フランシウム87

南フランスに住む日本人学生が発信するブログ。

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100kmの移動を1€で┃南フランスでぶらりバスの旅

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南フランスには一年を通して暖かいイメージがありますが、実は冬は結構寒くなります。天気が良いというのは間違いないのですが、昼と夜の寒暖の差が激しく、夜になるとかなり寒さが厳しくなるのです。

僕の住んでいる南仏・モンペリエを含む、スペイン―フランス―イタリアの地中海沿いの町は、秋にやってくる短い雨季を境に、夏の気候から一気に肌寒い冬の空気へと様変わりをします。スペインではこの時にやってくる短く激しい嵐の事を"gota fría(冷たい滴)"と言ったりするので、季節の変わり目をイメージしやすいのですが、フランスにはそのような言い方はないようですね。

さて、夏の終わりからこの嵐を迎えるまでは、南仏はとても快適な気候に恵まれます。暑すぎもせず、お日様は夏ほどギラギラしていなくて、青い空を吹き抜ける風はどこまでも続く…こんな日には、エロー県の管轄内のバスで、特に目的もなくぶらりと旅に出たくなるものです。

 

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エロー県

 

エロー県って…ちょっと名前の響きはあれですが、綴りはHéraultでエローと読みます。

決して、卑猥な県ではないのです。

エロー県にはモンペリエのほかに、一説にはフランス最古の歴史を持つベジエ、「風立ちぬ」と読んだフランスを代表する詩人のPaul Valéryが生まれた風光明媚な港町セット、甘口の極上マスカットワインを多く作り出すフロンティニャン、ユネスコ文化遺産にも登録されていて中世から時が止まっているかのような美しい村サン・ギレム・ル・デセールなど、素晴らしい町がたくさんひしめき合っている場所です。

また、ここら辺は中世の時代に、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステラへの巡礼の道(アルル起源のルート)として発達したこともあり、今ではその全貌を辿るのは難しいのですが、ところどころに当時栄えた面影が見えるのも楽しいところです。

他にも、すこし町から外に出れば延々と続くブドウ畑は、日本の山々の様に四季折々にその色を変えて私たちの目を楽しませてくれます。特に11月頃になると、ブドウ畑は南仏の燦々とした太陽の光を黄色い葉で受け止めるので、大地が一面、黄金の絨毯に覆われたようになります。これを眺めながらその年に作られたワインのテイスティングをするというのは、まさに人生の至福という言葉がぴったりの瞬間です。

 

 

エロー県のtransport publique(公共交通機関

 

ほかの自治体と同じように、エロー県にはエロー県の公共の交通機関網が張り巡らされています。エロー県の最大都市、モンペリエには市内にトラムやバスが走っていて、これはtamという別の機関が管轄しています。モンペリエから外に向かって伸びる交通機関は主に、SNCF(フランス国鉄)が管轄する鉄道と、エロー県の管轄するバスがあります。

そして、エロー県の管轄するバスというのは最安値で片道1€で乗ることができるのです。(10回券=10€、1回券の場合は1,5€)

エロー県の東西の長さは100kmを少し超える程度で、これは東京都(離島を除く)の東西幅とほぼ同じ長さです。つまり、距離で言うと東京都の横断を1€でできるという事です^^!

 

しかし、実際は一日に数本というバスの路線もあるので、東西を端から端までバスを乗り継いで制覇するというのは至難の業でしょう。各停のバスなので時間もかかりますしね。もちろん、フランスの事なので予定されていた時刻よりも早くバスが出ちゃった!orいつまでたってもバスが来ない→「今日ストライキだってさ」( ゚Д゚)という事態も想定されるので、至難の業、というより、ほぼ無理です。

 

ちなみに、バスにまつわるエピソードにはこんなものも…

 

francium87.hatenablog.jp

 

1€のバスで南仏ぶらり旅

 

というわけで、僕はたまに時間が空けばこうして格安バスの旅でちょろっと近隣の村々を訪ねてみるのです。バスの時刻表さえしっかりと確認しておけば、後は名前でピンときたところに行ってしまいます。まるで、CDをジャケ買いするときのような、ワインをエチケットのデザインだけで選ぶ時のような、蓋を開けてみるまで分からない、何とも言えないワクワク感があるのです。

まぁ、基本は大したことのない町や村にあたるのがほとんどです。何もなければ、それはそれでよし。適当なところに腰かけて、そこら辺のパン屋で買ったバゲットと、そこら辺の商店で買ったチーズなんかをほおばって、2-3時間街の中をぶらぶらして帰ってきます。

ただ、時々いい意味で予想を裏切る街というのに出会うのです。

 

今年の9月の頭、学校が始まったばかりでまだすべての授業が始まっていないとき、ちょうど丸々一日授業の入らない日がありました。仕事の予定もないし、早急にやるべきことがあるわけでもない。空を見れば、なんていい天気。

こんなに好条件がそろえば、自然と頭の中は「さて、今日はどこに行こうか」という考えになります。今回はロデーヴという、モンペリエから西に40km程の町に行くことに決めました。この時はフィーリングではなく、以前からロデーヴ市で開かれている版画のエクスポのチラシを見ていたためでした。ちょうどロデーヴ美術館の改装の間、分室にてデューラーから現代にいたるまでの版画の特設展示が開かれていたのです。

そうでなくとも、ロデーヴというのはそこそこの規模の町で以前から名前は聞いていたので、これを機に行ってみることにしました。

 

 

ロデーヴへ、南仏ぶらりバスの旅

 

途中、遠くに厳しい岩肌の見えるジニャックを通ったり、たわわに実を付けたブドウ畑を両側従えてにバスが走ったり、そうこうしているうちに地面の色が赤錆のような色に変化してきて、周囲の断層には奇妙なうねりが多く走っています。

実は、ロデーヴ周辺というのはペルム紀という、大型恐竜が地球上を闊歩していたジュラ紀よりもはるか昔の時代の地層が見られる地域なのです。南仏というのは基本的に海面の上昇・下降を繰り返し経験している地帯なので、古い地層は標高の高い部分をのこして、そのほとんどが削り流されてしまっています。現在見られる多くの地表は、恐竜などが絶滅した後の、比較的新しい地層が見られるのです。「比較的新しい」と言っても、その単位は数千万年。なので、南仏の平野を歩いていると、普通に超特大のカキの貝殻の化石なんかに出くわします。小石だと思って踏んで歩いていたものが、全て貝の化石だった、なんてことはザラです。

これは案外重要なことで(少なくとも僕にとっては)、この比較的新しい貝の化石の地層があることによって、南仏のワインはとてもミネラルを感じる味になるのです。よく、ブドウが潮風を受けながら育ったから潮の味(=ミネラルを感じられる)などと言ったりしますが、僕はワイン味を決めているのは潮風ではなく、地層だと考えています。

そういえば、昔聞いた話で、スペインのとある有名なソムリエがワインの味を伝えるために「ほら、見えますか?幼い時遊んだ祖母の家の、あの海の見える部屋の下から2番目の引き出しを開けた時…あの時の味がします。」みたいなことを言ったそうです(正確に覚えていないのですが)。これはワインのミネラルな味と、ワインの持つメランコリックなアロマ、その他諸々を美しく表現した一例として知られているのですが、ここでもそのからくりはブドウ畑にあったと思います。このときコメントを付されたワインは、確かスペイン・ガリシア地方のものだったと思います。ガリシア地方と言えば温泉が湧いていることで有名ですので、南仏のカルシウム質とは違えど、やはりミネラルが感じられるブドウが育つのでしょう。

では、ペルム紀の地層で栽培されたブドウで造ったワインの味はどうなるのでしょうか?ペルム紀を含む古生代を代表する指標化石と言えば、三葉虫が有名です。ということは、三葉虫の味がするのかな?虫と言ったって、カニやエビの殻と同じ成分なんだから、案外悪くないかもしれない…

 

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そんなことを秋の陽光の中うつらうつら考えているうちに、バスはロデーヴに到着しました。

 

 

ロデーヴの昼下がり

 

昼に到着した僕は、いつも通り近くで人気のあるパン屋を探し、そこでパンを買い、そのすぐ隣にある食料店でガラスの冷蔵ケースに熟成期間順にグラデーションをつけて売られているヤギの乳から作られたチーズを買いました。店のおばさん曰く、このチーズは地元で作られたものだから美味しいよ、とのこと。加えて、ハチミツをつけるとおいしいよと言いながら奥からハチミツを持ってきてくれました。バゲットに切れ目を作って、そこにハチミツをひとさじ垂らしてもらい、ヤギのチーズも一つ買って、後は日当たりのいい広場と腰を掛けるベンチを探すだけです。

 

丁度その時は地元の中学生たちも昼食の時間だったようで、町中のピザやケバブ、フライの類を売っているテイクアウトの店は、どこも賑わっていました。そんな彼らはどこで食事をとるのかと思って眺めていると、大体は川辺に行って、そこで座って食べているのです。みんな気にはしていないだろうけど、彼らがわいわいピザをほおばっているすぐ横には、pont de Montifortという、歴史的建造物指定をされている石造りの橋があるのです。これがまた、たいそう歩きづらい橋で…

 

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食事を済ませると時間は13時になっていたので、目的の版画展へ。

いままで版画というものを一度にたくさん見たことがなかったので、こうして時系列で追って多くの種類の版画を見ることができたのはとても貴重な体験になりました。

特に、デューラーのキリストの生涯を題材とした一連の版画は圧巻でした。またどこかで同じようなデューラーの企画展があったら見たいものです。

 

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面白かったのは、その展覧会場からでると、そこは外ではなくてロデーヴ大聖堂の回廊に出るようになっていたのです。静かな展示室から出ると、そこは突き抜けるような青い空が見える回廊。そこは外の空間に間違いはないのですが、でもやっぱり非現実的なほどに静かな空間なのです。

ただ、回廊から先にどうやって進んだらいいのかわからず、僕はそこで次の人が来るのをずっと待たなくてはなりませんでした。幸いなことに教会の回廊にはラベンダーをはじめとするたくさんの植物があったので飽きることはありませんでしたが。次に来た人の見よう見まねで回廊の奥の大きな木の扉を引くと、そこは大聖堂の身廊につながっています。この大聖堂が素晴らしく、こんな辺鄙なところにこんな美しい建物があるなんて!と、つくづく往年のキリスト教のすごさを感じました。

 

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教会を出るともう時間は16時ごろです。

ロデーヴには他にも、王政時代の国営織物工場もあったりして見学ができる(要予約)のですが、ぶらり旅ですからそこまで盛りだくさんにすることはありません。この程度で帰路につくことにします。腹八分目程度が良いのです。そうしれば、またすぐにどこかに行きたくなりますから^^

 

 

おわりに

 

1€のバスというのは、おそらくエロー県に限ったものではなく、多くの自治体にあるものだと思います。なかなかバスの本数がなくて予定を立てるのが難しいのですが、時刻表も慣れてくればすぐに読めるようになってきます。1€でぶらりと近くのrégionを散策してみる。フランスでのこんな時間の使い方も、悪くはないですよ^^

 

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