フランスのクイズ番組とsubjonctif(接続法)
フランス語の勉強の中で、なかなか厄介なのが動詞の活用。
ラテン語に起源をもつ言語は例外なく、時制と人称に依る豊富な動詞の活用があり、これをすべて覚えるのはなかなかの仕事です。
さて、フランス語の勉強を始めたばかりだと、まずはindicatif(直接法)の動詞の活用を学びます。現在、過去、未来…と勉強していって、ふぅーこれで時制はひとまずクリアした…と思った時に現れるのが、indicatifという表の世界に隠れていたsubjonctif(間接法)の裏面が登場して(´゚д゚`)←こうなります。
subjonctifとはいったい何なのか。僕がフランスで見かけたクイズ番組のある一場面から、フランス人の考えるsubjonctifが垣間見えたので紹介したいと思います。
subjonctifはindicatifの裏側か?
subjonctifとindicatifの関係については、以前にこの記事でも書きました。
indicatifとsubjonctifに限ってみると、一般的な説明では「確証的な出来事を表す文章ではindicatifを使い、確実性が低い事柄を述べる文ではsubjonctifを使う」とされています。
図で表すとこんな感じです。
不確実性が高まれば高まるほど、subjonctifになる可能性が濃厚になるという事を表しています。
まぁ、実際のフランス語はここまできっちりと文法が決まているわけではなく、不確実性が高くてもsubjonctifが使われないことは普通にありますし、むしろ違う時制を使うこともあるでしょう。
となると、不思議に思うのはフランス人はsubjonctifというややこしい概念についてどのように考えているのか、ということです。
フランス人でも苦手なsubjonctifの説明
試しにフランス人にsubjonctifとはどんなものなのか、文の中でどのような活躍をしているのか聞いてみることにしましょう。
多くのフランス人は、この質問に的確な答えが出せないはずです。だって、皆がフランス語文法のプロフェッショナルなわけないですから。反対に僕たち日本語を母国語と話す人に「用言って何ですか?」みたいな質問をしたところで、多くの人が答えられないでしょう。
しかし、フランス人はsubjonctifを。日本人は用言を、会話や文章の中で、実に自由に使いこなしています。
使えるのに説明できない。言葉って不思議なものです。
フランスのクイズ番組とsubjonctif
フランスに来て間もないころ語学学校でテレビを見ていたら、あるクイズ番組が放送されていました。
そのクイズというのは、2人組の片方にだけお題となる単語を与え、その人がそれ以外の単語を使って相手を答えに導くというものです。例えば、お題が「ウサギ」だったとしたら、「動物」「耳」「干支」…みたいな感じで、単語レベルでヒントを与えていくのです。
ここでだされたお題が、まさかの「subjonctif」!
挑戦者は2組のペア。まず先攻のチームです。
ヒントとして、「verbe」「présent」「conjugaison」…といくつもヒントを出しますが、回答者は一向に答えにたどり着けません。
後攻のチームはどうだったかというと、最初のヒントで「conditionnel」と言ったら、回答者が即「subjonctif!」と言いました。
subjonctifとconditionnelの関係
このことから、フランス人はprésentなどから容易に判断できるindicatifの存在よりも、conditionnel(仮定法)のほうが、よりsubjonctifを想起させるファクターになっていることが伺えます。
つまり、学校などでは確実性が高いindicatifnに対応した存在としてsubjonctifが紹介されますが、フランス人が実際のところどう思っているかというと、実はconditionnelとsubjonctifという、不確実性が高いもの同士をセットにして意識している可能性があるのです。同時に、様々な文法規則によって、一見不確実性から離れた分野でのsubjonctifの活用が見られることもありますが、subjonctifという活用形の根源は、やはり不確実性というところにあるとも考えられるのではないでしょうか。
…とはいえ、こんなことが分かったとしてもsubjonctifの用法に変化があるわけでもないので、僕たちは文法規則に従って、忠実に勉強していくことに変わりはないんですけどね(;・∀・)
subjonctifに関する、ちょっとしたこぼれ話でした。