フランシウム87

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おもしろい国章の話┃ラテン語でなんて書いてある?

ヨーロッパを旅行していると、教会の壁や広場のモニュメントなどに書かれているラテン語に遭遇する機会は多いと思います。

ラテン語…。フランス語、スペイン語、イタリア語などの、ヨーロッパの多くの言語の起源となった言葉。神と話す言語として、キリスト教では昔から使われ続けている言語ですし、現代でも医学、法律、科学などの分野ではラテン語の形をよくとどめた単語は多く存在しています。

 

さて、いろいろな国や地域の紋章を見ていると、ここにもラテン語でメッセージが書かれていることに気が付きます。どんなことが書いてあるのでしょうか。

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mokuji

 

 

 

フランスの国章

 

フランスの国章は、残念ながらラテン語で何か書いてあるわけではありません。

RFという"République Française"の頭文字が重なった図案が使われています。これはユーロ硬貨なんかにも描かれていますね。

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wikipédia

 

そしてフランス共和国のモットー(標語)は"liberté, égalité fraternité"「自由、平等、博愛」です。これもラテン語ではありませんが、世界的に有名なモットーになっています。

 

 

パリの市章

 

最近発見したのですが、パリの市章って結構面白いんです。

図案の説明は、今回は割愛。市章の下の部分にはラテン語で"fluctuat nec mergitur"「たゆたえとも沈まず」と言うそうです、日本語では。ちょっと文語体で難しいのですが、ラテン語とはこういうものです。ラテン語で書くと、なんか「高尚」な感じになるんですね。

「たゆたえとも沈まず」とは、様々な解釈(これは意味のない文章だという意見も含め…)があるのですが、個人的には昔、パリのシテ島が船頭の組合に管理されていたという歴史から、船乗りに関連したフレーズであるのだと考えます。つまり、現代では「動乱の多い歴史も切り抜けてきたパリ」を、嵐のようなものに見舞われてきた船に見立てて解釈されているのですが、もっとシンプルに船乗りのアイデアである部分を尊重するべきではないのかなぁと、個人的には思うのです。いずれにせよ、ドラマチックなモットーですね。

 

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アンドラの国章

 

アンドラ公国という国を知っていますか?

フランス共和国とスペインの間、ちょうどピレネー山中にあるとても小さな国です。アンドラという国は少し変わっていて、スペイン側のウルジェイ司教区の司教と、フランス側のフランス共和国大統領の2人が国家元首になっているのです。つまり、アンドラはれっきとした独立国なのですが、隣の2つの国から代表者が出ているのです。

ざっくりいうと、政治的な仕事はフランスが行い、宗教的な仕事はスペインが行う感じです。日本人がアンドラにビザ申請を行う場合は、フランス大使館のアンドラセクションにコンタクトを取ります。

という歴史的背景を受けて、アンドラの国章にはラテン語で"virtus unita fortior"「力を合わせれば強くなる」と書かれています。

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スペインの国旗

 

スペインの国旗というと、赤と黄色の背景に、なにやら複雑な図案が書かれているイメージがあると思います。

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この複雑な部分が国章なのですが、両脇の神殿の柱のようなものにまとわりついている赤いリボンに、ラテン語で"plus ultra"「さらに先へ」と書かれています。

この2本の柱は「ヘラクレスの柱」といって、ローマ神話では世界の西の果てに立っている2本の柱とされています。この柱は、現在のジブラルタル海峡(スペインとモロッコの間)に位置すると言われていて、その柱にはラテン語で"nec plus ultra"「もうこの先には何もない」と書かれているのだそうです。先ほどの文章の先頭に"nec"という否定語が入った形です。

この神話からアイデアを得たのがスペインの王、カルロス5世。彼はスペインの領土を地球上のいたるところで獲得し、「太陽の沈まぬ国」と呼ばれる大帝国を築き上げた人物です(ヨーロッパにも、南米にも、アジアにも領土を持っていれば、どこかの国は必ず日が出ていることになりますからね)。このカルロス5世が、「ヘラクレスの柱」の神話からアイデアを得て、「私の帝国に終わりはない」という思いを込めて作り上げたモットーが"plus ultra"「さらに先へ」なのです。

なので、カルロス5世が在位していた時代以前のスペインの国章には、"nec plus ultra"「もうこの先には何もない」と書かれていたのだそう。おもしろいですね。

 

 

…と、こんな具合で旗を眺めてるとよくラテン語の文章を見かけるのですが、その裏にはこうしたストーリーが隠れているんですね。

たまには違った角度から、紋章を眺めてみるのも楽しいかもしれません。