フランス滞在中に大学入学審査を受けるには┃DAP申請の仕方を紹介
フランスに語学留学、またはそのほかの事情ですでに滞在していて、フランスの大学1年目(Licence 1)、もしくは医学系教育過程(PACES)で勉強をしたくなった時は、DAP申請というものが必要になります。
今回は毎年、年末年始にかけて受け付けているDAP申請の仕方、どういうシチュエーションの人がDAP申請を受けることができるのかなどを解説していきます。
フランスの大学で勉強してみたいと考えている人は、是非一度目を通しておくことをお勧めします。
mokuji
DAP申請とは
DAP(Demande d'admission Préalable)とは
①欧州経済領域(EEA)に加盟している国*1の国籍を持っていない人で
②diplôme de fin d'études secondaires obtenu、もしくはbac internationalをすでに持っていて
③大学1年目(Licence 1)、もしくは医学系教育過程(PACES)に応募する予定で
④決められたフランス語レベルを持っている
⑤現在、フランス国内に住んでいる
以上のコンディションが整っている人が、受ける必要のある審査のことです。
提出に必要な書類はdossier vertという名前が付けられています。
ちなみに、④に関して、現在日本などフランス国外に住んでいる場合はdossier blanc*2という異なる書類を提出する必要があります。
dossier vertは、自分で用意して大学に提出する必要がある(フランスに住んでいるため可能)のですが、dossier blancはキャンパスフランスが代行して志望する大学に提出してくれます。(参考:1. 【DAP Blanche】大学学部1年目、医学系教育課程1年目 (PACES) への登録 > Japon)
dossier vert, blacともに、提出期間は2016年の11月から翌年の1月22日まで(2017-2018年度用)なので、締め切りにはくれぐれも気を付けるようにしてください。
以上の条件を満たしている人は、アドミニストレーションのオフィシャルサイトから書類をダウンロードし(参考:Dossier vert : demande d'admission préalable à l'inscription en 1re année de licence pour l'année universitaire 2017-2018 (candidat hors UE) | service-public.fr)、第1希望の大学に提出します。
ここからは、それぞれのコンディションについて細かく解説していきます。
必要な語学レベルについて
DAP申請をするにあたって、大学で学習ができるだけの最低限の語学力を有していることを証明する必要があります。
具体的に言うと、DELF/DALFのレベルB2以上、もしくはTEF*3で14/20以上の点数が求められます。
もし、これらのレベルに達していない場合はDAPの申請と一緒に、2月に行われるフランス語試験TCF-DAPを受けて、受け入れ先の大学が希望する基準に達すれば入学を認めてくれることになります。
TCF-DAPというのは、普段行われているフランス語の試験であるTCFのDAP審査に特化したもので、問題の内容は普通のTCFと大きく変わるところはありません。
TCF-DAPについてもっと詳しく知りたい人は、こちらの記事を参照してください。
また、例外としてフランス語が公用語として使われている国の国籍や、それらの国でのdiplôme de fin d'études secondaires obtenuを持っている場合は、この語学力の審査は免除されることになります。
ほとんどの日本人には関係がないと思われるのでここでは詳しく紹介しません。詳しくはこの記事の最後にあるリンク先を見てください。
必要なディプロムについて
フランスの大学に通いたい場合、日本ないしその他の国である程度の教育を受けていることを証明する必要があります。
今回は日本での教育環境についてのみ、解説します。
それが、先ほどからあえてローマ字のまま書いているdiplôme de fin d'études secondaires obtenuとbac internationalなのですが、簡単に言ってしまえば、前者が高等学校レベル(études secondaires)の教育の修了証明書で、後者が国際バカロレアのことです。
ここで注意してほしいのが、日本の高校から大学に進学するシステムと、フランスのそれには大きな違いがあるため、高校の卒業証明書だけではこの基準をクリアできないという事です。つまり、日本で高校を卒業しているだけではフランスの大学には、理論上、入学を認めてもらえないという事になります。
どういうことかというと、日本の場合は高校の卒業には特に卒業試験というものがなく、在学中の成績や出欠席日数を評価されて卒業の可否が決定されていると思います。
対して、フランスでは高校を卒業するときにバカロレアという全国統一試験を受け、それによって高校教育課程を修めたかどうか評価されるのです。そして、このバカロレアの点数を使って大学の入学可否も決定されるのです。
「バカロレアは私が作ったシステムなのだぞ」と、自信たっぷりのナポレオン。
簡単に言ってしまえば、フランスの高校生は、日本でいうところのセンター試験を受けて、高校を卒業すると同時に大学入学まで進めてしまうのです。
ということは、日本でこのバカロレアに相当するものは何かというと、高校の卒業証明書に加えて、大学で勉強することを認められた何らかの書類が必要だという事になります。
それは、日本での大学卒業証明書、在籍証明書、すくなくとも入学証明書という事になるでしょう。
例えば、「高校を卒業した者と、同等程度の学力がある」ことを証明する大卒、高認の資格というのは、ここでは基準を満たす証明書であるとみなされません。
また、1-2年程度の専門学校であっても、フランスで特に名の知られているような学校でない限りは認められないようです。
ちなみに、僕は日本で大学に通ったことがなく、日本の大学の入学資格を得たこともなかったので、本来であればフランスの大学に通うことはできなかったはずです。
しかし、ウルトラCの方法が、僕が考え付いたものだけでも2つ存在します。
これについては、また改めて書いていきたいと思います。
dossier vertを作成する
上で紹介したURLからdossier vertをダウンロードします。
ほとんどの項目は問題なく記入していくことができるかと思いますが、いくつかわかりにくい部分があるので解説います。
3 - Votre situation scolaire/universitaire actuelle
ここでは、あなたがどういったディプロムを持っているか/持っていないかによって、選択するケースが変わってきます。
まず、最初に見る部分が
1re cas=あなたの持っているディプロムが、あなたの希望する学問に直接関係するものである場合。
2ème cas=あなたの持っているディプロムが、あなたの希望する学問に直接関係しないものである場合。
例えば、あなたは日本の大学でフランス語文学部を卒業したとしましょう。そして、フランスで観光学を勉強したい場合は、この2つには直接的な関連性がないので2ème casになります。
そのあとに続く選択肢は、すでにディプロムを持っているか、これから取得する予定かといったものになるので、選択は難しくないはずです。
また、その下には言及したディプロムを記入する欄が設けられています。
ア・プリオリ、ここで聞かれているのは、大学の入学に関する書類であるので、関係するディプロムだけ書けばよいでしょう。また、フランス内の大学付属語学学校などで勉強していて、レベルの合格をしている場合は、その実績を書くことができます(大学付属校であれば、レベルの到達は大学が証明したものであるため)。フランス語が、これから勉強する学問に直接的な関係がない場合でも、外国人である以上、自分のフランス語力はこれだけあるのだ、という証明を強固にする意味でも書いておいて損はないでしょう。
4 - Vos motivations
いわゆる、モチベーションレターです。
大学側は、基本的にここをみて志願者を入学させるか決めるといっても過言ではないでしょう。特に、今まで勉強してきた学問から、分野を変える場合には最も重要視される部分です。気合いを入れて書きましょう。
ちなみに、僕は今、フランスの理工大学で生物学を勉強していますが、今まで理系の勉強をしたことはありませんでした。というより、高校生の時はガチガチの文系で、文系暗記教科の代名詞ともいえる世界史が大好きだったくらいです。
そんな僕がなぜ、今こうやってピペットを片手に生物学を勉強しているかというと、このモチベーションレターのおかげだったと思うんですね。
実際に、合否が出る前に大学から呼び出されて、責任者の人と僕の書いたモチベーションレターをもとに面接をしました。
なので、モチベーションレターの作成には力を入れるとよいでしょう。
もうひとつ、こんなお門違いの僕を受け入れてくれた背後には違う要因があったのですが、それはまた機会があったら書こうと思います。
申請後の流れ
申請が終わったら、後は志望した大学からの返事を待つだけです。
あなたの書類は、まず第1志望校で審査されます。ここで合格すれば第1志望校から受け入れの通知が送られてくるのですが、不合格の場合は、書類が第2志望校に転送されます。以下、同じ流れで、第3志望校まで回されて審査されることになります。
合否の発表は3月上旬から順次発表となります。早ければ3月中に返事がきますが、遅ければしっかり6月上旬まで待たされることになります。
また、大学から受け入れが認められた場合にも、僕のように事前面接がされる場合があるので、あまり長期の旅行などは計画しないほうが無難でしょう。
書類の翻訳
DAP申請をする際の書類(各種ディプロムなど)は、フランス語で書かれたものでなければフランス語に翻訳する必要があります。
この翻訳は、宣誓通訳士(traducteur assermenté(e))によって翻訳されたものでなくてはなりません。もしくは、在仏日本大使館・領事館で翻訳してもらうことも可能です。
宣誓通訳士の場合は、小さな町などではいないこともあるので注意が必要です。宣誓通訳士を探すには、居住している町のpréfectureのサイトから探すことが可能です。翻訳料は、翻訳後の書類1通が50€前後が相場でしょう。
在仏日本大使館・領事館の場合、もっと費用を安く済ませることも可能ですが、近くに住んでいない場合はやり取りに時間がかかるのと、翻訳の内容に説明ができないというのが難点です。
おわりに
気を付けるべき点は2つ。
日本からフランスの大学に入学申請する場合は、キャンパスフランセが代行してくれていましたが、フランスに住んでいる人は自力で申請しなくてはいけません。
また、申請期間が始業のタイミングが9月であるにもかかわらず、とても早く締め切ってしまいます。
以上のことを踏まえて、ゆとりをもってDAP申請をするようにしましょう^^
2017-2018年度用DAP申請に関する情報はこちらから(フランス語サイト)
*1:Allemagne, Autriche, Belgique, Bulgarie, Chypre, Croatie, Danemark, Espagne, Estonie, Finlande, France, Grèce, Hongrie, Irlande, Islande, Italie, Lettonie, Liechtenstein, Lituanie, Luxembourg, Malte, Norvège, Pays-Bas, Pologne, Portugal, République tchèque, Roumanie, Royaume-Uni, Slovaquie, Slovénie, Suède
*2:名前と書類の種類は異なりますが、大学へ申請されるというシステムの観点から見ればvertと同じものです。
*3:フランス文部省認可。パリ商工会議所が実施する世界共通のフランス語能力試験。