フランシウム87

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ローマまでレスピーギのローマの松と噴水巡礼してきた話②

前回に引き続き、イタリアの大作曲家オットリーノ・レスピーギが作曲した「ローマの松」「ローマの噴水」ゆかりの地の訪問記です。

 

需要ゼロの記事は承知の上ですが、良ければ読んでみてください(・ω・)

 

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前回書いた「ローマの松」訪問記はこちら。

francium87.hatenablog.jp

 

ローマの噴水

 

さて、今回は「ローマの噴水」についてです。

 

ローマの噴水も4楽章で構成されています。

 

  1. 夜明けのジュリアの谷の噴水
  2. 朝のトリトンの噴水
  3. 真昼のトレヴィの噴水
  4. 黄昏のメディチ荘の噴水

 

この曲の特徴としては、4曲が噴水の描写をしているのですが、同時に時間の移り変わり、つまり1日の時間の遷移も表現しているのです。すごいですね。

 

 

第1楽章:夜明けのジュリアの谷の噴水

 

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実は、この最初の噴水がレスピーギ巡礼の旅の中で一番の難題でした。

というのも、ジュリアの谷というのがどこなのかよくわからないのです。

ウィキペディアを英語版、スペイン語版、イタリア語版と比較・検討して、かつ海外のクラシックファンのもの好きたちの情報もかき集めてみたところ、どうもボルゲーゼ荘の敷地の裏手にある噴水が、件の噴水のようなのです。

 

でも、実際に行ってみてわかったことは、そこは決して「谷」と呼べるような地形ではなかったという事。ボルゲーゼ公園はどちらかというとローマの高台なので、谷の要素は一切なかったのですね。しかも、噴水自体も、音楽的なインスピレーションを受けるとは到底思えないようなデザイン。

 

でも、大方の意見ではこの噴水がジュリアの谷の噴水だし…と、その周辺をグーグルマップで検索していたら、ローマの中心地からボルゲーゼ公園を越えて、その高台の裏手に低地があることが分かったのです。そして、その周辺をよくよく調べてみると、Valle Giulia(ジュリアの谷)という名前のトラムウェイの駅を発見!

 

さらにその先まで調べてみると、その低地のブロックにヴィラ・ジュリア国立博物館という建物を発見。

噴水探しに行き詰った感があったので、とりあえずはここで美術品でも見て頭をリフレッシュさせよう・・と、たまたま入った美術館の中庭で発見したのが、上の写真の噴水なのです。

 

なんていうか、神様が導てくれたとしか思えない偶然の発見。

噴水にしては変わった作りで、柱として建てられている4人の女神は、もしかしたらミューゼかなと思うのですが、その後ろから水が吹き上げている感じです。

しかも、この噴水はヴィラの1階部分のさらに1段低い場所に作られていて、中庭から見下ろすと噴水がある、という位置設定になっているのです。まるで、むかしそこに川が流れていたところに建物を建てて、暗渠の一部が噴水となって地上に顔を出しているかのよう。「谷」感がしっかりと出ています!

 

というわけで、他の人は夜明けのジュリアの谷の噴水というとFontane delle Tartarugheという「カメの噴水」を指していますが、僕はこの、ヴィラ・ジュリア国立博物館内の噴水としています。こっちの方がきれいだし。

 

因みに、カメ噴水はこちら。

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ちなみに、この噴水のある美術館のコレクションも素晴らしかったです。

ギリシャの趣がある、古代ローマの美術品がたくさんあって、そういうよくわからない絵が好きな人にはたまらない展示になっています。きっと、19世紀末~20世紀初頭にかけて活躍した芸術家は、こういう芸術作品を見て、自分なりに解釈して、古典を模倣した新しい作品を生み出したんだろうなぁ…と、遠くの時代に考えを巡らせることのできる、良い時間になりました。

 

ちなみに大元の曲の方はというと、冒頭の穏やかな流れるようなオーボエの旋律が、静かに絶え間なく流れる噴水の水と、朝のひんやりとした空気を表してるかのような美しい曲です。

 

第2楽章:朝のトリトンの噴水

 

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もう、このトリトントレヴィの噴水はローマ観光でもおなじみの噴水なので、あえて解説することはないでしょう。

 

あまり美しいとは思えない噴水でしたが、上にいるのは海神・ポセイドンの息子、トリトン君。

どうでもいいことですが、ポセイドンというのはギリシャ名で、同じ神様がローマ神話ではネプチューンという名前になります。つまり、この噴水はローマにあるし、レスピーギもローマのものとして取り上げたのですが、名前だけ見るとギリシャ情緒が漂っているんですね。まぁ、ポセイドンにしてもネプチューンにしても、権力を盾にした好色爺ですが。

 

曲もいまいちパッっとしないんですよね。よって、パス。

 

 

第3楽章:真昼のトレヴィの噴水

 

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観光客なら絶対に見るであろう噴水の一つ。

噴水に背を向けてコインを投げると、またローマにもどってくることができるという言い伝えがあります。僕は、もうローマはいいや。と思ったので投げませんでした(笑)

 

とにかくデカい。でっかい噴水です。その昔、水は街の富と繁栄の象徴だったと言いますが、当時のイタリアの豊かさが垣間見える荘厳な噴水です。

 

大きすぎて、フェンディがランウェイをやっちゃうほど。


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ちなみに、この噴水の真ん中にいるのは、かの好色爺であるポセイドンです。エロいけど、その力は凄かったみたいですよ。

 

トレヴィの泉って、音の響きが何かに似ていると思いませんか?

そう!トリビアの泉トリビアというのは、tri(3つの)via(道)という意味で、三叉路の事を指します。

トリヴィアtrivia)は、くだらないこと、瑣末なこと、雑学的な事柄や知識豆知識を指す。

一説に、ラテン語で「三叉路」3(tres)+道(via)を意味する言葉で、古代ローマ都市において三叉路が多かったことから、「どこにでもある場所」「ありふれた場所」を指すようになり、さらに転じて、くだらないこと、瑣末なことを意味するようになったという。 また、中世の教養科目(リベラル・アーツ)のうち基本となる3つ(文法修辞学弁証法)のことをtrivium(三学、複数形でtrivia)と呼んだため、そこから「初歩的でつまらない」という意味が生じたともいう。

形容詞はトゥリヴィアル(trivial)。数学では、ごく基本的で明らかなことを指してトゥリビアル(「自明な」と訳される)という用語をよく使う。

 

で、この噴水がトレヴィっていうのも、このトリヴィアが由来ってみんな言っているんです。なぜなら、この広場には3本の道が集まっているから、と。

でも、ふつうに地図で見る限り、6本くらいの道が集まってるんですよね。大きな道だけセレクトしても4本。

 

では、いったいトレヴィという名前の理由はどこから来ているのか。

1つは単純に、この泉のある広場に集まる道のうち、3本が有名・主要な道だったという理由。

あとは、トレヴィをラテン語方面へ語源を辿ってい行くと、どうやら川の水がゴボゴボ音をたてるトレビアという単語から来ているんじゃないかなぁーと。

この噴水には3人の彫像があるので、3つの命=tre viteが由来、なんて説も面白いかもしれませんね。

とにかく、真相は分かりません。

 

あ、ちなみにフランス語で流れる水がゴボゴボ音をたてるのはgargouillerと言います。これは、ゴシック建築の教会の雨どいというのは、魔除けのためにガーゴイルという醜い魔物の形をしているのですが、そのガーゴイルの口から雨水が勢いよく噴き出すときにゴボゴボ…と音がするので、gargouillerと言います。なんだか、気持ちが悪いですね。

ouの音は意外と唇をすぼめて前に突き出す必要があるので、なかなか発音になれるのが難しい単語でもあります。

 

この曲自体はとても力強く、ポセイドンの精力…いや、勢力あふれる情景が目に浮かびます。

 

 

第4楽章:黄昏のメディチ荘の噴水

 

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これも探すのに苦労しました。

というのも、メディチ荘の中に入ってしまうと、庭園にある噴水はどれも小さく魅力的なものではなかったからです。

まぁそれにレスピーギがインスピレーションを受けたというのなら仕方がありませんが、なんか違う感じがしたのです。

 

なので、近くにいたガイドさんをつかまえて「レスピーギの噴水を探しています!」って聞いたのですが、何のことだかさっぱりわかってもらえず…

 

ただ、その人の話によると、メディチ荘の噴水は庭園にあるもののほかにもう一つ、正門前にもあるとのこと。

その、正門前の噴水が、上の写真のものです。

なんでも、この中央にある石の球は、その昔、誰か教皇だか貴族だかの偉い人が、テヴェレ川をはさんだ反対側にあるサンタンジェロ城に幽閉されたときに、砲弾として城門に飛ばされたものなのだそう。ちょっとレジェンド加減が強すぎるので胡散臭い話なのですが、シンプルな佇まいながら雰囲気はばっちり持っている噴水でした。

 

また、このメディチ荘には、フランス近代音楽の大家であり、僕の最も好きな作曲家の一人であるドビュッシーがまだ若かりし頃、ローマ大賞をとってローマに留学していた時に滞在していた家があるのです。

レスピーギゆかりの地を回っている間に、大好きなドビュッシーゆかりの地にも行けちゃって、一石二鳥♥

ローマ大賞と言えば、戦後に廃止されてしまったのですが、知らないうちに復活してて、2015年には日本人の酒井健治という作曲家の方が受賞しているようです。この人の曲は全く知らないので、また勉強することが増えました。

 

曲は、マックスまで盛り上がったトレヴィの噴水から反転、急に穏やかで黄金色に輝く色調が漂う音楽です。

一曲目の冒頭がオーボエで始まったのに対し、終局の始まりはコル・アングレで始まります。これはどちらも吹き口が共通したダブルリードの楽器です。似たような楽器を、夜明けは高音域で、黄昏時は中音域で演奏することによって、一日のテンションの下がり具合が表現されていると考えるのですが、どうでしょう?

 

 

おわりに

 

僕、高校生の時はローマ3部作の中でもローマの噴水が一番魅力を感じない曲だと思っていました。だって、ここぞという見せ場のない曲だったから。

でも、実際にローマをぶらぶらしてみると、あの時見たローマの情景を一番思い出させてくれるのは、意外にもローマの噴水の曲調なんです。

 

そんなわけで、今日もローマの噴水を聞いて、19歳の秋のローマの情景を思い出すことにします^^

 

日本語表記があって見やすい動画が見つかりました↓


Respighi: "Fontane di Roma" / Maazel Filarmonica Arturo Toscanini (2004 Movie Live)