進化するAI(人工知能)の作曲技術3選┃FLOW MACHINESが心地よすぎる
日々、新しい技術の進歩がニュースになっているAI(Artificial Intelligence=人工知能)。
AIの技術革新は情報・工業の分野だけではなく、音楽の作曲のような「芸術」の分野にも足を踏み入れています。しかもその技術は、ただ音楽をランダムに作り出すだけではなく、作られた音楽は心地よかったり刺激的であったり、あるいは集中力を高めたりリラックス効果があったりする、ワンランク上の音楽を作り出しているのです。
今回は、そんなイマのAIの音楽を紹介します。
mokuji
1.オリンピック選手たちも使っていたBrain.fm
集中力を高めるために、勉強・仕事中にBGMを流す人は多いと思います。
でも、歌詞が入っている歌を聴いたり、自分が好きな曲を聴いていると、意識がそっちに集中してしまい、かえって気が散ってしまうことってないですか?
brain.fmは、環境音楽のような邪魔にならない、耳に心地の良い音楽を提供しているサービス。
でもこれ、単に聴き心地が良いだけではないんです。
なんと、「集中したいとき・リラックスしたいとき・寝たいとき」と、シーンに合わせた音楽を提供してくれるのです。
しかも、それぞれのカテゴリーの中には、「森林の中でリラックス」や「ビーチで睡眠」といったように、異なるタイプの曲がぎっしり。それぞれの曲の長さもかなり長く(AI音楽なので当然ですが)、長いスパンで曲調もランダムに変化していくので、飽きることなく聞いていられてとても面白いのです。
なんだか本格的な感じがします。というのも、バックには神経科学や生物統計学など、様々な分野のスペシャリストがついていているので、結構しっかりとしたデータベースがあるようなんですね。
こんな感じで、サイト内では専門的なリサーチの結果も公開されています。
聴いてみたところ、曲調はthe・環境音楽といった感じです。リラックスと言っても、クラシック音楽のようなものではありません。歌や明確なメロディーがあるわけではないのです。
定期的なパルスのような音、不規則なリズム、安定しない音の移り変わりなど、様々な要素が絡み合っているのですが、明瞭なメロディーというのはほとんど出てきません。「リラックス」を聞く限りでは、なんだか海の中の海藻の森に沈んでいくような感覚を覚える曲調でした。
対して、「集中」のほうは、考えを邪魔せず、かといって頭の後ろをただ通り過ぎていくわけではない特徴的なパルスの刻みが印象的な音楽でした。完全に周期的でないパルス音が、意識の弛みを締め上げてくれるのでしょうか。
オリンピック出場選手がトレーニングにも取り入れていたということで一躍人気になったこのサービス。勉強や仕事、しっかり睡眠をとりたいときなどに使ってみてはいかがでしょうか?
最初は7セッションをフリーで聴くことができます。
Brain.fm: Music to improve focus, meditation & sleep.
2.あのgoogleも、AI音楽に乗り出した
Magenta(マジェンタ)。グーグルブレインチームの、AIを使って音楽や美術などを「創作」するプロジェクト。
Magenta初となるピアノ音楽がYouTubeでも一般公開されているので、まずは聞いてみてください。
バンド少年が、初めてコードの勉強をした時に作る曲に似ています^^
曲の冒頭の4つの音はあらかじめ与えられたもので、それをもとにAIがアルゴリズムを使ってメロディーラインを作り上げているのだそう。google翻訳から音楽まで。今の世の中、なにからなにまでアルゴリズムですね。
ちなみに、バックのドラムは人間が付け加えたものだそうです。
これを聞いていたら、モーツァルトが初めて作曲した曲を思い出しました。
神童・モーツァルト。初めての作曲時、御年なんと5歳!
AIがモーツァルトを超える日も近いのでしょうか。。。
3.FLOW MACHINESが心地よすぎる
最後に紹介するのは、フランスにあるSony CSLが進めているプロジェクトのAI音楽。
こちらはFLOW MACHINESという、膨大な音楽のデータベースから、「それらしい」要素をAIが引っぱってきてミックスするというもの。選択・合成された音楽は、後にFLOW MACHINESの作曲家(人間)が適宜調整を加えるので、正確にはAIと人間の共同作品といったところでしょうか。
「それらしい」と、わざわざ括弧でくくってみたのですが、まぁこちらを試しに聞いてみてください。これは「ビートルズらしい」楽曲として創作されたものです。
Daddy's Car: a song composed by Artificial Intelligence - in the style of the Beatles
ね、ビートルズっぽいでしょ(笑)
しかも、個人的にはかなりいい感じだと思っています。日曜日の遅い晴れた朝に、コーヒー飲みながら流したらよさそうな感じです。
もうひとつ。こちらは「20世紀初頭のアメリカ・ポピュラー音楽」らしい曲調にまとめられています。Sony CSLの作曲担当・Benoît Carréによると、アーヴィング・バーリン、デューク・エリントン、ジョージ・ガーシュイン、コール・ポーターのような曲調の電子実験音楽として創作したのだそうです。
Mr Shadow: a song composed by Artificial Intelligence
こちらはより「人工の声」といった感じがしますね。
他の曲はこちらから聞くことができます。
pb.音楽は無くならないのか?
人間の文化的な歴史の中で、音楽の歴史はどれくらいあると思いますか?
参考に、絵画の歴史を見ると、かの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチが「ルネサンス期を代表する画家」と呼ばれています。15世紀後半のことです。
音楽は、モーツァルトや、それより前のバッハが活躍していた、クラシック音楽の「古典音楽」「バロック音楽」の時代でさえも、せいぜい17~18世紀ごろなのです。モーツァルトって1756年生まれなんですよ。少し意外じゃないですか?このことを知る前は、僕はモーツァルトってもっと古い人だと思っていました。
それから今日に至るまで、世界では様々な曲が様々なジャンルで作られてきました。
これだけ多くの曲を作ってきて、メロディーが枯渇することはないのでしょうか?
そんな疑問に答えてくれるのが、こちらの動画。
Will We Ever Run Out of New Music?
英語なので、僕もあまり詳しいことは言えないのですが…(´・ω・`)
簡単に言うと、1オクターブ内の音を使って、音価(音の長さ)も全音符~32分音符に限定して5分程度の曲を作ると、下の画像の上の数字の組み合わせの数になるそうなのです。
ちなみに、下の数は宇宙が誕生してから今までの年齢を秒単位で表したもの。組み合わせの数がいかに多いかということが分かりますね。
動画では、この後ポピュラーなメロディーパターンや、音価の種類を制限することで組み合わせの数を減らして再計算していますが、それでもやはり、途方もない数字になってしまうのです。結局、音符の組み合わせだけで考えればメロディーが無くなることはまずないでしょう。
しかし、音楽というのはメロディーの組み合わせではありません。おそらくただ単にメロディーを組み合わせるくらいであれば、AI音楽のプロジェクトは全く面白くなく、すぐに終わってしまうものになると思います。
メロディーの組み合わせ以外に、何が音符の配列を音楽にしているのでしょうか。アルゴリズムの進化で本当に音楽を「創る」ことができるのか。そして、仮にアルゴリズムの制約に縛られない音楽が誕生したとすると、いったいそれはどういうものなのか。
なんだか、少し怖いけれど楽しみでもある、AI音楽の未来です^^