フランシウム87

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音楽の印象派って何?フランス音楽界の2大巨匠を聞き比べてみる!

フランスに旅行に行ったとき、皆さんだいたい1つか2つの美術館に行くでしょう。フランスの美術館は規模・質ともに素晴らしいものばかりです。

しかし、音楽を聴きに劇場に足を運ぶ人はあまりいないと思います。

フランスの画家と聞いていくつかの名前を挙げることができても、作曲家となるとあまり名前が出てこないかもしれません。しかし、フランスにも多くの作曲家はいます。

今回は、絵画の世界で日本人に大人気の印象派…の音楽バージョンを紹介します!

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印象主義って音楽にもあるの?

 

音楽の世界にも印象主義はあります。

絵画の世界で印象主義の画家といえば、モネやマネなどが有名ですね。このモネ作「印象、日の出」は絵の中に光や空気の感覚、「印象」をうまく描いた一枚です。

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この絵では朝日を反射する水のきらめきも描かれていますが、同じ水の動きを音楽で表現するとどうなるでしょうか。

フランス印象主義音楽の大家、ドビュッシーとラヴェルが紡いだ「水」の音楽を聴いてみましょう。

 

まずはドビュッシー作曲「水の反映」


Daniil Trifonov - Debussy "Reflets dans l’eau"

 

滑らかに流れる水は速くなったり遅くなったり、そこここに光の反射を思わせるような高温の音が響いて、とても素晴らしく水の雰囲気を表していると思います。また、ドビュッシーの音楽によくある「けだるさ」が曲の全体を覆っていて、独特の空気も醸し出しています。僕はこの音楽を聴くと、夏の暑い日に日陰に座って水の流れる小川に足を投げ出している情景が頭に浮かびます。

 

さて、次はラヴェル作曲「水の戯れ」です。


Bertrand Chamayou — "Jeux d'eau" (Ravel)

 

こちらは全体的に水の快活な動きが感じ取れる曲だと思います。さっきのドビュッシーの水とは異なり、細やかな動きが全体にシャープな印象を与えているからでしょうか。自分自身が小魚になって、冷たい清水の中を泳いでいるような印象があります。

 

いずれにせよ、これらの曲がとても曖昧なニュアンスを帯びていることがわかると思います。それ以前の音楽と言えば、例えばドビュッシーやラヴェルよりも前に活躍したブラームス(ロマン主義)は、下で紹介する動画のように、情景豊かではあるけれどメロディーラインがしっかりしている曲を書いています。「雰囲気」に着眼しているとは言えませんね。(ピアノ奏者が上手すぎるので、雰囲気も醸し出されていますが…)


Grigory Sokolov - Brahms Intermezzo Op. 117 No. 2

どうして印象主義音楽は有名じゃない?

なぜ印象主義の絵画は有名なのに、音楽は有名でないのでしょうか。

もちろん、知っている人からすれば印象主義音楽というのはとてもメジャーなものです。しかし、芸術にあまり興味がない人でも一度は見たことがある印象主義の絵画に対して、音楽はあまり知られていません。

その理由は、まず目で見るものと耳で聞くものの違いがあります。音楽という芸術の最大の特徴は時間軸が重要な意味を持つことです。音楽は時間の中で生まれ、そしてすぐに消えてしまいます。それに対して絵画は一度書き上げれば長い時間とどまります。なので、展示が可能ですし、見る側も好きな時間を選択して絵画を見ることができます。パリに旅行に行けば、シャンゼリゼ劇場でオペラを見ることはなくても、オランジュリー美術館でモネの絵を見ることはあるでしょう。

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また、量的に音楽の印象主義の作品は絵画に比べて少なく、モーツァルトやベートーベンなどの大作曲家と比べると知名度もやや劣るのも問題でしょう。意外かもしれませんが、代表的な古典主義音楽のモーツァルトが活躍したのは1700年代後半。それに対してルネサンス(古典を復興しようとしました)を代表するダ・ヴィンチは15世紀の人物なのです。絵画に比べて音楽の歴史はかなり後からスタートすることになるので、その分「有名」と言われる作曲家の活動している期間はとても短いものです。

 

しかし、日本人は印象主義が大好きなのは事実です。それは、印象主義の画家たちが当時の日本の美術が好きだったからかもしれませんが、とにかくなぜか日本人の多くは印象はの絵が好きです。であれば、印象主義音楽も日本人の耳に馴染みやすいのではないでしょうか。

そういえば、僕が学生だった頃に話題になった岩井修二監督の映画、「リリィシュシュのすべて」の中では、ドビュッシーの音楽がたくさん使われていました。印象主義音楽が、あの映画の独特な空気を作り上げていたのは言うまでもありませんが、音楽と映像の組み合わせで効果がさらに増幅するんだと思ったのを覚えています。

岩井俊二監督の映画の独特の雰囲気も好きで、先日岩井映画を見るために初めてU-NEXT というネット上の映画サービスを使ってみました。もちろん無料期間だけしか使わなかったのですが、「リリィシュシュのすべて」を含むたくさんの映画を見ることができて満足でした。この映画が懐かしいというと、僕の年代が分かりますね^^,

 

話が逸れましたが、ドビュッシーとラヴェルは、どちらも後世に大きな影響を与えた作曲家です。その影響は音楽界に限らず、あらゆる芸術の範囲に及んでいるのですごいですね。

しかし、そんな彼らに影響を与えた大本となる人物がいます。それは音楽界の異端児とも呼ばれたフランスの作曲家、エリック・サティです。彼についてはまた別の記事で紹介します。

 

おわりに

 

絵画と同じように音楽の世界にも存在する印象主義。その特徴はとても「雰囲気」的で、印象主義絵画が好きな日本人の好みに合うものだと思います。

もし、フランスに旅行することがあれば、是非、現地でフランスの音楽を体験することをお勧めします。以下の記事でフランスでの劇場の予約の仕方や、音楽鑑賞の手引きを紹介しているので参考にしてもらえればと思います。フランスのエスプリを耳で感じるひと時を作ってみるのも、フランス文化を知る大切なプロセスではないでしょうか^^