鴨脂100%パウンドケーキ🐤
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ブログの右側、もしくは下側にあるカテゴリから、「フランス語学習法」や「フランス生活」などテーマごとにまとめられたページに飛ぶので、これを利用して記事を読んでもらえればと思うのですが、記事数が多くなってきて、読みたい内容の記事を探すのが一苦労になってきちゃいました(とくに「フランス語学習法」)。
カテゴリー内をさらに細分化すればいいのか、アクセスの少ない記事は不要だという事で削除すればいいのか、はたまた読みたい記事が簡単に見つかるシステムというものがあるのか。ブログに詳しい人がいたら教えてもらえると嬉しいです(:_;)
さて、そんなカテゴリのなかに「レシピ」というのがあります。
まぁ、一応前職料理人なので、レシピとかいろいろ紹介できればなと思って作ったんですけど、料理を紹介するのって面倒くさいんですよね。そのせいあって、いまだに記事がほとんどない状態です。
でも、フランスで簡単に手に入る「ある食材」で、ちょっとおもしろいものが作れることに気が付いたので、今回はちょっと変わったレシピを紹介したいと思います^^
mokuji
フランスの鴨油
日本では鴨を食べる習慣があまりありません。
鴨肉と聞いて思い出すものは、お蕎麦屋さんの鴨南蛮や、オードブルでたまに見かける鴨のローストや燻製…くらいでしょうか。
対して、フランスでは鴨というのはよく見かけられる食材です。
スーパーにも普通に売られていますし(未調理・調理済みを含めて)、レストランでもよく見かける、フランス人に人気の食材なのです。
特に、マグレ・ド・カナール(鴨のささ身、の意)は、北から南まで、フランスの広い地域で見られるごちそうの代名詞的な存在ではないでしょうか。(僕はそう思っています^^)
で、この鴨肉なんですが、焼いたことがある人ならわかると思いますが、脂がたくさん出てくるんです。
皮に火が通りやすくなるように格子状の包丁目を入れて、皮目から焼き始めるのですが、中火で焼いている間次から次へと脂が出てくるのです。その量と言ったら、バファリンの半分が優しさでできてるぐらい、鴨肉の半分は脂なんじゃないか、っていうくらい。
大体、この出てきた脂は捨てずに保存してい置いて、写真にあるようにジャガイモなどの根菜を炒める時の油として使われることが多いのです。コクがたっぷりと詰まっていて、大変美味です。
でも、そんなに大量の油ってなかなか使いきれないんですよね。で、その油をどうやって使い切ろうかあれこれ思案しているときに、こんなことを思い浮かんだのです。
鴨脂でお菓子を作ったらどうだろう
お菓子作りに使われる代表的な油脂と言えばバターですが、実は豚脂(ラード)やオリーブ油などもヨーロッパではお菓子作りに使われています。
工場で作られるお菓子の多くにはパーム油などが使われていますよね。お菓子作りには、特にバターにこだわる必要は無いのです。
ならば、鴨脂でもお菓子を作れるんじゃないか。
というわけで、作ってみました。鴨油100%のパウンドケーキ。
レシピ
○材料(20x9cmのパウンド型) 【オーブン150-170℃で30分】
鴨脂(冷蔵されている状態)120g
砂糖 100g
卵 120g(Mサイズ2個)
小麦粉 120g
ベーキングパウダー4g
その他、好みの材料
作り方は、書かれている順番にボウルの中でよく混ぜ合わせて焼くだけ。
いくつかこのレシピのポイントを紹介します。
①まず、鴨脂は冷蔵されている状態のものを使ってください。
一般的にパウンドケーキを作る場合は、バターを一度室温に戻してから使います。なぜでしょうか。
それは、バターの融点がとても高い(30℃)ため、室温(25℃くらい)にしないと、固すぎてホイッパーで操作することができないためです。それに対して、鴨の脂は動物性脂肪にしては融点が低いため(15-20℃)、冷蔵状態でないと反対にダレてしまって扱いづらくなるのです。
この脂の融点の違いに、実は僕が鴨脂をお菓子作りに取り入れたかった理由があるのです。
動物性脂肪(バター、ラード、その他肉の脂身など)は飽和脂肪酸といって、体に悪影響を及ぼすことのある脂肪です。悪玉コレステロールを増やしたり、心臓病、脳の疾患などの原因になったり、もっと身近なところでは食後の胸やけなんかを起こしたりします。
反対に、魚の油に代表されるような不飽和脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸やエイコサペンタエン酸という「頭に良い油」という名前で一時期ブームになったように、体にいい影響を及ぼしてくれる脂が多く存在します。
そして、飽和脂肪酸で構成された油は、文字どおり飽和=しっかりとしているので、融点が高く、なかなか溶けることがありません。反対に、不飽和脂肪酸は脂肪の構造が不安定なため融点が低いのです。
ここで鴨脂に視点を戻してみると、室温で緩い状態であるという事は不飽和脂肪酸がバターと比べて多く含まれていることになります。また、不安定であれば消化もしやすく、体への負担が少なく済むんですね。
(もちろん、全ての飽和脂肪酸が体に悪く、全ての不飽和脂肪酸が体にいいという事はありませんので、誤解しないようにしてください。)
②パウンドケーキケーキの名前の由来をしっていますか?
パウンドケーキは、重さの「パウンド」から来ています。つまり、脂・糖・卵・小麦粉を1パウンドずつ、同嵩で混ぜればできるお菓子だという事です。
ちなみにパウンドケーキは、フランス語ではquatre-quarts(4つの1/4)と言い、理由は英語と同じです。
しかし、今回のパウンドケーキでは砂糖だけ比率を5/6にしています。もっと少なくしても良いでしょう。
理由の1つは、現代人の食生活で一番過剰に摂取しているのは「糖」であるため、クラシックなレシピよりも減らしたかったという事。(そもそもお菓子なので、あまり意味のないことは分かっていますが…^^)材料を見ても、脂質・糖質・タンパク質・炭水化物(→糖質)となり、糖質が2倍量です。
もう一つは、鴨脂が常温でとても良い保水性を持っていることが分かったからです。
砂糖には甘みをつけるだけではなく、乾燥からお菓子を守る保水性という重要な役割があります。
問題点は、砂糖が少なくなったことで十分に水分子が砂糖と結びつかなくなることから、細菌の繁殖に使われる水が多くなってしまう恐れがあるという事です。(ジャムのように、糖と水の分子がほとんどすべて結びついていれば、保存性が高まります。)
③卵を入れても分離しにくい
不飽和脂肪酸の特徴の一つとして、水溶性であるというものがあります。読んで字のごとく、水に溶けやすいのです。
バターと砂糖を混ぜた状態に、卵を加えると、水と油の影響で分離してしまうことがあります。これを防ぐためには、卵をぬるま湯で湯煎しておくなどして温度を上げておくことで分離しないようになります。僕は面倒くさがりなので、分離したらレンジで5秒くらいチンして強制的に乳化させちゃいますが。
でも、鴨脂ならそもそも卵液と溶けやすいので、あまりに冷え切った卵を使わない限り、分離することはまずありません。簡単なのです。
④その他、好みの材料は何を入れる?
ここには自分の好きなものを入れましょう。
僕のおすすめはココナッツ+プルーン+クルミ+チョコレート。
プルーンの整腸作用、ココナッツやクルミの食物繊維やビタミン・不飽和脂肪酸、チョコレートはよりカカオの純度の高いものを選べば糖度を抑えてポリフェノールなどの抗酸化作用の恩恵を受けることができます。
他にも、クラシックな鴨料理に「鴨のオレンジ仕立て」というものがあるので、オレンジピールやオレンジリキュールを使ったレシピも、鴨脂との相性はぴったりです。
鴨脂がジャガイモと相性がいいとなると、同じようにでんぷんを多く含んだバナナもイケるんですよね。バナナは、またキャラメルやチョコレート、シナモンなんかと相性が良く、これらは鴨料理にも使われている調味料なので、黄金の三角関係を見つけることができます。
少し趣向を変えれば、鴨料理からイメージを膨らませて、栗、マデイラ酒、ローズマリー、カルダモン、胡椒、チーズ、ハチミツ、バルサミコ酢なんかもこのお菓子に使えるかもしれません。
アイデアの尽きない脂です。
⑤食べるのは1日待って!
このお菓子、焼き立ては鴨臭がかなりします。あまり甘いお菓子としては食べたくないかな…っていう匂いです。
しかし、これが1日、2日と経つうちにリッチで良い香りになってくるんですよね。具体的な例を挙げるとすると、ミスタードーナツのオールドファッションの味です。
なので、焼きあがっても食べたい気持ちをぐっと我慢して(あんまり食欲を掻き立てない匂いだし)、翌日から食べるようにしてみてください。味も翌日以降のほうが馴染んで、ちょうどよくなります。
おわりに
ここまで書いてきて言うのもなんですが、日本で鴨脂ってそうそう手に入らないと思います。フランスだったら脂だけ瓶に詰められて500g 5€くらいで買えるんですけどね。
鴨肉自体もビタミンB群が豊富で「美容の肉」って言われているくらいなので、もっと鴨肉食べて、余った脂身から油を焼きだし→ストックしてお菓子に使う、っていうのが理想なんじゃないかと思います。まぁ僕がやっている工程なんですけど^^
フランス在住の方は、是非お試しあれ!