの記事を読んでください。

 

実際にサティの曲を演奏してみると、彼の音楽はとても自由です。ともすれば感覚的だと捉えることができますが、よく観察すると、実は緻密な構成だったり、ユーモアが盛り込まれていて、やっぱりちゃんと考えて作曲していることが分かります。

 

また、曲の題名がユニークなのもサティの特徴です。特に僕は小学生の時に家にあったCDに「干からびた胎児」(wikiperiaでは「胎児の干物」となっています)という文字を見つけた時にはびっくりしました。中学生になってサティの楽譜を買い、その中の「干からびた胎児」のページを開いてもっとびっくり!実は「干からびた胎児」は3曲からなる組曲ですが、それぞれのタイトルが「ナマコの胎児」「甲殻類の胎児」「柄眼類の胎児」なんですが…最初の2つはまだいいとして、最後のは何?って感じですよね。

ちなみにフランス語で柄眼類はpodophatalmaと書かれていて、甲殻類を指すようです。"podo"は「足」を意味します。"ophtalmo"は「目」を意味するのですが、どこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。そう、「眼科」は"phtalmologue"ですね。ちなみにサティ自身の説明では、「柄眼類とは可動する柄の先端に目がついているもの。よく動き回って狩りをし、その肉は美味。」とされています。

曲自体もとても変わったものです。3曲構成で、テンポが急ー緩ー急なのはサティ以前の音楽構成と同じですが、曲の内容はとっても風変りです。テンポの遅い2曲目にはショパンの有名な葬送行進曲のフレーズが垣間見えたり、3曲目の最終部分は、しつこい終結で有名なベートーベン(ごめんなさい)よりもしつこく、一度聞くとクセになります。

 

では、時間があればYouTubeで「干からびた胎児」の演奏を聞いてみてください。


Erik Satie ~1913~ Embryons Desséchés

 

曲中の注釈が秀逸?!

上で紹介した動画を見てもらえるとわかると思いますが、彼は楽譜のいたるところに注釈のことばを書き込んでいます。しかし、それは一般的な楽譜にみられるように「速く」「もっと動きを持って」「燃えるように」とかではありません。「朝の外出」「雨が降っている」「太陽は雲の中にいる」…まるで散文詩を読んでいるかのようなあいまいな記述の数々('_')これが絶妙に曲のニュアンスと合ったり合わなかったりして、この曲の解釈を時に助け、時に迷わせてしまいます(笑)

この「詩」ともいえる注釈を眺めていると、だんだんとこの曲中に出てくる胎児たちが動きを持って愛おしく感じてきさえします。

 

さて、こんな風変わりなサティの「詩」は、なんとそれだけが集められて本にもなっています!

僕が高校生のころ、倫理の先生の戸棚にこの本があるのを発見して貸してもらいました。内容は依然として意味がくみ取れませんでしたが、詩以外にもサティが書いた数々の奇妙でかわいらしいイラストがあしらわれていて、とても美しい本でした。興味のある人はぜひ読んでみてください。

 

サティは有名な曲も作っています

 

彼が作曲したものはすべてが風変わりなわけではありません。

例えば"Je te veux"(邦題「お前が欲しい」)は、もともとシャンソンのために書かれた曲なので、大衆受けする美しいメロディーが人気で、日本でもよく耳にします。

以前、僕のブログで「単語は分割してみると覚えやすい」というのを紹介したときに例として使った"Gymnopedie"も、日本のドラマやCMなどでよく耳にする音楽です。

 

こんな感じで、サティの曲って実は部屋で流しても違和感のない、空気にすっと溶け込む特徴があります。クラシック音楽をBGMにするとき、サティの音楽も選択肢に入れてみてもいいと思います。

 

おわりに

 

フランスの音楽界の異端児、エリック・サティ。彼の音楽と、その楽譜に書き込まれた「詩」は一風変わったものですが、全体としては美しくまとまっているのがまた不思議な作曲家です。フランスの芸術は映画に然り音楽に然り、その本質を理解するというのはとても難しいですね。それでいて全体的にふわっとまとまっているから不思議。

今日はエリック・サティの音楽を流して、おしゃれなフランスの調べに耳を傾けてみませんか?^^ちなみに、サティの曲はピアニストであるJean-Joël Barbierの演奏が素晴らしいのでお勧めします。