フランシウム87

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生殖補助医療、養子…┃フランスの子育てについて考えてみる

日本と比較して出生率が高い国、フランス。

日本の出生率が1.50を切っているのに対して、フランスの出生率は2.01。2人の親の間に2人以上の子供がいる計算になります。

今後訪れる超高齢社会、医療介護費の増大、社会保障などの様々な問題の根源として重要なテーマである少子化。フランスの少子化の改善には、子供を作りやすい(持ちやすい)環境が整備されたためだと考えられているのです。

そこで今回は、フランスの少子化に関するいくつかのテーマについて考えたいと思います。

 

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子供を作りやすくするためには~PACSの場合~

 

先日の記事でも書いたのですが、フランスのPACS(民事連帯契約)が少子化を改善したという考えがあります。

 

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

francium87.hatenablog.jp

 

PACSの実施によって出生率の低下はくい止められたかもしれません。しかし、主役である子供たちの幸せはどうでしょうか。

仲の悪い両親の間で育つよりも、親同士がそれぞれ幸せな道を歩んでいる環境で育てられた方が、子供にとっては良いのかもしれません。しかし、PACSには簡単に離婚ができるという性質がある以上、子育ての環境の安定性については常に議論の余地があるのです。

 

そこで、こんな記事を用意してみました。

 

www.valeursactuelles.com

www.lefigaro.fr

www.lci.fr


簡単に記事の概要を言うと…

 

1つ目の記事は、現在全ての女性に対して、一人でも子供が持てるような政策づくりがすすめられているフランスで起きたニュースについてです。何らかの理由、もしくは女性たちの希望によって、精子提供などを受けて一人でも子供を持てるようにする政策がフランスで取り組まれています。これに対して、反対団体がAprès les légumes OGM, les enfants à un seul parent ?(遺伝子組み換え食品(野菜)の次は、一人の親しか持たない子供?)”という衝撃的なスローガンを掲げたため、物議をかもしているのです。遺伝子組み換え食品も、人工授精で誕生した子供も、どちらも"自然"ではないという考えからきているのです。

 

2つ目の記事は、フランスで多く実施されている養子の受け入れ(国外からの養子の受け入れも多くあります)についての記事。10年以上前のフランスの厚生省の調査によると、一旦受け入れ家庭に迎えられたにもかかわらず、その後ソーシャルサービスに戻されてしまう養子の子供の数は、全体の15%に迫るとのこと。別の子供の安全を守る国立調査機関(Oned)によると、その数は5%程度だとのことですが、専門家によるとその数はもっと多いに違いないというのです。養子受け入れが簡単なものではないことが浮き彫りになっています。

 

3つ目の記事は、一般的にネガティブな評判が噂されがちな「同性カップルの間に迎えいれられた子供」についてです。同性のカップルは、クラシックな男女の関係による子を授かることができません。子供が欲しい場合には養子を受け入れたり、代理母出産を利用するのです。こうした行動は”自然”な出産ではないために反対を受けることが少なくありません。また、同性のカップルの間育てられるという事は、父親、あるいは母親の存在がかけているため、良い子育て環境ではないとも考えられているのです。この記事では、「2人のお父さん」に育てられた女性のインタビューが載っています。

 

フランス語ができる人は、気になる記事を1つでも読んでみると良いでしょう。フランス人との話題作りに役立つ話のネタになるかもしれません^^

 

PMA(Procréation Médicalement Assistée, 生殖補助技術)

 

少子化対策や、女性の働き方、人生改革にも関連のあるPMA。PMAとは、広い意味では、何らかの理由で生殖(子づくり)が困難な場合、医療技術を使って生殖を助けることです。1つ目の記事の場合は、女性が一人でも子供が欲しい場合、PMAを使って子どもを作ることができるようにする権利を、女性全員に適用しようとする政策がベースの情報です。

反対団体が批判しているのは、パートナーが存在しない状態で子供をつくるというのは、遺伝子組み換え食品の様に"自然"ではないという事です。また、パートナーが存在しなければ父親の存在がありません。

 

この記事を書こうと思ったきっかけも、僕の住んでいるモンペリエでも道にこのような張り紙があったのを見かけたからです。

 

10年ほど前、スペインに留学しているときにクラスで同じようなテーマについて話したことがありました。僕が「子育てをするうえで、父親も母親もそれぞれに子育てに対する役目がある。できればその2つがそろった家庭環境にするべき」といったら、欧州留学勢(スペイン人の先生を含む)にコテンパンに反対された経験があります。。。つまり、ヨーロッパ系のクラスメイト達としては、子育ては必要な制度が整っていればさまざまなケースでも可能、ということなのです。ちなみにアジア系のクラスメイトは僕の意見に同調していました。

 

また、フランスのこんなデータもあります。

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フランスの半数以上は、僕に反論したクラスメイト達と同じ考えであることが分かります。興味深いことに代理母出産に多くの賛成意見が集まっていることが分かります。PMAは政治的に肯定的に受け止められているのですが、代理母出産(GPA)は現在のところ賛成意見にはありません。今後、世論を受けてフランスでは代理母出産が政治的に認められるようになるかもしれませんね。

 

「愛が全てを解決するわけではない」

 

印象に残った言葉が、2つ目の記事にあった「愛が全てを解決するわけではない」"Il est faux de croire qu'avec de l'amour, on résout tout"です。愛情を注いでも、受け入れた子供がなかなか心を開くことができず、やむを得ずソーシャルワーカーの下に戻された実例がかかれています。海外からの養子受け入れが少なくないフランスでは、アジアからの養子も多く見かけます。ひいては人口の増加につながる養子の受け入れですが、この取り組みの裏にも多くの問題があることがわかります。

愛があれば、たとえパートナーがいなくても子供を育てることができるという考えがある一方で、いくら愛があっても場合によっては避けることのできない問題があるようです。これは養子の例だけではないでしょう。

 

逆に、一般的に良く思われることのない同性間のカップルの間に迎え入れられた養子のケースはどうでしょうか。

 

「自然な子づくり」が幸せな子供をつくるのか?

 

そこで面白いのが3つ目の記事です。

一般的に否定的な指摘がされがちな「同性カップルに迎え入れられた養子」についての記事です。この記事で、「2人のお父さん」に育てられた29歳の女性はインタビューに対して「唯一心を痛めたのは、他の人からとやかく言われるときだった」と言っています。つまり、彼女にとって「2人のお父さん」との家庭関係には全く問題がなかったということなのです。むしろ、彼女自身は特別で幸せな子供時代であったと、当時を振り返っています。

PACSが子供にストレスをかけているかもしれないという事は、以前の記事で書いた通りです。また、PMAに反対する団体が言う様に、「自然な子づくり」でない方法はモラルに反するのかもしれません。しかし、この記事を読むことで忘れてはいけない当事者である子供たちの幸せの存在を再認識しました。

とはいえ、この「2人のお父さん」を持った女性は心が強かったから、特殊なケースでも幸せだったと振り返ることができたのだと言えるでしょう。文章内では学生時代に学校で嫌がらせを言われたとも書いてあります。人によっては精神的に深く傷つくようなことも、彼女は耐性があったという可能性もあります。

 

おわりに

 

子供をどのようにして持つか。日本の働き方改革にも大きく繋がるテーマだと思います。

子育てにおいて親の幸せを守るすることも大切。そのためには多様な夫婦関係が認められる必要があります。その多様な夫婦の関係のなかで、どのようにして子供の幸福を守ることができるか。フランスという、この分野においてはパイオニア的な存在の国を知って、日本はどのようにすべきかを学びたいものです^^