フランシウム87

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王政が懐かしいフランス?┃なぜ最近のフランス人は王様を望むのか?

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少し前、Gilets jaunes(黄色いベスト)運動が連日メディアで報道されて、にわかにフランスの話題が日本で伝えられていました。ニュースを見ていると、パリの街角インタビューで「王政のフランスが懐かしい」といったニュアンスの発言をしている人がいて、少し驚きました。それも一人ではなく、複数番組の報道を合わせると数人が同じようの発言をしていたのです。

あれ?フランスって民主主義の大家みたいな国じゃなかったっけ?民主主義の逆を行く君主制に賛同するって、自国の共和制度を誇りにするフランス人らしからぬ考えの様な気がするけど…

 

そんなことから、なぜ現代フランス人の間で王政が懐かしがられているのか、調べてみることにしました。すると、フランス人の社会における、ある実情が見えてきたのです。

 

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王政を懐かしむフランス人

フランス人は王政に賛成?

フランスと言えば、1789年のフランス革命を経て、絶対的な王政→共和制へと変わった国です。この出来事は、多くの国では王様が権力を握っていた当時において、とてもセンセーショナルな出来事でした。それから2世紀以上、多少の紆余曲折はありながらも、フランスは民主主義を頑なに守り抜いています。もはや、民主主義はフランス人の心のよりどころと言っても良いかもしれません。こうした背景があるので、僕にとって、フランス人が王政を懐かしむような発言をするというのは意外なことだったのです。

 

王政に賛成のフランス人

事実、王政に賛成しているフランス人は多少なりとも存在しています。

少しデータが古いのですが、2007年と2016年に実施された調査*1によると、5人に1人弱の割合(17%)で、フランス人は国のトップが王様で良いと言っているのです。その理由としては、国の結束のため、政治の安定化、世界への印象の強化、ヨーロッパの中での立場の向上、などなど。もちろん、賛成の多数は右派の意見で、特に国民戦線(Front National)という、あのマリーヌ・ル・ペン(極右派)が党首の政党の支持者に王政賛成意見が多くみられるようです。

とまぁ、ここまではそんなに驚くような内容のことではないと思います。

 

気になるのは、国の結束のために王政を望む声があるというところではないでしょうか。フランスは移民の多い国であり、移民流入による宗教的・文化的なわだかまりは大きな社会問題として捉えられています。フランスの都市部に行けば、必ずといっていいほどアラブ人街がありますし、中国人やアラブ系の移民が事件を起こした、または何らかの事件に巻き込まれたときは、大きな波紋を生み出します。共和的であるべき国の中でこうした対立が身近で感じられるようになれば、「国の結束」を望む人が出てきてもおかしくないと思います。

 

では、なぜ望まれるのが王政の復活なのでしょうか。

 

「共和的君主制」

この言葉は、かつてフランスを大きな力で導き、今でも英雄的存在として語られることもあるド・ゴール首相によって標語として掲げられた言葉です*2。共和的君主制が、過去のフランスの輝かしい成長劇を成し遂げた、いわば過去の栄光であるように、今でもフランス人の中にはこの言葉に魅力を感じる人がいるのだそう。

それはマクロン首相も同じこと。というか、こうした共和的君主制に賛同する意見に呼応するかのように、実は彼も政治方針に共和的君主制を打ち出したことがあります。しかし、いざ君主制という特定の人がリーダーとなって国の舵をとるということは、なかなか都合が悪いようで、大きな力によってコントロールされることを潔く良しとしないフランス人にとっては、両手を広げて迎え入れられるようなアイデアではないのです。ド・ゴールの時代だったらいざ知らず、時代は刻々と変化しています。より権限を集中させるために、マクロン首相は共和的君主制の名のもとに国民議会の定数を577人から404人にまで減らそうといていたこともあります。もしこれが実現していたら、フランスの国会議員数はヨーロッパで最小のものとなっていたとのこと*3。こうした改革は現代のフランスでは受け入れられません。(現在の国民議会の定員は577人のまま)

 

フランス人の見つけた、第3の選択

Ni République, ni monarchie

前出のような中央集権化、議会の縮小というのは、国民の生活を脅かす恐れのあるものです。もはや考えがまとまらない共和制も、危険な方向に行きかねない君主制にも望みがなく、市民の意見は分裂。こうした中、共和制でも君主制でもない、第3の選択に期待を抱く人が出始めたのです。そう、それが王政。

 

王政の、ここが良い!

実はヨーロッパには今でも王政の国がいくつもあります。例えば隣のスペインはつい最近、カルロス1世からフェリペ6世に国王の代替わりをした国ですし、イギリスは国民に愛される(と言われている)エリザベス2世が女王として君臨している国です。他にも王政の国はまだまだあります。

実際にヨーロッパに住んでいるとわかるのですが、王室のニュースというのはいたるところで報じられているものです。日本の皇室の挙動は、天皇の生前退位などもあり最近特にメディアに取り上げられるようになりましたが、ヨーロッパの王室ニュースはそれに負けないほど頻繁に報じられています。(その多くがスキャンダルであることも人気の理由のひとつですが…)そうした他国の王室情報に触れているフランス人からすると、王室や王家、つまり「ロイヤル・ファミリー」の存在というのは、一種の「永続性」や「家族性」といった、強固でつながりがあるシンボルのひとつとして認知されるのだそうです。そして、それこそが現在のフランス共和制にかけているものの一つだと解釈されています。たしかに、共和制において誰が10年後に国のトップに立っているか分かりませんが、10年後の王様であれば大体予想がつくので、わかりやすい印象はあります。

つまり、フランス人にとって王政というのは、現在の共和制に対する不安材料を解消するための心の拠りどころといった役割があるのです。

 

おわりに

共和的にうまくやっていると思っていたフランスですが、その内情は複雑で、国のまとまりや永続性を望んで王政を望む人がいるのではないかと考えています。もちろん、これは僕個人が「最近、ニュースとかを見ていると王政が良いって言っている人が多い気がする…」という気付きから出発した、あくまで推察です。

日本でも、偏った懐古主義な人がいるのと同様に、フランスでもごく一部の人が王政に固執しているといえば、そうかもしれません。現にヨーロッパ内にはフランス王家の末裔が今でも存在し、その王位復活を願っている人達がいます。しかし、アンケートの結果を見る限り、国の結束を強固にするために王政を望む声があったりと、王政復古の声はなかなか現代フランスの抱える問題をうまく反映したものなのではないかなぁと考えています。

 

あり得ない話ですが、仮にフランスで新しい国王が生まれたら、家がどこになるのかとても気になるところです^^