フランス人もびっくり┃日本の子供は自分たちで教室を掃除するらしい
僕の在籍しているモンペリエ大学理工学部には日本人がいません。
(いるのかもしれないけど、まだ未確認。)
というより、アジア人がほとんどいないのです。どこにでもいるといわれている中国人ですら、滅多に見かけることはありません。考えてみれば当たり前のことで、どこのもの好きがわざわざ海外で理系分野の勉強を始めるというのでしょう。
というわけで、わが大学で激少数民族である日本人の僕。
当然、日本文化について友人から質問を受けるという事がよくあります。
最近聞かれたことで印象的だったのが「日本の子供たちは、自分で学校の掃除をするって聞いたけどホント?」という質問です。え、本当も何も、ふつうの事じゃないの?
mokuji
海外で紹介されている日本の学校
その友人は、どうやらこのビデオを見て日本の学校では生徒が掃除をしているという事を知ったようです。
Japanese Students Clean Classrooms To Learn Life Skills
聞いてみると、僕の周りだけでもこのビデオを見たことがあるという人が数人いました。facebookでよく拡散されていたようです。
さて、僕たち日本人にとっては、自分たちで教室を掃除することは当たり前のことだと思います。僕は小・中・高と公立の学校に通っていたため、学校の掃除は自分たちでしていました。夏休みなどの長期休暇前には、教室のワックスがけまでしていましたね。
なので、「日本では生徒が教室掃除するの?」っていう質問をされて、ちょっとしたカルチャーショックを受けました。だって、至極当たり前のことだと思っていたから。
自分たちで掃除をすることのないフランスの学校
フランスに限ったことではないのですが、どうやら欧米の学校での掃除は、掃除のおばさん、もしくは掃除のおじさんという専門の人がやってくれているそうなんですね。黒板掃除からトイレの掃除まで、全部掃除のプロがやってくれるそうなのです。
だから、彼らフランス人にとっては、自分たちで掃除する日本の子供たちが「逆に」目新しく見えたようです。
「なんで自分たちで掃除するの?」という質問もされましたが、こういう事って改めて考えるとなかなか答えが見つからないんですよね。
かっこよく言おうとすれば「自分たちが使った公共の場を掃除するなんて常識だろ☆」と言えるのですが、実際のところは「先生に掃除しろって言われたしー教室には当番表っていう紙が貼ってあって、みんなが責任もって掃除しなくちゃいけない雰囲気だったしー」というのが現実です。
自分たちで掃除することによって、責任感は生まれるのか
ビデオの中で、先生が掃除をすることの意義について、大人になってから経験するであろう集団生活を子供のうちから学ぶものだと話しています。
確かに、そういわれてみると学校の掃除を日々繰り返していたことによって、僕たちは社会に出て、仕事以外の日々のタスクというものに気を配ることができているのかもしれないと思います。何気なくやっていた習慣だけど、意外と実生活において役立っているのかもしれない。
フランス人も、日本のこの習慣には「いいね!」と言っています。そして、同時にフランスの学生が学校を汚したい放題に使っている現状を嘆きます。
確かに、フランスの学校は汚いのです。トイレに行けばトイレットペーパーが散乱しているし、喫煙は高校生からOKなので、高校の校門前なんかはたばこの吸い殻で散らかっています。
しかし、だからといってフランス人が社会に出て掃除ができないかというと、そうとも言えないんですよね。個人宅であっても掃除専門の人を雇うという習慣が日本よりも強いので、基本的に掃除が苦手な国民であるかもしれないのですが、言われれば彼らだって掃除くらいやります。むろん、集団生活もしています。
反対に、日本人で小さいころから学校の掃除を毎日していたとしても、成人してから集団生活のイロハも身についていないことが発覚する人というのは多くいます。責任感が形作られるかというのは、要はその人次第なのです。
ただし、公共の場をきれいに使い続けようという日本人の気持ちは確かに存在すると思います。例えば、日本の地下鉄の駅って海外のそれと比べてかなりきれいですよね。これには土足で家に上がらない、などの日本人としての根本的な生活習慣から来る"きれい好き"の要因が大きいという事も考えられます。しかし、公共の場を汚さないようにするという、僕たち日本人には当たり前のように思えるこの考えは、実は学校で掃除をしていたから備わった考え方なのかな、とも思うのです。
マイナスの意見もある
もちろん、日本の習慣が褒め称えられてるだけというわけではありません。
児童に学校の掃除をさせるのに否定的な意見というのも存在します。
そもそも、ここフランスでもモンスターペアレントというのは存在するものです。休日に子供たちと有志のゴミ拾いを企画した先生が、「休日に子供たちを働かせるなんて非常識すぎる」と非難されたという事がありました。
僕個人としては、行きたい人は行けば良いんだからそんなに言わなくても…と思ったのですが、確かにフランスでは「休日」の意識が日本とは違い遥かに大切にされていますし、休日の保護監督責任なども考えだしたらいろいろと複雑なのでしょう。
少し話がそれましたが、日本で子供たちが掃除をする、という決まりには、海外からは「子供たちがかわいそう」という意見が出ている様なんですね。
学校の掃除を「当たり前」のようにしてきた一人の日本人として、この意見には目からウロコでした。これを「仕事」とみる向きがあるのかと。
逆に考えると、僕たちが仕事とも思わないで平然にやっていることが、日本人以外の人から見たら「それって仕事だよ」と言われてしまう場合があるという事なんですよね。この発想の転換って意外と大切で、いい面でも悪い面でも、日本で最近ムーブメント化しつつある「仕事」の捉え方の変化にも繋がると思うんです。
たかが掃除、されど掃除
子供の学校の掃除なんて、まさかそんなに大きな意義があるなんて考えたことがなかったのですが、なるほど、日本の外側からの見方を調べてみると、日本人が習慣的にやっている「当たり前」の事の中には、「当たり前」じゃないかもしれないことがあるんだな、という事を発見しました。
たかが掃除、されど掃除。
でも、やっぱり僕の周りには掃除が上手じゃないフランス人が多いので、日本の学校掃除という習慣は存在していてよかったのかな、と思うのです^^