個性を尊重するフランス人と、ブランドの広告から観察する現在のそこんとこ。
先日、facebookに出てきたシャツブランドの広告を見て、ふと思いました。
こちらがfacebookに出てきたシャツブランドの広告
facebookのページをスクロールしていたらこんな広告がふと目に留まったんです。
ダンディーなおじさん、白のシャツに臙脂のニットタイが洒落てます。
モンペリエでは最近、このシャツみたいにカッタウェイが流行っているようで、どこに行ってもこのタイプの襟を見かけます。
開きが大きいおかげで、肩幅をよりがっしりさせた印象にする効果を持っている襟なんですが、屈強なヒゲもじゃの男性がこのシャツを着て、下はタイトなパンツなんか履いてたりすると、どうしてもMr.インクレディブルみたいなデフォルメされた人物像に見えて笑えてしまいます…
で、今回思ったことはそんなことではなくて、この広告の写真の下に書かれている"Faîtes comme tout le monde, soyez-vous même!"という部分に注目したんです。
フランス人の個性を尊重する国民性
最近、日本で「フランス人は10着しか服を持たない」という本が話題になっていますよね。
僕もこの考えには頷けるところがあって、基本的には4枚のYシャツと4本のパンツ、2着のスーツ(黒とシャドウブルー)と3足の靴で生活できます。
いろいろな街に引っ越したくなってしまう性格上、これくらいの持ち物に抑えないと引っ越しが大変なんです。
でも、これだけあればプライベートからフォーマルまですべて楽しめることも知っているので、これで十分だと思っています。
ちなみに、コートとニットは毎回現地調達です。かさばるから。
あとは、クラブ行くときはファストファッションも取り入れてますが、ちゃんとした服に比べて持ちが悪いところが残念。
なので、僕にとってフランスの服が少ない文化は楽なんです。
だって、日本みたいにいつも同じ服でいることがネガティブなイメージを与えることがないから。
それに、朝の支度がとっても楽!
ほとんど毎回決まった組み合わせだけど、それが一番自分に落ち着いた組み合わせなんだから良いんです。
どれだけ多くの服を持っているか、ではなくて、どれだけ自分にピッタリな服を知っているか、というところで、多様性よりも個性を重要視しているんだと思います。
そこで、今回の広告
"Faîtes comme tout le monde, soyez-vous même!"
日本語に訳すと「あなたもみんなと同じようにしよう!」という意味です。
…ん?僕のフランス人のイメージって「自分の美しさを引き出す服」を身につける国民だと思っていたんだけど。
「みんなと同じようにしよう!」だと、個々の違いがなくなってしまいます。
フレンチカラーが似合う人も、イタリアンカラーが似合う人も、みんなが上の広告のようなカッタウェイのシャツを着てしまったら、個性というものが崩れていきます。
本当にフランス人のクローゼットの中には10着しか服がないのか?
そこで、また先ほどの本に戻ります。
この本の筆者のホームステイ先にはクローゼットがあり、そこには10個のハンガーしか用意されていなかったそうです。
だけど、それはクラシックなフランス人の家庭にホームステイしたからであって、今、現在を生きるフランス人の若者が同じであるとは言えません。
特に、最近のファストファッションの流行で、フランス人のクローゼットの中はどんどん膨れ上がっています。
実際、僕もホームステイしたことがあったのですが、クローゼットルームは服であふれかえっていました。
今通っている大学の女友達に聞いても、10着なんてありえなーい!でした…(笑)
「少ない」は、決して「貧しい」ではない
ここでいう貧しいは、金銭的な「貧しさ」ではなく、心の「豊かさ」の対極にある「貧しさ」です。
「足るを知る」という言葉があるように、私たちは最低限の美しさを知る必要があると思います。
今回のフランスのシャツブランドの一文から、僕は、個性が無くなると人は多くのものを持とうとするのだと思いました。
そういう観点からいうと、この広告はよくできていますね。
逆方向にに考えてみて、最近、国際平和学の修士号をイギリスで取得した友人がこう言っていたことを思い出しました。
「選択肢が増えるということは、必ずしも自由が増えるという事ではない」
日本では、まだまだ"なんとなく"服を多く持とうとする習慣がありますが、自分の着るべき服を数枚に絞ってみると面白いです。
朝がびっくりするほど楽になるし、毎日自分に最高な服と一緒に過ごせるなんてとっても快適ですよ♪