フランシウム87

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フランス語で「今日」は?┃aujourd'huiについて考えよう

フランス語で「今日」は"aujourd'hui"と言います。

むりやりカタカナで発音を書こうとすれば「オージュードュイ」な感じでしょうか。

多分、フランス語で「今日」を何と言うのか知りたくてこのページにたどり着いた人ならこの情報だけで満足でしょう。

でも、このまま終わらせるには少し短すぎるので、今日はこの"aujourd'hui"という単語にスポットをあてて書いていきたいと思います^^

 

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mokuji

 

 

 

「今日」という単語の意味

 

普段、誰かにあった時は「こんにちは」と言って挨拶をすると思います。

この「こんにちは」は「今日は」から来たもので、「今日はご機嫌いかがですか」と相手を気遣う文章が省略されてできあがったものだといわれています。

日本語では同じ一つの単語「今日」でも2通りの読み方がありますね。「こんにち」と「きょう」です。この「こんにち」、つまりフランス語でいうところの"le jour present"というのは"aujourd'hui"と全く同じ意味合いなのです。

 

 

 

aujourd'huiのhui

 

"aujourd'hui"って不思議な単語だと思いませんか?一つの単語なのに、間にアポストロフィーが入っているんです。僕がフランス語を勉強し始めたばかりの時にこの単語に出会って「フランス人って『今日』っていうだけでもこんなに面倒くさい単語を使うのか―」と辟易したのを覚えています。

 

さて、"aujourd'hui"のアポストロフィー以降、つまり"hui"というのは、ラテン語の"hodie"という単語に起源があるようです。この"hodie"には"ce jour-ci","le jour où nous parlons"つまり「この日」という意味があります。

ということは、"hui"だけで日本語の「今日」と同じ意味なんですね(*'▽')

 

もうちょっと範囲を広げてみると、「今日」という単語はラテン語を起源とする兄弟格のスペイン語(hoy)ポルトガル語(hoje)イタリア語(oggi)なども、このラテン語の"hodie"から進化したものです。(どの言語もhは発音しないので)

僕の住んでいる南仏地域で話されていたオクシタン語(uèi)カタルーニャ語(avui)などでも形は変わりましたが音の繋がりが見られます。

少し変わったところだと、前置詞のàがくっついたルーマニア語(azi)もあります。

 

というように、これらすべての言語においての「今日」という単語はラテン語に収束するわけです。ちなみに、このラテン語の"hodie"という単語の起源を求めると、さらに5世紀頃の古いドイツ地方で話されていた言葉の"heute"という単語にいきつくのですが、ここまではさかのぼりません(笑)

 

 

聞き取りにくい"hui"!

 

フランス語の場合は、「今日」を表す言葉は"hui"だったり"hoi"といった形で11世紀頃には吟遊詩人たちによってうたわれていた歌の中に出てきています。彼らは、日本の琵琶法師のように、宮廷や諸国をまわって、物語をメロディーにのせて歌っていた、いわゆる芸人です。しかし、この"hui"やら"hoi"というのは、発音額の勉強をしている人ならわかると思いますが、"monosyllabe"(単一音節)の単語なので、聞き取るのが難しかったようなのです。

例えば、昔のフランス語の「聞く」という動詞"ouïr"や、今では""oui"という形になっている”oïl”といった単語たちと混同しがちだったのですね。(南仏の方言の歴史から読み取れること┃南仏の方言の歴史は面白い! - フランシウム87

そこで考え出したのが"hui"という単語の前に、さらに「日」という意味を指定する"à le jour"、つまり"au jour"をつけ加えるという方法です。

こうして"au jour de hui"という、今僕たちが使っている"aujourd'hui"の原型が出来上がったのです。

 

聞き取りにくくて形が変わるというのは、フランス語の進化のなかではよくあることで、例えば有名なものに"pas"の登場があります。これはまた別の機会に書きたいと思います。

 

 

 

離れていた単語は一つにまとまってゆく

 

その後、時代を経るにしたがって、離れていた"au jour dui"という単語は、だんだんと一つにまとまってゆきました。

まずは"auiourdhuy"。i,y,jというのは、当時の言語ではとても近しい部類だったのです。近しいアルファベットとしては、他にも今でも教会などで見られるuとvの混用などがあります。

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アッピウス・クラウディウス・カエウスというローマ時代の政治家の名前が書かれています

 

さらにルネッサンス期に、人々はアポストロフィーという、単語を短くした証を残すことを発明します。これによって"aujourd'hui"という現在と同じ単語が形成されていったのです。

ちなみに、この時代では、例えば"grand'mère"といった単語にもアポストロフィーが使われていました。"aujourd'hui"というのは、今でも当時のアポストロフィーの形をとどめている、珍しい単語なのです。

 

 

 

"aujourd'hui"の意味

 

となると、気になってくるのが"aujourd'hui"という単語の持つ本当の意味です。

"hui"が「今日」という事は前に述べた通りで、その前についているのが"au jour de~"なので、「この日の今日」といった意味合いでしょうか。「上を見上げた」や「頭痛が痛い」と同じ、完全なる重複語です。こういうのをフランス語ではpléonasme(冗語法)と言ったりします。

 

また、少し話はそれますが、英語の"today"もフランス語式に書けば"au jour"となるので、同じようなものですね。

 

 

 

素朴な疑問~aujourd'huiに、更にもう一つアポストロフィーをつけることはできるのか?

 

はい、できます。

少しかわった形にはなりますが、例えば前置詞"de"を前につければ、"d'aujourd'hui"というかたちになります。

 

"au jour d'aujourd'hui"というフレーズがあります。これを現代のフランス人に言っても意味のない文章だと一蹴されてしまいそうですが、そもそも"jour"には「輝き・知性」といった意味合いがあるため(そのため太陽である「日」が"jour"になった)、中世フランスでは、さしずめ「今日の知性」といったような意味合いがこのフレーズにはあったのでしょう。

 

 

 

まとめ

 

今回はフランス語の"aujourd'hui"という単語が、なぜ長いのかという理由に迫ってみました。

普段日常の中で使う機会の多い単語にも、調べてみるといろいろな歴史が隠れているんですね。また面白そうな単語の歴史を見つけたらアップします^^