日本料理と「足し算の料理」と「引き算の料理」
先日、フランスが足し算の料理という話題を出したんですが、日本料理はその反対として扱われることがあります。
フランス料理が「足し算の料理」なら、日本料理は?
日本料理は「引き算の料理」と呼ばれることがあります。
良く勘違いしやすいのですが、引き算の料理だからと言って、手数を抜いた料理をするわけではありません。
「素材の味を、そのままに」とかいって、野菜を皮も剥かずに、きれいに洗って盛りつけた料理(?)を出すお店がありますが、それは違うと思います。
まぁ、お客さんが満足できれば、それはそれでいいのですが、僕の考える「引き算料理」というのは、うま味をはじめとする味の領域での話だと思うんです。
僕の好きな料理に「空豆」があります。
空豆は鞘を剥き、豆の周りの薄皮に軽く包丁を入れます。
それから、熱湯で湯がき、冷水に十分さらして余計な雑味を流し去ります。
こうして、空豆の澄んだ味や香りだけが残っている状態に、上等な素材からとった出汁を含ませてあげるのです。
出汁を切ってお客様に提供された空豆は、バターをふんだんに使ったソースがかかっているわけでもないし、キノコと一緒にポワレしているわけでもなく。
家でお湯で湯がいただけの空豆と何ら変わりはありません。
しかし、翡翠色の空豆の皮をむいて口に入れると、今まで食べたことのない、きれいに澄み渡った「空豆の味」だけが口に広がるんです。
これが、僕の考える「引き算の料理」です。
素材の味を引き出すために、最大限の工程を踏んでいる
食材の味を、料理人の手によって引き出しているのです。
美味しい料理を積み重ねて作るのではなく、大切な部分を見据えて構築していく感じ。
1+1=2だけじゃなくて10にも100にもなり得るのと同じで、1-1=0と消えてしまう事はなく、10や100といった答えに行きつくこともあるのです。
それが日本料理。
そう考えると、日本料理って面白くないですか?^^